コメディ・ライト小説(新)
- Re: 君との出会いは本屋さん。『☆続編開幕☆』 ( No.200 )
- 日時: 2018/04/23 15:52
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
82.初詣。
左腕に付けられた時計をふと見る。――9時半。早く来すぎだろうか、と沙彩は思った。集合場所に指定された、神社の近くの公園――夏祭りの時も集合場所だった所だ。所々に雪が積もっていて、夏のあの日とは違った感じ。
「あ、沙彩ちゃん!早いね!」
しばらく腕時計とにらめっこしていると、遠くからでもはっきり聞こえる千春の声がした。
「……早く来すぎたわ。全然誰も来ない」
「みんな遅い……」
そもそも今は9時40分――集合場所になんて10分前くらいに集まるものではないだろうか。いつもの沙彩ならそう思うだろうが、なんだかそれよりも早く来て欲しい、という思いが募っていた。
それからまた10分ほど経つと。
「沙彩ちゃんと千春ちゃんだ~!やっほー」
「おはようございます」
「2人早すぎやろ!」
「確かに……」
「まだ来てないと思ってた」
夏音たちが、沙彩と千春を見つけた。夏音が駆けると同時に全員が駆ける。
「ふぅ……。2人とも待ちくたびれてるみたいだけど、もしかして30分前くらいに来てたのー?」
「そんな感じだよ!ちなみに私より沙彩ちゃんの方が早く……」
「そんなこと言わなくて良いから!……楽しみだったし、仕方ないでしょ」
「……なんか沙彩ちゃんじゃないみたいだよね」
夏音がぽつりと言った言葉に、沙彩は思わず「え?」と聞き返してしまった。
「そう思わないー?」
「少なくとも俺が初めて月島と会ったときと比べたら……かなり違う、と思う」
悠夜も同意していた。その言葉を聞いて沙彩は戸惑う。
「そ、そんなことないでしょ……こんな感じだった………?」
「いや、今までの行動思い返してみろよ。俺に対する態度もだいぶ変わってるだろ…」
初めなんて、話そうと思ったら「手短に」なんて言われていた。
「……そうね、そういえば。まあ……そういうこともあるのよ。とにかく神社の方へ……」
「これ以上深入りさせたくない沙彩ちゃんの気持ちを考えてあげて~。照れてるんだよ、沙彩ちゃんは」
「……そういうわけじゃないわよ…」
真っ赤になって何の説得力もない沙彩は、全員に背を向けて歩き出した。神社の方に向かって。
背を向けたとしても、今は隣に並んでくれる人が居る。
友達と行く初めての初詣――。沙彩の足取りは軽かった。