コメディ・ライト小説(新)

Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ募集中』 ( No.135 )
日時: 2017/09/17 22:55
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

47.知られたくない過去。



「飛び降りた…?」

さすがにこの一言には沙彩も琴子も驚くしかなかった。ふわふわとした印象を持つ彼女から想像できない言葉が発せられたから。

「それって本当なのか?」
「はい。……本当に自殺しようと思って飛び降りました…。2階だったので少し怪我しただけだったんですけどね…」

2階から飛び降りたとしてもかなりの激痛が走るだろうし、打ち所が悪いと死んでしまう可能性も高いのに。それを実行しようとする気を彼女に持たせたのは一体何なのか――沙彩は思わず聞いてしまいそうになったが、自分も直球で聞かれることは苦手だから……踏みとどまった。

すると。


「―――高宮?」


少し遠くから、そんな声が聞こえた。
3人が一斉にその声のほうを見ると、テニス部のユニフォームを身につけた――悠夜が立っていた。

悠夜は香澄のほうをじっと見ていた。なんで――?という顔で。

さすがにずっとそういう顔で時間が過ぎていくことに気まずさを感じた沙彩が口を開く。

「……秋本…知り合いなの?」
「……知り合いっつーか…」

悠夜は珍しく悲しそうに目を伏せていた。この不思議な状況に沙彩も琴子もついていけない。


「――…久しぶりですね、秋本くん。1年半ぶりでしょうか……」

その2人を差し置いて香澄が悠夜の方へ進んでいった。すると悠夜はなぜかそれを制すように深く深く頭を下げてこんなことを言っていた。


「……ごめん。俺のせいで……」
「え?まだあのこと、気にしてるんですか?」

事情が全く分からない、事情があるのかも分からない沙彩と琴子には全然理解できないその光景に目をぱちくりとさせるしかない。
けれど、悠夜の反応は今までにない――はっきり言って可笑しいとも言えるものだった。明らかに、態度が違う。周りと比べると明るめな彼がこんなに静かなことはあまりない。

「……そりゃ気にするし…俺が………」
「ふふっ、秋本くんは早く部活に行ってください…遅れたら大変なんじゃないですか?」
「………あぁ…」

最後にごめん、とだけ言って悠夜は走って部室へ行った。……何かを振り切るように腕を大きく振って走っていた。


「……上永先輩、それに月島さん……実は、私は彼と同じ小学校に通っていたんですが…彼が学級委員長だったときに私が不登校で…――――」