コメディ・ライト小説(新)
- Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ募集中(=゚ω゚)ノ』 ( No.26 )
- 日時: 2017/07/28 22:18
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
10.お話。
――ここは、学校の教室みたいに暑苦しくなくて落ち着く――…。
涼風書店。建てられてから5年という短い月日の中で、漫画やライトノベル、小説……小説はフィクションからノンフィクションまで沢山の本が置かれている。それに買う、または試し読みする小説を読むコーナーまで付いているので、どんな年代からも人気な書店。
それに、毎シーズン快適な温度に保たれているので、それだけで人が集まってくるような不思議な書店なのだ。
涼風市には涼風書店の他にも沢山の本屋があるが、ここの売り上げは比べものにならないくらいらしい。
沙彩も、その書店に訪れる客の一人。
今沙彩は、読書専用の机があるコーナーの右端――一番のお気に入りの席で本を読んでいた。
沙彩は意外かもしれないが恋愛小説が好き。それをなるべく悟られないようにブックカバーを付けているが、若干のにやけ具合からして恋愛小説を読んでいることが丸わかりである。
(……やば、この本めっちゃ面白い……)
ページをめくる度、また次のページを読みたくなる。本をずっと読んでいるうちに身についた速読の力を利用して次々と本をめくっていくと。
「やっほ~、沙彩ちゃん」
「……夏音」
「それって恋愛小説?」
「そうだけど……今日新しく買ったやつ」
そうなんだ、と言いながら夏音は沙彩の向かい側にある椅子を引いて座る。
「部活は?」
「もちろんサボったよ~。先週一回だけ行ったのは本当間違いだったよー」
「部活に行くのが間違いって……夏音、本当に部活やめた方が良いんじゃないの?」
「面倒だし、いいじゃん!それよりあたし、文房具買いたいからさ~、一緒に見てくれない?」
――やっぱり、学校に行っていると流行とかで文房具を買い換えたりするんだ。夏音の文房具が壊れた、とは聞いたことがない。だから友達に乗せられて買い換えるだけだろう。
――何の意味があるの――言いかけた言葉を詰まらせる。壊れても居ない文房具を買い換えるのは自己満足。
……同じく、沙彩が沢山の本を買うのも自己満足だ。だから文房具を買い換えることに何の意味があるの――そう問いかけるのは、本を何のために沢山買うの――そう自分自身に問いかけてることと同じ。
だから沙彩は、平然とした顔で「いいよ」と言った。……正直学校については知らないので意見を言うことはないと思うけれど、夏音はそれを承知した上で誘ってくれて居るんだから。
「――――で、今回買いたいのはシャーペンと、蛍光ペン。蛍光ペンは今みんな5色持ってるみたいだからさー、私も追加して5色にする!シャーペンは何でも良いんだけど強いて言うなら書きやすいやつ――」
早口に喋る夏音の言葉を沙彩は余り理解できなかった。学校の流行を出されて案の定、聞き取れたのは蛍光ペン5色、ぐらいだ。
「あ、この消しゴム可愛い!あ、メモ帳も欲しいな~」
「そんなに買うお金あるの……?」
「だーいじょうぶ!お母さんにお小遣いもらったから~」
「なおさら貯めた方が……」
そんな沙彩の呟きは届かず、夏音は次々と目にとまった文房具を小さな買い物カゴに入れていく。
「―――そうだ、これ精算し終わったら少しだけ、お話があるんだけど……いいー?」
夏音は下から沙彩の顔を覗き見るよう上目遣いをして軽くウィンクする。
……何の話かな、と思わずには居られなかったけれど、とりあえず頷いておくことにした――。