コメディ・ライト小説(新)

Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ募集中』 ( No.151 )
日時: 2017/09/28 22:06
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

55.ドアの先にいた彼女は…。



次の日――。
夏音は何となく、「彼女が来る」と思って早めに学校に来ていた。

「…7時半は早いかなー」

朝練に来ている人たちの鞄が何個か置いてあるだけで、人の気配はない。他のクラスを回ってみても誰も人が居ない状態だ。
机に伏せたり本を読んだり筆箱を整理したり色々しているうちに十数分が経つ。

――ガララッ、と音がした。

「…さあ……じゃないかー」

ドアを開けて入ってきたのは千春とひかりだった。2人はおはよう、と言い机に鞄をのせる。
どうやら夏音の呟きは聞こえていなかったようで、追求もしてこなかった。

「せや、もうそろそろ合唱コンクールの練習始まるよな?」

しばらくの沈黙を破ったのはひかり。あまりにも唐突すぎて夏音が言う。

「突然だねー。そうだけど、それがどうかしたのー?」
「沙彩ちゃんって歌上手いん?」

ひかりにとってはふと浮かんだ疑問だったようだ。確かに、沙彩が不登校になったのは2学期が始まったとき。合唱コンクールは10月初旬にある。ひかりは沙彩の歌声を聞いたことがなかった。

「……あたしも中学生になってからは聞いてないよー。でも音楽は割と好きらしいよ?」
「え、沙彩ちゃんって音楽好きなの?」
「うん。……あぁ…千春ちゃんは……ねぇー」
「全てを悟ったような顔をしないで!?逆に傷つくから!」

……夏音の反応の通り、千春は楽器演奏はまるで駄目、歌も中々の音痴。合唱コンクールでは口パクか超絶小さい声で歌うか。
それか腹痛と言うか、で乗り切っている。

「……あたしも沙彩ちゃんの歌声聞いてみたい―――」


――突如、少し荒々しくドアが開いた。まるでそのドアの開け方を知らなかったかのような大きな音が響く。




「――…沙彩ちゃん?」


夏音たちの目に見え、夏音たちの口から出た人物の名前は。夏音が今日来るはずと予想していた沙彩だった――。


○**○



「え?なんで沙彩ちゃん来てるの…?」
「うちも分からん……」

突然現れた沙彩の姿に千春とひかりは困惑を隠せないが、沙彩はそれに対しては答えずに自分の席を探し当ててその机に鞄を置いた。


「……3人とも、おはよ」
「「いや、おはようじゃないよ!?」」


何となく察した夏音以外はそう突っ込みを入れる。当然だ、不登校の子が急に学校へ来たのだから。それに千春とひかりは昨日沙彩の家に行っていないから……制服姿の沙彩を見ていないのだから、当たり前だ。


「……じゃあこんにちは、なの?」
「沙彩ちゃんボケとんの!?いや、急に学校来たから……びっくりするやん!」
「そうだよ沙彩ちゃん!?」
「あぁもー!来たら来たでそう言うのはやめてくれない?あんだけ学校来て欲しいやら陸上やろうよとか言ってたくせに!」

沙彩も気恥ずかしいのか頬を赤らめている。また、これから来る人たちの反応を少し怖がるように――どこか顔が強張っているのも感じ取られた。

「………」

佐野先生のことは大丈夫なのかな――この場に居合わせている人物の中で一番落ち着き払っていた夏音が、ただそれだけを心配していた――…。