コメディ・ライト小説(新)

Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ募集中』 ( No.160 )
日時: 2017/10/03 23:49
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

58.2人の過去。



しばらく重苦しい雰囲気が続いた後。

「――…って、こんな話するんじゃなかったなー…ごめん」
「いや……別に良いんだけど……」

時計を見ると9時を指している。余裕で1時間目の授業は始まっているのだが…。悠夜は別に構わないようだ。一度時計を見る素振りを見せたが、焦った様子もなかった。

「………」

これを思ってみれば、今のところ……沙彩は秘密だらけだ。悠夜が全部……とまでは行かないかもしれないが、色々話してくれたのに。沙彩はそれを話すことを拒絶している――。幻滅されそうと言う心から。

(今更幻滅されてもどうでもいい……よね……)

一つ、感情が芽生えた。


「――私には両親が居ないの」


そしてはき出された言葉に悠夜の目が大きく見開くことに沙彩は気付いたが、もうどうにでもなれと思い淡々と自分の過去を話し始めた。
両親が居ないこと――それから1週間学校に行けなかったこと――そして、佐野に対する憎悪感の話まで。もともと悠夜にとって沙彩なんてよく分からない人物と捉えられているに違いない、だから別に何も気にすることなく言えた。

「ただそれだけ。……不幸の連続……って言うのはこういうことよ」
「……なんでそんな淡々と言えるんだよ?」
「今更感情的になっても仕方ないから」

一つため息をついて沙彩はもう一度時計を見た。9時10分過ぎだ。

……なんだろう、不思議と気持ちは落ち着いていた。さっきまでの佐野に対する気持ちは少しだけだが薄れてきていた。