コメディ・ライト小説(新)

Re: 君との出会いは本屋さん。『最終章♪』 ( No.188 )
日時: 2017/12/11 21:25
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

75.チョコレートケーキ。



 ビンゴゲームと、それに平行して行われたプレゼントの交換会は無事終了した。強制的に悠夜と俊には超女の子でガーリーなプレゼントが渡されてかなりの違和感があるが、それは置いておくと。
 自分が買ったものをそのまま――ということはなく、何とか全員が自分以外の誰かが買ったものを手に入れることが出来た。

「何で俺ら、こんな可愛いやつなんだろうな……」
「絵的に笑えるよ」

 悠夜がこぼした愚痴に沙彩が間髪を入れずにはなった言葉。

「なっ……あんまストレートに言うなよ!てかそんなこという感じ……だっけ」
「沙彩ちゃんもきっとテンション高いんだよー、てかあたしも悠夜くんが……く、クマの……ぬいぐるみ持ってるのは…すごい笑えるよ~…」

 言葉の端々に笑いを含ませながら夏音がフォローになっていないフォローをする。俊はもうどうでもいいやと真顔で居るが、悠夜だけは納得がいっていないようだ。
 女子陣からの集団いじりはかなり怖い。

「……香澄ちゃん、そろそろケーキの準備せえへん?」
「あ……そうですね。もうそろそろ12時ですし……」

 その端で、ひかりと香澄がこそこそと話をしていた。沙彩が来る前に作って置いたケーキのことでだ。ケーキが熱々のうちに粉糖をかけてしまうと溶けて見た目が台無しになってしまうため、トッピングをせずに冷やしてあるのだ。

「ちょっとうちら、準備してくるわ」
「あ、了解ー」

 ひかりが夏音の耳元で呟いて香澄と一緒にキッチンの方へ行く。

「……ひかりと香澄……どこ行ったの?」
「トイレじゃないー?」
「そう……他人の家でもそういうのはあるのね……」

 勘違いしている沙彩に苦笑いを浮かべる夏音。何とかケーキのことはばれていないようだ。
 ……別にばれても良いものなのだが、どうせなら突然ケーキを出してビックリさせたいというただの夏音の遊び心だ。


「――ケーキやで~!机のスペースあけてあけて!」

 しばらくして、ひかりがケーキを持ちながら香澄と一緒に戻ってきた。夏音と千春がチラリと沙彩の様子を見ると、案の定目を大きく見開いていた。というより、先ほどひかりと香澄で施したケーキの装飾があまりにも綺麗だったのか。見とれているような表情だった。

 ひかりが注意を払いながらケーキを置くと、自然に沙彩がケーキを見に机に寄ってきた。

「苺が……狭そう」
「それ感想!?褒めてんのか褒めてへんのかわからんわ!」

 5ミリメートル幅くらいに切った苺が斜めに刺さるように並んでいて、普通のスポンジケーキよりかなり豪華になっている。粉糖も振って店に売っているような雰囲気だ。
 料理好きの香澄が主にデコレーションをしてひかりは横でちまちま手伝っていたんだろうか。香澄の顔には疲労が色濃く残っていた。

「中々切るの難しいね~」
「私が切ります…。切りやすいようにデコレーションしたはずなので!」

 香澄が一緒に持ってきていたパン切りナイフを手に取る。
 その横にはお湯のようなものが入ったお皿も置いてあった。

「お湯につけて拭いてから切ると切りやすいんですよ~」
「そうなの……よく知ってるわね……」

 香澄は自分が言った通りに、お湯につけてキッチンペーパーで水気を拭き取ってからケーキにナイフを入れた。するとそれはするりと切れて、綺麗な断面が見えた。

「お~……飾りも前々崩れてないじゃんー!」
「さすが香澄ちゃん!」
「すげえ……」

 その場にいる全員が感嘆の声を漏らす。香澄は手際よく沙彩、夏音、千春、ひかり、香澄、悠夜、俊―7等分に切る。
 かなり難しい7等分だが、それでも香澄は迷い無く切っていた。

「…………出来ました。切れました……息止めてましたよ……」
「だろうねー……7等分を上手くできるとか凄い!」

 7等分に切られたチョコレートケーキをお皿に分ける。苺がたっぷり乗ったチョコレートケーキを見て、沙彩は感激の気持ちでいっぱいになった――。