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コメディ・ライト小説(新)
- Re: 君との出会いは本屋さん。『☆続編開幕☆』 ( No.216 )
- 日時: 2019/07/13 16:12
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
90.
その日の放課後。学級委員の仕事で残っていた悠夜が、ようやく仕事を終わらせ教室を出ようと鞄を持ったその時。
ガララッ、と、教室のドアが開いた。扉の向こうには、沙彩の姿が。
「ねぇ、秋本」
実は沙彩は、幼馴染みである夏音や俊、同じ女子同士である千春達には朝のうちにバレンタインのチョコを渡したのだが、中学校で初めて知り合った上異性というその状況に気恥ずかしくなり、まだ渡せていなかったのだ。
「なに?」
「…………いつもありがと、これ」
「…俺に?」
「他に誰が居るのよ、ここに」
沙彩はそれだけ言うと悠夜から顔を背けた。この2人の間に今、恋の感情があるかどうかは分からない……。
○*
「あ、ありがとう」
「別に、私を学校に来られるようにしてくれたのは貴方だし」
帰り道、沙彩と悠夜が、初めて一緒に帰ることになった。
「こちらこそ、貴方には感謝してるよ」
少しの胸の高鳴りから、珍しく素直な言葉が出る。
「え、素直」
「……別に、そんな日があっても良いでしょ」
正直沙彩には、恋の経験はない。俊以外の男子と喋ったこともあまりなく、悠夜の間にどんな感情があるのかも自分では分かっていない。
この感情は、恋心なんかではない。沙彩はそうやって自分に言い聞かせ、家路までは悠夜との会話を楽しんだ。
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