コメディ・ライト小説(新)

Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ・オリキャラ募集中!』 ( No.54 )
日時: 2017/08/09 15:11
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

22.予想に反した彼の言葉。



週明けの昼――。不登校の沙彩の家に、郵便でテストが返ってきた。
いつもこうやって郵便で届くか、真柴が届けてくれるかで沙彩のもとにテストが返ってくる。

茶色の封筒の中は、9教科分あるだけに分厚く重い。とりあえず家に持ち帰って部屋で開けようと階段を上る。
でも正直、今回自分の点数にはあまり興味がない。千春と夏音――それぞれ目標点を超えたか、俊の点数を超えたか……そのほうが気になる。特に千春――夏音の話によると部活が大好きだそうだ。そんな部活をテストだけで強制的にやめさせられるのは気の毒。


「95…100…96…――」

沙彩はそろばんをやっていたわけでもないのだが、暗算が得意だ。
3桁と3桁、3桁と2桁の足し算は結構速く計算できる。

「……98。865点、かな」


計算結果、沙彩の得点は5教科478点、9教科865点という結果になった。……おそらく沙彩が学校に行っていれば学年トップクラス並。教師たちからとっては学校に行っていないのが勿体ないと思うだろう。


時計を見ると、午後1時半。


「本屋……行こ」

思い立ってすぐに着替え、玄関を出て涼風書店へ向かう――。



○**


それから2時間半ほど経ったとき――丁度、夏音と千春が本屋へやってきた。沙彩がいつも座る右端の席からは、入り口がよく見えるのだ。
ましてや2人は制服姿なのでよく分かる。
千春には、自分がよく本屋にいることは教えていない――だから、夏音が教えたのだろう。別に本屋にいること自体は教えても平気だし、千春は様々なことを言及しては来ないから別に良かった。


「「沙彩ちゃん!」」

2人が沙彩を見つけて駆け寄ってくる。沙彩は軽く手を振って彼女らを出迎えた。

「あのね!沙彩ちゃん、聞いて!!」

いきなり千春が机を両手でドン、と叩く。その顔はどこか嬉しさを隠せないような笑みを浮かべていた。
沙彩はもしかして、と察する。


「なんと!348点――!!」
「千春ちゃん、平均点余裕で超えたんだよー!」


夏音によると、今回の平均点は286.4点らしい。ということは、平均点を60点ほど超えたということだ。今まで平均点を超えることはまぐれでしかなかった千春にとってこれは大きな成長。


「良かったね、千春!これでバスケ続けられるじゃない」


沙彩が教えただけでこれだけも上がるものなのか。同時に沙彩も嬉しくなり、沙彩があまり見せない――笑顔で褒める。

「本当、ありがと!沙彩ちゃん」

沙彩は知らないうちに千春の雰囲気に侵されているのか―――あまり笑わない沙彩が笑顔を絶やさなかった。




「私も良かったよ…―――あ、俊も来た」


入り口の方をチラリと見ると、制服姿の男子2人が目に入った。……悠夜と俊だ。

「………ぁ……」

悠夜の姿を見ると、ふっとテスト1日目のことが蘇る。


――佐野のこと――彼ならきっと何か言ってくるんじゃないかな――…。



とっさに沙彩は席を立つ。多分悠夜は沙彩の存在に気付いている。
だから無駄だとは思ったけれど、悠夜とは会いたくない気分だった。

この本屋は広い。その端っこの方へ行けば、数十分は見つからないはず―――。



そう思って走り出そうとすると、突然千春に手を掴まれた。


「……沙彩ちゃん?」


千春は沙彩のことを殆ど知らない。不登校児、というのと頭がよい、くらいだ。突然何かのスイッチが入ったように変わった沙彩に疑問を持つのは当然だ。

「あ……」

千春の心配そうな顔は、出会ったときから元気な顔しか見せなかったから珍しくて。千春の雰囲気に圧倒されて、沙彩は座る。悠夜と目を合わさないように。


悠夜と俊は沙彩たちの方へ歩いてきた。

もうどうにでもなれ……沙彩が放心状態で本に目を落とすと。





「――月島。この前…ごめん」


上から降ってきた言葉は、意外なものだった。