コメディ・ライト小説(新)

Re: 君との出会いは本屋さん。『☆続編開幕☆』 ( No.198 )
日時: 2018/04/12 16:03
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
参照: 第4章。

80.7人。



 昼休み。
 千春は悶々とした気持ちを抱えながら、椅子に座って俊の方をじっと見つめていた。

 ――声を掛けようとはしていたのだが、「誰かと話している」「なんだか恥ずかしい」と。それで、昼休みまで引きずってしまった。
 今、俊は一人で本を読んでいる。できればこのチャンスは逃したくない。さすがに話しかけられて本を読んでいるからと断られることはないだろう。

「千春……?どうしたの?」

 知らない間に貧乏揺すりをしていたらしく、沙彩が心配して声を掛ける。

「あ、沙彩ちゃん…。いや……ちょっと…」
「……なるほど。俊に声掛けられないってこと?」

 ちょっと、と言いながら俊の方を見ていたことがばれてしまったのか。沙彩も夏音と同じように、千春が俊のことを好きだということを知っている。というか千春自身から教えてもらった。

「うん……」

 いつもの元気も、恋が絡むとこうなってしまう。沙彩はそれを放っておけなくて、千春の腕をそっと掴んだ。

「……?」

 かと思うと、おもむろに引っ張って千春を立たせ、背中を軽く押した。進行方向には、俊の姿が。

「えええぇぇっ!?」
「早く行きなよ……私が誘っても良いの?」
「えっ……が、頑張る!」

 沙彩の意地悪そうな顔に、千春は焦りを感じて俊の方へ向かった。


「ね、え……初詣、一緒に行かない……?ですか…?」

 いつもとあまりにも態度の違う千春を横目で見ながら。沙彩は最早呆れも生じていたが、少し微笑ましい気持ちにもなった。

(学校ってやっぱり、こういうことがあるのよね……)

 夏音はそもそも恋愛に興味なさそうなタイプだから、そう言う話を聞いたことがなかった。小学校の頃は恋バナをする人はそんなに居なかったし、1年生の時もほとんど友達が居なかったから、こんなことに巻き込まれるのは新鮮だ――。


○*


「ひかりちゃんー、香澄ちゃん~」

 一方。廊下を歩いていた夏音は、図書室で一緒にいたひかりと香澄を見つける。まだこの2人は誘っていない、ということで夏音は図書室のドアを開け、2人を呼んだ。

「どしたん?夏音ちゃんが図書室って珍しいやん」
「別に本読む訳じゃないよ、2人に用事があってね~」

 本読む訳じゃないよ、と言った途端、一部の図書委員が夏音の方を向いた気がするが……夏音はそんな視線、全く気にしていなかった。

「1日の朝か昼!初詣行かないー?」
「おー!ええよ!みんなおるん?」
「私も、是非行きたいです…!」
「やった!沙彩ちゃんと千春ちゃんと、多分千春ちゃんが俊くん誘ってくれてて、あと秋本くん、かな」
「パーティーのメンバーやね!」

 沙彩の周りに出来た輪――この7人で、初詣に行く。夏音を含めて、皆が浮き足立っていた。