コメディ・ライト小説(新)
- Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ・オリキャラ募集中!』 ( No.47 )
- 日時: 2017/08/05 11:15
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
19.弱さ。
「―――っはぁ……終わったー」
5時間目の数学が終わった後。安堵からか眠気が差していた沙彩は、ゆっくりと立ち上がって保健室のベッドの近くに置いた鞄に手を伸ばす。
……すると。ガチャリ、と少々乱雑にドアが開いた。
「―――っ!」
佐野だ。またいつものように、連れ戻しに来たのか説得しに来たのか。
「真柴先生、さようなら!」
「さ、さようなら……」
非常口兼入り口のドアを開け、沙彩は速攻で裏口から抜け出す。
学校の裏口の近くまで行って、膝に手をつき肩で息をした。沙彩は元陸上部で、走ることには自信があったが――しばらく走ってない故体力が落ちた。
落ち着いたとき、振り返ると。
「げ……あの人追っかけてきてる!」
佐野がここぞとばかりに追いかけてきていた。佐野は女子バレー部の顧問でもある……だから、多少のトレーニングはしているせいで微妙に足が速い。
沙彩は疲れを忘れて走り出そうとすると。
誰かに――腕を掴まれた。
「―――え?」
予想外の事態だったから、思わず沙彩は変な声が出てしまった。自分の視界には佐野以外映っていなかった。気付かれないようにこそこそと移動したのだろうか、気配も感じなかったのに。
沙彩の腕を掴みながらぜえぜえと息を吐いている人物は―――悠夜だった。
「……秋本……?」
「な……んで…佐野先生……から……逃げてんだよ…?今の状況、そうにしか見えねぇ……けど…」
「――っ……離してよ!」
佐野が2人に追いつきそうになったときには、沙彩は何とか悠夜の手を振りきって全力疾走していた。陸上部の彼女の恐るべき速さに悠夜と佐野は追いかけることも出来ず、ただ後ろ姿を見ていた。
「……なんで…逃げたんだ……?」
呆然と口を開けながら、悠夜はそんな疑問を呟いていた――。
○**
「はぁ……はぁ…!」
酸素を目一杯取り入れながら、沙彩は同時にため息もつく。
まさか、悠夜に引き留められると思わなかったからだ。それに……佐野先生から逃げてる、というのを言い当てられてしまった。もしかしたら――勘づかれたかもしれない。
自分の不登校の理由は佐野にもある、と。
「佐野……余計なこと言わなかったらいいけど……」
沙彩の両親が居ないこと、佐野は知っている。それを悠夜に伝えてしまったら……嫌だ。
無駄な心配を沢山の人に掛けたくない。でも……失言が多い佐野なら、いいかねないことくらい知っている。
こんなとき、他力本願するばかりで自分から行動できないのは……沙彩の弱さだ。
「明日も……こうなのかな……」
それだったら嫌だ、と呟いて空を見上げる。今にも雨が降りそうな曇り空は、見るだけでため息をついてしまいそうだった――。