コメディ・ライト小説(新)

Re: 君との出会いは本屋さん。『最終章♪』 ( No.192 )
日時: 2017/12/16 00:48
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

『最終話』繋いでいった輪は、いつの間にか大きくなって。



「夏音。昨日……急に帰ってごめん」

 沙彩は2日後、学校に行って夏音の姿を見るなりすぐに謝罪した。自分ももちろん悪いと思っていたし、もしかしたら「パーティーが楽しくなかったのではないか」という誤解を生んでしまうかもしれないから。

「ううんー、大丈夫。パーティー楽しかった~?」
「ほんと楽しかった……実はね、あの後……」

 沙彩は、急いで帰った後の事を伝える。両親に楽しかったよと伝えたこと、それから少し泣いたこと。

「……そっかー。それだけ言われたらあたし達も企画して良かったな~」
「私も……企画してくれて良かった」

 学校へずっと、様々な理由はあったが完全に心も閉ざしていた自分にこんなに楽しむ資格はあるのかと考えたくらいだ。それほど、あのパーティーは楽しかった。
 ずっとこのまま楽しんでいたいと思った。

「あ、月島と桃瀬…おはよう」
「おはよー」
「おはよ。昨日はほんと、ありがとね」
「やっぱ最近素直だよなー」

 悠夜は昨日に「絵的に面白い」と言われたことを根に持っているのだろうか。少し茶化すようにそう言ったのだが、沙彩はどうやら真面目に受け入れてしまったようだ。

「……かもね。ほんと私、素直になってるよ」
「……え?」
「貴方たちのおかげ、だと思う。秋本は……最初に私を学校に誘ってくれた。秋本が居なかったら私は多分一生学校行ってなかっただろうし。先生に言われたからって言ってずっと言い続けてくれたのはあんただけだしね」

 沙彩は正直に自分の思ったことを伝えた。沙彩の微笑みは、本当に成長したものだと全員が実感できるくらいの笑みだった。

「……そっか。お役に立てたようで何より」
「学校……こんな楽しいところだとは思わなかったなぁ」

 沙彩は不登校になり始めたときのことを思い出しながら言う。佐野に言われて腹が立ち、それからずっと部屋に籠もっていたこと。時々夏音が様子を見に来てくれたのだが、一時はそれさえも拒絶していた時期があったのだ。
 ……それでもめげずに沙彩と話そうとしてくれた夏音にももちろん感謝しているのだが、それはまた別の話で。


「……私も……誰かにサプライズパーティーとか、何かお楽しみ会みたいな事したいかな」


 もちろん、その時は一緒に企画しようね、と。夏音が微笑んで言うと、「夏音に対してパーティーするかもしれないのに」といたずらっぽく笑みを浮かべて言う。


「その時はその時でもちろん嬉しいよ~」
「ならパーティーのやりがいがあるよね。秋本も一緒に企画しよ」
「ああ…」


 初めはぎこちなかった沙彩と悠夜もかなりうち解けて、今では普通の友達のようになった。
 沙彩を中心としたこの環境は、夏音や悠夜、千春、ひかり―――全員にとって良かったのかもしれない。
 沙彩自身も変わったし、他の全員も少なくとも1つくらいは変わったところがあるはずだ。

 本屋さんで出会って、繋いでいった輪は――いつの間にか7人という大きな数字になっていた。
 

 これからも絶対に、沙彩は自身の成長を忘れないだろう――。そして友達という存在に気付いた今、それを失うことは一生無いだろう――そう、沙彩は心の底から感じるのであった。

 

――君との出会いは本屋さん。fin――