コメディ・ライト小説(新)
- Re: 君との出会いは本屋さん。『☆続編開幕☆』 ( No.207 )
- 日時: 2018/05/27 10:00
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
85.人を惹く言葉。
夏音はそわそわしながら、沙彩達3人の姿が見えるか背伸びをしていた。中々遠いところにいたのだろうか、全然姿が見えてこない。不安感に襲われた夏音達のもとへ、ふとパタパタと忙しない足音が聞こえてきた。
「……沙彩ちゃん!沙彩ちゃーん!」
ようやく3人の姿が見えた。夏音は感極まって、人目もはばからず沙彩の名を叫ぶ。
「良かったぁ……」
「ほんまびっくりしたわ…」
「突然いなくなったからな」
「見つかって良かったですね…!」
夏音が沙彩達の方へ走っていったので、千春達も追いかける。後ろに悠夜と晴樹も居た。だが晴樹は、ひかり、香澄とは面識がない。香澄はどうやら人気な先輩だと認識していたようだが、ひかりは人見知りなうえ先輩とかに興味を示さないため、一気におびえていた。
「なんやあの人……沙彩ちゃんの知り合い…?」
おびえきったひかりが、夏音の後ろに隠れながら問う。夏音はそういえば面識なかったね、と言って、ひかりだけに聞こえる小さな声で囁いた。
「あたしと同じ部活の部長で、沙彩ちゃんや千春ちゃん、秋本くんと俊くんと知り合いなの。そんな怖い人じゃないから安心して」
夏音の言葉で、ひかりは少しだけ落ち着く。警戒心は未だに解けないが。
「あ、君……高宮香澄ちゃん?」
そんな中、晴樹が香澄を見て言った。マイペースな晴樹、聞くタイミングが少し変だと言うことはさておき。
香澄はそれほど面識がない人とも喋れるため、笑顔で返した。
「はい。園川晴樹先輩、ですよね」
「うん。高宮ちゃん、僕たちのクラスでもかなり有名になってるよ」
「え……?どうしてですか?」
「可愛いからじゃない?」
「………それはどうも……」
じゃない?と言われると何と返せばよいのか。香澄は曖昧な笑顔で曖昧な返事を返した。一件見ただけではチャラそうな晴樹の様子に、少しだけでも落ち着いていたひかりは、さらに晴樹に対して警戒心を持った目を向ける。
「そんな怖がらなくて良いってー」
「………」
ついには無言になる始末。そんなひかりに目配せした晴樹が、何か考えたような顔つきでひかりの方を向いた。
「……っ」
視線を感じたひかりが思わず夏音の後ろにサッと隠れるが、晴樹はそれに構わず声を掛けた。
「君は?」
「………夕凪、です」
「そう。人見知りなの?」
「…………」
無言が肯定、とでも言うようにひかりは晴樹を睨んだ。先輩だというのに何という勇気だろうか。だが晴樹は特に気にした様子でもなかった。
「イントネーションから察するに、君は関西人だよね?」
「………」
これ以上話しかけないで欲しいのに、晴樹はどんどん話しかけてくる。と思うと、突然晴樹は突拍子もないことを言った。
「そうだ、飴あげる」
「……は…?」
意図が読み取れないひかりは、警戒心あらわに晴樹を見るが。晴樹は鞄から飴を取り出して、ひかりに差し出した。
「関西人ってみんな飴あげるんでしょ?だから、あげる」
ひかりは晴樹の手のひらに載せたいちごの飴をしばらく見て。突然、ふっと笑い出した。
「それって、うちからあげやな意味ないんじゃないですか?……うちのほうが関西人やし」
「まぁいいじゃん。やっと僕のこと警戒しなくなった」
「……それは……ごめんなさい…」
変なところで笑い出したひかりに、沙彩達は目をぱちくりさせたものの。どうやら晴樹とひかりも仲良くなれたようで、夏音は安堵の息をついた。