コメディ・ライト小説(新)
- Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ募集中(=゚ω゚)ノ』 ( No.6 )
- 日時: 2017/07/17 21:39
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
02.出会いは苦手意識から。
休みの了承を取った後、悠夜と俊は見慣れた登下校の風景を背に歩いていた。
「……マジで居場所分かんの?」
「多分な。でもとりあえず沙彩の家に行ってみるけど」
居なかったら多分あそこに――と、分かる人ぞ分かる独り言をつぶやいている俊を、悠夜は物珍しそうに見ていた。
「……なに?」
視線を感じた俊は悠夜に問う。
「いやお前って……女子の幼馴染とかいるんだな……と思って」
「それどういう意味?悠夜より俺の方がまだ女子に恵まれていると思う」
「嫌味?嫌味だよな?そうだよねー」
そんな他愛もない会話を交わしてしばらく。
「ついた。ここ、沙彩の家」
俊が見上げる先には、割と大きな一軒家が建っていた。
屋根は黒く、最近建てられたのか――コンクリート造りだ。庭は綺麗な花で飾られており、車2台分入る駐車場が備わっている。
「でかー……」
悠夜は思ったことがそのまま口に出た。
「……インターホン押してみるか」
見慣れているのか、俊はインターホンに手を伸ばして押す。
家の方からピンポーン、と繰り返し流れる音が外まで聞こえた。
『はぁい?どなた?』
インターホンのスピーカーから聞こえてくる女性の声。おそらく、沙彩の母親だろう――。
「すみません、松原俊です。沙彩居ますか?」
『あ、ごめんね?今日は居ないわ』
「そうですか、分かりました。有り難うございます」
「居ない」と言って、どこにいるかを教えてくれない母親に少し疑問を抱いている悠夜の姿を見て俊はくすっと笑った。
「……居るところ分かってんのかよ?」
「もちろん。家に居なかったら……」
言い終わる前に、俊は走り出した。
「本屋、だよ!」
息を切らしながら、後ろを走る悠夜に叫んだ――。
「……マジでこんなところに居んの?」
走って付いた先は、この涼風市の中では割と大きく、漫画の取りそろえが良いと評判の涼風書店。平日だというのにそこそこ混んでいる駐車場からはこの本屋の人気が感じられる。
「ははっ、これで居なかったら土下座でもなんでもするよ」
「言ったからな……」
相当疲れたのだろうか、悠夜の顔にはひしひしと怒りの色が見えていた。
「ま、いるはずだよ。いいから中に入ろ」
「あぁ……」
中に入ると、外の暑さを一気に吹き飛ばすような冷房の風が体全体に当たった。今は6月、暑さとともに湿気まであるから本当にじれったいが――それをすべて忘れ去れるくらいの涼しい風だった。
ここの本屋には、買った本や試し読みしたい本を読むコーナーがある。木造りの椅子と机が綺麗に並んでいて、結構場所取りが難しいところだ。
――そこに。
「あ、あいつ……」
5個の机がある中、一番右端に座っていた茶髪ボブの女の子。悠夜が居る場所から見える横顔から、青い目を発見した。
……多分あの人が、月島沙彩だ。
「ん、沙彩だな」
「声掛けに行く……?」
「元々その気で来たんだろ、当たり前だ」
急にほとんど知らない人から声かけられても戸惑うと思うから、と俊が言うと、沙彩が座っている椅子まで早足で歩いて行った。悠夜は少し緊張したのか、俊より遅く足を運ぶ。
「沙彩」
俊が呼びかけると。
「……俊?」
顔だけを振り向かせて、俊にそう言った。
「何しに来たの?」
「俺の友達が、用あるんだって」
「誰?その後ろの子?」
やっと体ごと、悠夜たちに振り向いた沙彩。
そして彼女の視線は悠夜に行った。
「ああ」
「…手短に」
沙彩の独特な雰囲気に気圧されながらも、悠夜は必死に言葉を紡ぐ。
「俺、お前のクラスの学級委員で……秋本悠夜。不登校児ってお前だろ?」
「そうね」
「……一回、学校来いよ?」
「嫌」
「なんで……」
「さぁ?」
聞いたのに疑問形で返される始末。
(この人苦手かも……)
(なんでこいつ、私を学校に……?苦手だわ、こいつ)
このとき、2人の心の中は見事に一致しているのであった。