コメディ・ライト小説(新)

Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ・オリキャラ募集中!』 ( No.73 )
日時: 2017/08/22 11:24
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

28.彼女の考え。



「おはよ!沙彩ちゃんっ」
「あ……おはよ…」

あれから1週間――、今日は、1学期終業式。
理由は特にないけれど、何だか出席しないといけない気がしていつも登校している式の一つ。偶然通学路にて沙彩は夏音と出会った。

沙彩は先週、夏音に「学校に来て」と言われたことを思い出してしまい――つい曖昧に返事してしまった。夏音は一瞬その曖昧な返事に驚くが、すぐにどうしてか察する。
そして、夏音は沙彩に微笑みかけた。


「沙彩ちゃん、夏休み中……考える時間はあるから」


その先。学校に来て、一度でも良いから、誰も沙彩ちゃんのことを悪く言ってないよ……そんな言葉は言わずにそっと閉じこめる。沙彩なら別に想像できるはずだ、そんなことくらい。
もう一度夏音が微笑む。いつもの気だるさは感じない、純粋な笑顔。小さいときから知り合いではないのにいつも近い関係にあったから、沙彩にはその笑顔がどれだけ真剣なのか、一目で分かる。


「夏音こそ、夏休み中に文芸部のこともう少し考えなさいよ」



○**




今回は佐野に追いかけられたり、そんなことはなくそのまま家に帰ってきた。制服のリボンだけ外してブラウスとスカートになった状態でベッドに仰向けに倒れる。

「学校……か」

一人しかいないこの静かな家に響く声。珍しく真剣な顔をしていた夏音に何があったのか分からないけれど、佐野に何か言われたことは確かだ。
そうでもないと、夏音は沙彩に学校に来て、などとは言わない。

それ以外の理由もあるかもしれないけれど――沙彩には思い当たらなかった。



――仰向けになりながら目を伏せていると、突然インターホンのチャイムが鳴った。ビクッと肩を震わせ沙彩が飛び起きる。
学校が終わった後……ということは、佐野の可能性もある。
沙彩は部屋の窓から玄関を見ると。

中々沙彩が玄関から出てこないから不思議そうに首をかしげている――千春がそこにいた。


「な、なんで……千春…?」

意図は分からないが、とりあえず階段を下りていく。そのまま玄関ドアの鍵を開け、ガチャリと開けると。


「沙彩ちゃん!こんにちは!」

千春が沙彩の姿を確認すると、ぱっと明るく笑う。

「……こ、こんにちは」

千春の無邪気な笑顔に一瞬聞きたいことを忘れてしまいそうだったが、すぐに思い出して沙彩が問う。

「え、な、なんで……ここに来たの?」

知り合ったのは最近だが、何だか片言のようになってしまった沙彩の様子を見て千春が少し面白そうに笑う。

「先週あんまり話せなかったから、ちょっと今日……お話ししたいな?と思って!」


ここには夏音も、俊も、悠夜も……いない。千春だけで、ここへ来たというわけだ。

何だかちょっと嫌な予感のようなものがしたけれど、とりあえず適当にはぐらかしても帰ってはくれないと思い沙彩は恐る恐る千春を家に招き入れた――。