コメディ・ライト小説(新)

Re: 君との出会いは本屋さん。『☆続編開幕☆』 ( No.202 )
日時: 2018/04/29 23:08
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

83.2人の行方。



「うぇ、人混み……」

 神社の手前。沙彩は、滅多に見ない人の混みように思わず声を漏らした。沙彩だけは、こんな人混みにあまり慣れていない。

「初詣なんてこんなもんだよ~」
「いいから行こうぜ」

 顔が若干青ざめている沙彩を、夏音と悠夜が促した。渋々沙彩は神社の方へ足を踏み入れる。人混みを見ると少し嫌だったのだが、おみくじ、絵馬、賑わう賽銭箱の前。それを見ると、待ち合わせに早く来すぎた時――さっきと同じ嬉しさが募る。

 早速沙彩達は、おみくじを引きに行った。かなり並んでいたが、割と順番はすぐ回ってきた。

「番号が書いてある棒を引いてください」

 巫女さんにそう言われ、沙彩は言われるがまま容器に入ったたくさんの棒の中から一つを選んで引く。そこには16、と書かれてあった。それを巫女さんに見せると、「16番ですね」と良いながら側面にあるおみくじを入れる棚の16番、と書いてあるところから1枚のおみくじを沙彩に手渡す。

「ようこそお参りくださいました。200円お納めください」
「は、はい」

 手に持っていた財布から、沙彩は姉弟の金額を取り出して渡す。おつりがないように出したから、沙彩は足早に人混みから抜けた。


「……あれ?……みんなは……」


○*


「みんなおみくじどうだった!?」
「あたし中吉~。千春ちゃんは?」
「私も中吉だよ!」
「うちは末吉……微妙やわ」
「私は小吉ですね」
「俺も小吉。全然大吉ないな」
「俺中吉。月島は――…?」

 人混みから少し離れたところでおみくじの結果を話し合う。ふと悠夜が沙彩のことを呼んだのだが――そこに沙彩の姿はない。姿がないのだから、声も帰ってくるはずがない。

「え?沙彩ちゃん……?はぐれちゃったのかな!?」
「落ち着いてよ千春ちゃんー。携帯があるじゃん」
「……あ、そっか……連絡してみよう」

 千春が急いで携帯をとりだし、『今どこ?』と打つ。

『絵馬売ってるとこ』

 間髪を入れずに沙彩から返信が来た。だが、人混みの中――。いつ流されるか分からない。それに、

『絵馬売ってるところなんていっぱいあるよ?』

 それだけでは特定できない。少なくとも、絵馬を売っている場所は5地点ほどある。写真を送ってもらおうか、とは思ったが、それだけだと特定できる可能性は低い。

「どうしよ……どうしよ!」
「電話かけてみようか……ってあれ?秋本くんは?」

 ふと夏音が周りを見てみると、悠夜の姿もなくなっていた。