コメディ・ライト小説(新)
- Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ・オリキャラ募集中!』 ( No.48 )
- 日時: 2017/08/06 10:08
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
20.理由でもなければ。
2日目―――。
沙彩は昨日よりか早く家を出て、昨日よりもこそこそと誰の目にもとまらないように学校へ行く。
今は6時20分。バレー部やバスケ部部員などが時たま自転車で通り過ぎていくときは、顔を隠して見られないようにした。自分を少しだけ知っているような人に出会ったら…そして話しかけられたら面倒だ。
夏音や俊などは騒いだりしないが、他の人なら周りに聞こえるような声を出す人もいるかもしれないから。
ちょうど自分の髪で、目立つ青い目は殆ど隠されているから……分かる人なんて少数派だろうが。
「沙彩ちゃん、おはよー」
「……!あ、びっくりした……夏音、おはよ」
気を遣ってかこそこそ話をするような小さい声で急に話しかけてきた夏音に沙彩が大きな声を出しそうだった。
夏音は沙彩の横に並ぶとぱっと笑みを浮かべて、
「沙彩ちゃんに教えてもらったおかげで、昨日のテスト空欄ないんだよー。合ってるかは別としてね。昨日千春ちゃんに聞いたらいつもよりすらすら解けたって喜んでたよ~」
どうやら、夏音や千春も実力を発揮できたようだ。実は沙彩も、昨日のテストは割と手応えがあった方だ。
「……そう。なら良かったけど」
「いつにも増して素っ気ないね?何かあった?」
「いつにも増して、は余計よ……なかったことはないけれど、いつものことよ、テストが終わってから佐野に追いかけられた。ついでに……」
ため息混じりに沙彩が言って一息吸う。
「秋本…?にも追っかけられた。てか、追いつかれた……」
「……え、秋本くんに?陸上部随一の俊足だったのに…沙彩ちゃん」
「私もなんで追いつかれたか分かんないの。てか、気配しなかったし」
足音もしなかったし、そもそも居ることすら分からなかった。予測できなかっただけかもしれないが、本当に分からなかったのだ。
「――私、もしかしたら秋本に勘づかれたかもしれない」
「…不登校の理由は佐野先生にあるって?」
「ええ。……相変わらず察しが良いわね」
そんなことないよ、と笑う夏音も、いつになく真剣な顔だった。沙彩がこの前、「彼には知られたくない」と言ったときの辛そうな顔を思い出したのか。
「夏音は知ってる…?」
「……え、何を?」
夏音の方を首だけ振り向かせて見て、沙彩はこの前ふと疑問に思ったことを口にしていた。
「秋本が……私を、学校に行かせようとする理由。私……前に彼に怒鳴ったことがあるの、私の前で学校の話は極力するなって。でも、私をまた連れ戻そうと私の前に立った。何が彼にそこまでさせるのかなって」
あいつは無理だ、と突き放すことだって悠夜なら出来ると思う。それなのに……なぜ沙彩の前に立てるのか。どれだけ怒鳴っても、睨んでも悠夜はひるまずに他人の心配までしていたほどだ。
そんなこと、理由なしに出来るとは思わない。
「ごめん、あたしは秋本くんのことあんまり知らないからさ。あたし今度聞いてみよっか?」
「……出来るなら聞いて欲しい。私からってのは内緒にしてて欲しいけど」
「はいはーい。あたしが疑問に感じた、って言っておくよー。安心して」
いつも気だるそうに返事をする夏音だが、こういう話は真剣に聞いてくれて……やっぱり持つべき物は友達だと、沙彩は改めて実感するのであった。