コメディ・ライト小説(新)
- Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ・オリキャラ募集中!』 ( No.62 )
- 日時: 2017/08/13 11:33
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
25.意味深な問いかけ。
放課後――。
「はぁ……学年集会って何分くらいやるのかなぁ……3分で終わったらいいのに……」
「そんな短いわけないじゃん……」
お昼休みから続く夏音の愚痴を聞きながら、千春は夏音と並んで歩く。夏音たち2年生の教室は全て2階にあり、1階に下りてまた少し歩かなければならない――そんなところに体育館がある。
「多目的ホールみたいなところあるんだからさ…そこでやればいいのにー」
「さすがに150人近く、あの部屋には入らないと思うけど…」
「そんなの詰め詰めに座ってすぐに解散すればいいのー!体育館までの距離が面倒くさい……」
夏音は勉強も程々に出来るし、運動音痴なわけでもない。本当にこの性格だけが欠点だ……。
「ほら、着いたよ」
「うん……もう、帰りたいー…」
「早いよ…まだ始まってもないのに」
○**
この学校の体育館はかなり規模が大きく、それに補強工事もされているためこの近くの住民の避難所になっている。また、スポーツが関連したイベントはここで行われることが多い。
「揃った組の学級委員は私に報告してくださーい」
佐野の声が体育館に響く。
―――。
「揃いましたね?では学年集会を始めます。なるべく早く済ませたいので静かに行いましょう。本題に入ります――」
早く済ませたいって思うならそもそもしなきゃいいのに――夏音含め何人かの不満の目を佐野が受けるが、佐野は余り気にしていないようだ。その態度に反感を覚えるものも結構多いのだが……。
「―――皆さんは、不登校の月島沙彩さんを知っていますか?」
え――?と、言葉にならない呟きを夏音があげる。
確かに佐野は月島沙彩、と言った。――ということは、この学年集会は沙彩について何かを考えるための集会……?
「3組のでしょ?」
「俺知ってるー、去年同じクラスだった」
「1年の2学期から不登校だよね?始業式とかは来るけど……」
「そういえばあの子ってなんで不登校なの?」
なんで不登校なの――その言葉を聞いた瞬間、夏音と俊――沙彩の事情を知っている2人が硬直する。悠夜が少し興味ありげに身を乗り出す。千春が夏音の様子を見て首をかしげる。
「彼女が不登校なのは、両し―――」
「先生!!!」
気付けば、夏音が今までに挙げたことの無いような大声を出して佐野の言葉を遮っていた。遮っていなければきっと――両親が亡くなったショック……などとでも言っていただろう。
事情を余り知られたくない沙彩にとってそれを言われるの何としてでも避けたい。それも、佐野の口からは絶対に。
……1年前の夏休み。両親が亡くなったことは学校に公表しないで欲しいと沙彩自身が校長に申し出て、何とか周りに知られずに済んだらしい。あまり心配を掛けたくない、というのと佐野のように色々言ってくる人が居るかもしれないから。
その努力が、その沙彩の思いが……全て無駄になってしまうから。
「…え?どうしましたか、桃瀬さん」
「………」
夏音は少しだけ佐野を睨む。……それだけは言わないで、と言うように。
これで佐野が気付いてくれるかは分からないけれど、声に出して言ったら駄目――だから、夏音はこうするしかなかった。
今夏音は2年生全員の視線を受けているはずだが、もう構わなかった。
「……?まぁ、いいです。少し不幸なことがあって……これ以上はプライバシーですね」
夏音の必死の目線の訴えは届いたようだ。何とかはぐらかすことが出来たようだ。
「――それで……皆さんは月島さんのことをどう思っていますか?」
少しだけ間をおいてから、佐野は2年生全体にそんな問いかけをした。