コメディ・ライト小説(新)
- Re: 君との出会いは本屋さん。『☆続編開幕☆』 ( No.208 )
- 日時: 2018/09/30 15:57
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
- 参照: 第6章終了です。
86.不思議な感覚。
「そういえば、お賽銭忘れてたよね?」
「……あ」
千春の何気ない一言に、ワイワイしていた空気が一気に凍り付いた。おみくじは引いたけれど、確かにお賽銭は投げていなかった。大抵、初詣はお賽銭が先だろう。それを一瞬で悟った皆は早急にお賽銭箱の方へ向かった。
「神様に対してなんか申し訳ないことした気がするよな」
「確かにー。ま、色々あったしね~…」
小銭を投げて、手を合わせた後。悠夜と夏音は冷や汗を垂らしながら言った。
人混みから抜け出した後。
「みんな、今日は……本当にごめんなさい」
沙彩が全員に向かって頭を下げる。折角の初詣なのに、と沙彩は小さな声で呟いた。
「園川さんが居て…秋本が探してくれたから良かったけれど………っ」
「俺なら何にも気にしてないって!月島らしくない」
「え……?」
半泣き状態の沙彩を、宥めるように悠夜が言う。
「もっと強気だろ?とにかく……結果見つかったし楽しかったからいいじゃん」
「そうだよ、沙彩ちゃん!!心配はしたけれどすっごく楽しかった!」
「そういえば、沙彩ちゃんおみくじどうやったん?」
全然気にすることないよ、という雰囲気で。沙彩はほっと一息をついた。
「おみくじ?あー、そういえば開けてなかったよ……」
「気にならへんの!?」
「だって、開けようと思ったらはぐれたことに気付いたから……」
「あー……なるほど」
沙彩は、ポケットに突っ込んだおみくじを開く。
「あ、大吉だ」
「本当ですか!?すごいですね!私たちの中に大吉、いないんですよ」
「そうなんだ……じゃあ、やった~」
思わず笑顔をこぼした沙彩を、皆が微笑ましそうに見つめる。
「な、なによ……嬉しいじゃない。一人だけ大吉って」
「……表情が柔らかくなったって言いたいだけだよ」
晴樹が、全員の気持ちを代弁するように言った。沙彩はそれで、照れくさそうに笑う。
「そうかな……?まあ確かに、自分でも変わったようには思うけど……」
「朝言っただろ、本当に変わってきてるって」
「少なくともちょっと棘は取れた」
悠夜も俊も、口々に言う。沙彩は段々気恥ずかしくなってきて、「もういいから!」と顔を赤くして言った。
「今日は……ありがとう。私も楽しかった」
一歩ずつ、成長していく沙彩。自然と笑顔が出てくる感覚に、沙彩自身も驚いていた。