コメディ・ライト小説(新)

Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ募集中』 ( No.167 )
日時: 2017/11/19 10:30
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

62.沢山の友達に恵まれて。



「こことここの辺の長さが同じになるので、三角形の合同条件は――」

 1時間目は数学――つまり佐野の授業。正直聞いていなくても多少の予習はしているからテストで点は取れるはずなのだが、少しくらい聞いておこう。

「……月島さん、何になるか分かりますか?」

 佐野が沙彩に呼びかけた。クラスの視線が沙彩に刺さる。……今まで学校に来てなかったのにこの内容が分かるのかという心配の目で見てきたけれど、そんなの全く心配しなくて良いのに、とため息混じりに答える。

「2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい」
「……正解です。では次行きますね」

 沙彩がこの内容を理解していることを分かるとさっさと次の内容に移っていった。わざわざ自分のために時間を割いてくれたのはありがたいけれど今までの数学の点数、忘れたのだろうか。少しくらいはありがたさを感じたが、マイナスに捉えるとやっぱりいらいらもある。

(叔母さんに教えて貰えるから余裕…)

 今のところ、数学は聞かなくても余裕そうだ。


○*


「沙彩ちゃんすごいね!私、ずっと授業聞いてるのに合同条件とか全く覚えてないや」
「千春は千春でやばいこと自覚してる?次の中間でもちゃんと350点は取りなよ」
「うっ……痛いところを……!」

 勉強の会話とか、テストの話題とか。何だか「学校」っぽくて少し嬉しいのは気のせいだろうか。

「沙彩ちゃん学校来んやな。陸上どうすんの?」
「陸上は………もうちょっと待って」
「……中3の大会には出れる?」
「さあね。今の陸上部が楽しいなら出られるんじゃない?」

 ひかりも沙彩が来ているという事実に素直に喜んでいるようだ。早速陸上部の話を持ち込んできた。
 正直あまり分からない。これから学校に来るかどうかがいまいち自分でも予測できない。……楽しければ、どうだっていいのだが。

「月島さん!学校、来てくれたんですね」
「なんか良かった」

 香澄が沙彩の机に寄って来て、俊も笑顔で声を掛ける。


 ……思えば自分にはこれだけの友達が居るんだ。沙彩自身のことを何よりも考えてくれる夏音を初めとして、自分は沢山の人たちと知り合えた。
 不登校で自分の心を閉ざしていたときからは考えられないほど。

「あ、……千春たちには言ってなかったけど今日本屋行く?」
「「行く!」」

 何人かの声が重なる。今日の本屋はいつもより楽しくなりそうだった。