コメディ・ライト小説(新)
- Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ募集中(=゚ω゚)ノ』 ( No.8 )
- 日時: 2017/07/20 22:54
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
04.波乱の前兆。
「――それ聞いてどうするのー?秋本くん」
夏音は笑顔だったが……それには少し、怒りの意味も感じられた笑顔だった。聞いてはいけないことなのだろうか、夏音はそれきり何も言わなかった。
「…余計なこと聞いたな。ごめん」
「ううん、けれど……沙彩ちゃんはね、不幸の連続があった……と言っておこうかな」
そう言った夏音の顔は、寂しそうと言い表すしかなかった。どうして寂しそうな顔をするのか…完全には察せないけれど、聞いてはいけないことだというのは悠夜でなくても分かるだろう。
「そのうち沙彩ちゃんの方から話すんじゃないかな」と、柄にもなく真剣な表情で言って悠夜の肩を叩いた後、夏音は沙彩たちの方へと笑顔で戻っていった。
『それ聞いてどうするのー?』
……沙彩について、聞いてはいけないことがあると悟ったと同時に夏音がとてつもなく怒ったら怖いんだと言うことを理解した悠夜であった。
○**
結局この日は、沙彩を学校に連れ戻すことも……まともに話をすることも出来なかった。理由も分からないし、全くの収穫無しと言えた。
夏音と沙彩が帰るというので、俊と悠夜もその後から付いて帰ろうと言うことになった。
「……そういえば、秋本……?あの人は学級委員だったっけ?」
「うん、そうだよー。なんで?」
「いや、別に。どうせ教師に強制で来させられたんだね、あの人。ほんっと、教師は私に迷惑しか掛けないな……。教師の鬱陶しさってのはいつまでも変わらないものね」
『ほんっと……皆、迷惑』
夏音は毒づく沙彩の横顔を見て、少し前――1年くらい前のことを思い出す。
(沙彩ちゃんも…変わってないなぁ)
……不登校の理由として、一番多いのはいじめ……そんな考えがあるかもしれない。確かに沙彩は悪口も言われたが、それよりも不登校にさせるくらいショックを起こす出来事が重なりに重なったのだ。
歩行者専用の道を、4人は歩く。
沙彩と俊は道路側を歩いている。
その時、割と速いスピードで……澄んだ青色をした軽自動車が駆け抜けていった。
「――お母さん……っ…なはず、ないか……」
――その車を。沙彩がじっと見つめていたのを、悠夜は見逃さなかった。……独り言のようなその言葉も、はっきりと悠夜の耳には届いていた。
(お母さん……?のはずがない……?)
どうやら、沙彩には色々と影があるみたいだ。
(今度担任にでも聞いてみるか……って、答えてくれるかな……)
少し苦笑いをこぼしながら、悠夜は綺麗に光る夕陽を見ていた――。