コメディ・ライト小説(新)
- Re: 君との出会いは本屋さん。『最終章開始♪』 ( No.182 )
- 日時: 2017/12/03 10:40
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
71.思うことは皆同じ。
「ファンシーショップじゃねぇか……俺ら、他の店行っても良い?」
買い物先は夏休みに浴衣を買いに行った、あのショッピングモール。大きい店なので雑貨屋さんも多く、女子ウケの良さそうなところが沢山ある。……のだが、さすがにそんな雰囲気の店には悠夜と俊は入れなかったみたいだ。
「男子でも入れそうな店選ぶよ……決まったらグループラインで報告するから、携帯見といて」
ここにいる沙彩以外のいつものメンバーは全員携帯を持っている。もちろん沙彩も持っているのだが、沙彩は「ラインは通知返すのが面倒だからやらない」と言ったので仕方なくこの6人のグループになったわけだ。
決して仲間はずれとかそう言うわけではなく了承は取ってある。
けれど今はそれに感謝するべきだろうか――サプライズパーティーなのだから。
「はーい。早く決まった方がラインしてね~。じゃ、よろしく」
夏音が緩く手を振って2人を見送る。
「……さすがにこの店は無理だよね……」
「せやな。絶対浮くわ…」
ピンクなどパステルカラーを基調とした雑貨屋だ。文房具やキーホルダー、女子用のかばん等が売られていて、とても男子向けのものなど無い。この世界には女子しか入れない、と言うようなくらいだ。
悠夜達がどの店に行ったのかは知らないが、別の店に行くという判断は的確だった。
「秋本くんに超可愛いプレゼントでもあげたいね」
「そうですね、かなり面白いことになると思います……」
普段意地悪な雰囲気はない香澄さえも何か企むような顔をしている。
「そうだ、ここってクラッカーとか売ってるよね?」
「ああ……聞いてみるー?」
千春の疑問に夏音が店員を呼ぶ。
「すみませーん、ここってパーティーに使うクラッカーって売ってますかー?」
「あ、はい!こちらです」
夏音は割とこのメンバーの中でコミュ力がある方だ。千春は意外に話しかけられなかったり、ひかりは関西弁が出るから嫌だと言ったり、香澄は元々そこまで人と話すことが得意ではない。
夏音が後ろにいる3人に微笑むと3人とも安堵し、店員についていった。
「こちらがクラッカーになります。お部屋を汚さないために紙テープがくっついているタイプがお勧めです。ではごゆっくり」
店員は営業スマイルを浮かべてそう言ったから夏音も有り難うございますと営業スマイル風を浮かべる。外でもいつものように気だるけでは駄目だけれど、何もないのに笑えるはずがない。
「……部屋を汚さないようには……って言ってたよね。できればそっちが良いかなー!」
「分かってるよー。千春ちゃんの家を荒らすわけじゃないんだから……じゃあこれは秋本くん達にも買わなきゃだから、6個ね~」
この店用の小さなカゴにクラッカーを入れてもう一度分かれ、プレゼントを探す。
約15分後――
「――皆決まったー……みたいだね」
それぞれが何らかのものを持ちレジ前に集合する。
皆が一斉に悠夜と俊をはめようとしているのか、かわいい系ばかりだ。
それぞれ買ったものをレジに置く。
「いらっしゃいませ。お会計は別でしょうか?」
「あ、はいー。別でお願いします~」
夏音が最前線に立って店員と話す。これでもかというほどの店員と夏音、お互いの営業スマイルは少し怖い。
大体皆は500~700円程度のものを選んでいた。中学生にそんな大金はないし、それでもこの店のものは大体可愛いものばかりだから良い判断だろう。
「有り難うございました!」
「どうも~」
夏音が言ったのに合わせて3人はぺこぺこお辞儀をしながら店を去る。
「あたしが居なかったらこのメンバー、どうなってたか……皆コミュ障ばっかだね~。千春ちゃんに至っては普段あんなに元気なのにー」
「知らない人じゃん!何か怖いんだよ…」
「沙彩ちゃんと初めて会ったときはいつもの調子じゃなかったっけ?」
「あれは……勉強のためだったから?それとも沙彩ちゃんが意外に話しやすかったからかな……電話したとき」
「そうだね、沙彩ちゃんって…意外に話しやすいでしょ~」
「自分のことのように言うね!?」
「………さあ。自分のことのように嬉しいからかなー」
夏音は少し懐かしむように言う。夏音が初めて沙彩とまともに話したとき。あの時は沙彩にまさかこれほど、盛大なパーティーを開いてあげようと言うまでの友達ではなかったはずだが、今ではそれが出来るくらいの親友。
そして沙彩が学校に来たとき――本当に自分のことのように嬉しかった。
「………まあいいや……秋本くん達に連絡するかなー」
「うん!……私も、自分のことのように嬉しいよ」
千春が夏音に共感したと同時にひかりと香澄もうんうん頷く。
……思うことは、皆同じのようだった。