コメディ・ライト小説(新)
- Re: 君との出会いは本屋さん。『☆続編開幕☆』 ( No.203 )
- 日時: 2018/05/03 21:15
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
84.
「やば…はぐれちゃったな」
沙彩は、決定的な目印になるものを探していたのだが、なかなか見つからない。待合室とかも建設されているからそこに行けばよいと思ったが、そういえば沙彩はあまり初詣など経験がないためその場所を知らなかった。
「……あれ?園川さん……?」
不意に、沙彩の目に見知った顔が映った。黒髪を縛った姿が特徴的の、晴樹。彼は何となく視線を感じたのか、振り返ると沙彩の姿を見つけた。
「月島ちゃん?どうしたの。あ、みんなで初詣?」
晴樹は直接的に関わったわけではないが、12月になってから沙彩のことを何度か見かけたことがある。最初は驚いたものの、ようやく決心が出来たんだな、という目で見ていた。
「……はぐれたの?」
その言葉は核心を突いていて、沙彩は思わず黙り込む。せっかくの初詣なのに、はぐれた……というのが少し恥ずかしかったからだ。
言おうか言うまいか迷っていると、晴樹は突然ポケットから携帯をとりだした。沙彩が思わず晴樹の方を凝視する。
「あ、桃瀬!月島ちゃんいるけどー、ちゃんと見てあげないと駄目じゃん」
『え、ほんとですか!?かわってくださいよ~!』
「……桃瀬、本当に僕と喋りたくないんだね」
『そんなことないですよ~、でもかわってください!』
晴樹ははぁ、と生意気な交配に対するため息を一つついて、沙彩に彼の黒い携帯を差し出した。だが、沙彩には2人の会話が聞こえなかったため、携帯を差し出されて戸惑う。
「……桃瀬が、かわってだって」
「……あ、はい」
そこまで言われてやっと理解した沙彩は、晴樹の携帯を受け取る。
「……もしもし?」
『沙彩ちゃんー!良かった、心配したよ~!それで、どこにいる?』
「ごめん……そう言われても、目印とかないんだけど」
『うーん……そっかー。近くでたき火とかやってない?』
「やってないけど……」
『え~……どうしよー……」
歯切れの悪い電話。全くらちがあかないまま、数秒経って。
「月島!」
近くで、沙彩を呼ぶ声が聞こえた。
「あ、秋本?なんで……夏音達と一緒なんじゃ」
「探しに来たんだけど!?」
「……あぁ、なんかごめん」
『秋本くんもいるの?』
「……うん、今合流した。秋本は夏音達がいるところ、わかるんだよね?」
「動いてないなら分かる」
「分かった。じゃあ戻るよ、待ってて」
『うん!人混み気をつけてね~』
そこで、プツッと電話が切れた。沙彩は晴樹に携帯を渡す。
「……いや~、まさか彼氏くんが助けに来てくれるとは」
「彼氏じゃないですって!てか、助けじゃないです、探しにですよ…」
「ある意味助けると同義じゃない?」
「……もうそれでいいです」
久しぶりに晴樹が悠夜をからかった後。3人で、夏音達の所へ向かうことにした。