コメディ・ライト小説(新)

Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ募集中』 ( No.144 )
日時: 2017/09/22 00:00
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

51.希望を。



「……あれ?裏になんか…書いてある……」

ふと気付く。また母の丸文字が、小さく綴られていることに。


「……『貴女が一番好きだった本を開けてみて』……?」

沙彩は小さな頃から本好きだった。一番好きな本と言われてみれば見当が付く。沙彩は急いで2階へ上がり、自分の部屋へ入って本棚を探る。

取り出したのは沙彩が5歳くらいの時によく読んでいた絵本。恐る恐るページを何枚かめくってみると。
――途中、紙が挟まっていた。

「……!」

そこに描かれていたのは、沙彩と夏音と――そして顔はまだ分からない、そんな人物の絵が4人。中学校の制服を着て登校している姿。
ふっと蘇るのは夏祭りのこと――夏音、ひかり、千春、俊、悠夜と過ごしたあの日。直感でこの4人が千春たちだと思った。


「……あぁ……やっぱり」


自分が……このグループの中にいることを楽しいと思っている証拠なのだ。考えるまでもなく直感で思ったんだから。
沙彩の母、彩名はとても絵が上手かった。その母親の絵のメッセージ。
沙彩は一瞬で胸がいっぱいになる。


「……これって誰がここに置いたのかな……」


そんな中で一つ疑問が浮かんだ。これは彩名が死ぬ前に書いたもの。
死ぬ前に書いたものを彩名本人が置けるわけないし、いつ誰が置いたのか分からない。

手紙と絵を交互に見ながら、沙彩は思い当たる節があってまだ居るかな、と思いつつ階段を駆け下りていった――。


○**○


――突然、ドアが開く。

「……沙彩ちゃん…?」
「月島さん…!」

ドアから出てきたのは沙彩。封筒と紙を持っている。

――その封筒と紙を夏音は知っていた。


「……それ、見つけたんだね」


夏音はその封筒と紙を見て一瞬驚くが、その後に微笑んだ。――というのも、この封筒と紙……実は夏音が、沙彩の母からの伝言だと医者に聞いて、夏音が初めて沙彩の家に遊びに行ったときに置いていったのだ。
ちなみに沙彩と夏音は中1の夏に出会ったものの、家が割と近いため母親同士が仲が良かった関係で彩名も夏音を知っていたから。彩名は死ぬ前に医者に話して夏音に託したのだ。


――希望を。