コメディ・ライト小説(新)

Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ・オリキャラ募集中!』 ( No.69 )
日時: 2017/08/18 10:59
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

27.不思議な人。



「……貴方たち、ほんと何言ってるの?」

――4人が本屋に行き、沙彩を見つけて……これまでの事の流れを説明した後。沙彩から返ってきた第一声はそれだった。

「いや……だから、一回学校に来ない…?と思って、ね!」
「夏音、貴女病気?急にどうしたの?」

沙彩の事情を知っている人――夏音と俊などには、出来る限り学校のことは話さないでと沙彩の口から言っている。だからその夏音がまさか「学校に来ない?」と言い出すとは思ってもみなかったのだ。

さすがに病気は言い過ぎだと思うが……。

「あたしは正常だけど……その、来る気はないー?」
「あるわけない。あると思ってんの?」

若干喧嘩腰の沙彩に、事情を知らない悠夜と千春は少しだけ首をかしげるが――まぁずっと学校に行かないのなら何か嫌な理由があるのだろう、と大体の事情を察する。

「一回でも良いからさ、マジで来いって」

俊からも言ってみるが……。

「悪いけどマジで無理。俊や夏音なら私の事情はよく分かるはずだけど?なんでそんなに―――」
「君たち、何の話してんの?」


――突如、5人は背の高い男子に話しかけられる――中学生か高校生くらいの男子。伸ばした黒髪を低い位置でくくっていて、赤いくりっとした目が特徴的な人だ。


「――園川さん」
「晴樹先輩じゃん、何やってるんですー?こんなところで」

今の沙彩と夏音の言葉から察するにこの人のフルネームは園川晴樹……ついさっき、聞いたような人だ。

「……この人、文芸部部長っていう……?」
「そーそー。文芸部部長兼演劇部員の凄い人だよー」

悠夜の問いかけに夏音が完全なる棒読みで答える。

「桃瀬……お前、そんな思ってない口調で褒めるな!」
「わー怖ーい。てか、これは晴樹先輩に関係ある話じゃないと思うんですけどー?」
「まぁいいじゃん、ちょっと聞かせてよ」
「――あれ?そういえば……」

さっき、沙彩がこの先輩を見て「園川さん」と呟いたことを悠夜は思い出す。


「……月島と、園川先輩…は知り合いなんですか?」


沙彩にそんな先輩のつながりがあるとはあまり考えられない。不登校前ならまだしも、でも沙彩はこの先輩と部活は違うし接点はないはずなのに。
この疑問は、事情を知らなかったら当然持つものだろう。


「ああ。この前、この桃瀬!を探しに来たときに偶然会ってね、それ以来本のことについて話したりはしてるよ。ちなみに松原くんともその時に会ったから一応知り合い」

桃瀬、という単語を少し怒気を含んだ声で言っているが、とりあえず気にしないでおこう…。


「ていうか、君たちは?」

晴樹が見慣れない顔――悠夜と千春に視線を向ける。

「え?あ、俺は…秋本悠夜っす」
「私は有川千春です!よろしくお願いしますね、晴樹先輩」
「ふぅん……よろしくね、有川ちゃん。それと……あ、そうだ。秋本くんは月島ちゃんの彼氏だったりするの?」

自己紹介をしただけで、急に悠夜にとっては爆弾発言がとんできた。悠夜は素っ頓狂な声を上げて慌てて否定する。

「いやいやいや!違いますって、ここで見たのが初めてってだけでそんな断定しないでくださいよ!俺はただ、学級委員だから先生に頼まれて月島を学校に誘ってるだけです!」
「そうですよ、園川さん。不登校の私に彼氏なんて居るわけないじゃない」

悠夜が焦って否定するのに対して、沙彩は否定するのに変わりはないが悠夜よりずっと落ち着いている。唐突に変わったことを言われるのには慣れているのだろうか、対応が冷静すぎた。



――それにしても、と夏音は驚いていた。

佐野が「学校に来させる」という表現を使っているのに対し悠夜は「学校に誘う」という表現をしている。さっき悠夜が「学校に誘う」と言ったとき、沙彩も少し驚いた表情を見せていたのを夏音は見逃さなかった。

(やっぱり、彼なら……)

いけるかもね、という小さな呟きをこぼし、悠夜がずっと「彼氏」というワードを否定する様子を見ていた。


○**



「――――じゃあ、話をまとめたら…一回、学校に連れてきてくださいって君たち4人が先生に頼まれたんだ?それを月島ちゃんが頑なに断ってるってわけ」
「仕方ないじゃない、私だって好きで不登校やってるわけじゃないし……それに、あの先生の頼みなんか聞かないわ」

後半こぼれた言葉はよく聞こえなかったが、とにかく沙彩は学校に行くのが嫌なようだ。
1回だけでも、というのも頑なに自分の意見を曲げない。


「――まぁ僕は他人に興味なんて無いけど、…月島ちゃん」
「……はい?」


ここまで話を聞いておきながら興味がない、と突っぱねる晴樹の様子に悠夜が少しだけ驚いていると、晴樹が沙彩を呼ぶ。


「――少しでも聞いてあげればいいと思うよ?僕が言えたことではないけどね。じゃあねー、彼氏くんたち」
「……だ、だから俺は彼氏とかじゃないって……」


それだけ言うと、晴樹はとだけ言ってフィクション小説が沢山置いてある本棚の方へと姿を消した。

……沙彩並に不思議な人で、夏音よりも他人に興味がなさそう、そして気だるそうで。
晴樹の存在は結構気になるものであった……。