コメディ・ライト小説(新)

Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ・オリキャラ募集中!』 ( No.34 )
日時: 2017/07/31 10:27
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

13.凍る空気と出された嘘。



「――秋本くんって、前のテスト何点だったのー?」

帰り道の途中。ふと、テストの話題になった。
正直夏音は悠夜とあまり話したこともなかったから、彼については殆ど知らない。逆も言えるが。

「俺は362点だったはず。桃瀬は?」
「あははっ、勝ってるー!あたしは430点~」
「勝ってるってそっちがかよ……俊は?そういえば聞いてないけど」
「俺は454点」
「相変わらず頭良くて羨ましい恨めしいなほんっと!!」

結局、この3人の中では悠夜が一番点数が低いということだ。ちなみにその時の平均点は305点だったので、普通に悠夜もクラスの中では真ん中より上の方である。


「――月島は?」


頭良い、としか聞いていないが……実際の所どうなんだろうか、と思い悠夜が2人に聞いてみると。

「沙彩ちゃんは483点らしいよー?」
「っはぁ!?マジで!!?」

483点というと、多分学年1位を争えるくらいだろう。この学年は全員で155人、全5クラス。そんな人数でも480点以上を取る人は限られているはず。


『叔母さんが塾講師をやってるらしくて』

佐野がそんなことを言っていた。叔母が近所に住んでいて、多分教えて貰えるからそれだけ頭がよいのだろう――。




……近所に住んでなかったら?



(――両親に教えて貰えないのか?)



「なあ、月島の叔母さん?って塾講師やってんだろ?」
「そうらしいけど……それがどうしたの?」
「……いや、お母さんとかに教えて貰えるんじゃないかって――――」




その時、一瞬にして場の空気が凍り付く。



夏音と俊がゆっくりと顔を見合わせて、夏音が何かを思いついたように少しだけ口を開いて言葉を発した。


「―――沙彩ちゃんのお母さんたちは……お仕事で夜遅くまで帰らないから、中々教えて貰えないんだってー…」




嘘。精一杯の嘘を、悠夜に吐いた。


沙彩が――彼には言ってほしくない、そう言っていたから。




「そっか、大変なんだな……あれ、じゃあ俺と俊が月島の家に行ったときにインターホンから聞こえてきた女の人の声って……?」
「あ、あれは叔母さんだと思う……。両親が中々帰らないから叔母さんがよく家に行ったりするんだよ」


前半は本当で、後半は嘘だ。


彼女に両親は――いないのだから。




「―――あ、私は道こっちだから!じゃあねー!」


夏音が――逃げるように、角を曲がって走って帰っていった。









(くっそ……悠夜、妙に勘が良いんだよな……)


角を曲がって走り去った夏音の姿を見ながら俊が恨めしそうに心の中で毒づく。
……正直この空気、耐えられない。


「俺の家族、皆あんまり勉強得意じゃないからさ……誰にも教えて貰えないんだよ。親族に教えて貰えるだけでも助かるよなー」


……上手く……というか、何とかごまかせたのだろうか。
悠夜は気にする素振りもなく家族のことを話していた。


「そ、そうなんだ……」

俊はため息と苦笑いをこぼすしかなかった。