コメディ・ライト小説(新)
- Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ・オリキャラ募集中!』 ( No.80 )
- 日時: 2017/08/25 16:48
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
31.すれ違い。
「……はー…」
千春が沙彩の家を出た後。千春は、あるチラシを見ながらため息をついていた。
チラシには――夜空に咲く花火の写真。「涼風夏祭り」、「8月4日開催」と、目立つ黄色い文字で夏祭りのお知らせについて書いてあった。
本当は――これに誘うことが目的だったのに。とりあえず、自分の好きな人を言って場を和ませた後で言ったなら沙彩も少しは耳を傾けてくれるかもと思ったのだが……
『話はそれだけ?』
その時の顔が少しだけ強張っていて。
この話をすることを予感されていたような気持ちになり――そして、強張ったと言うことは嫌だった、ということ。
沙彩には友達と一緒に夏祭りに行くなどという経験はほぼ無いはずだ。あの夏祭りでは、小学生以下は親同伴でないと行けない。中学生からは自分たちだけで言っても良いのだが――だから、この機会に誘ってみようと思ったのだ。
今日は……7月22日。あと2週間ほど誘える期間はあるけれど、また「お話ししたい」とでも言ったら怪訝に思われるだろう。
「私一人の方が誘いやすいかなって思ったけど……夏音ちゃんと来た方が良かったかな……」
それで了承してくれるかは別として。
千春はまだ沙彩と知り合ってそれほどの期間は経っていない。1ヶ月ほどだ。
多分それも、誘えなかった原因に関係しているんだろう―――。
○**○
千春が帰った後で。
「――な」
沙彩は、なぜかしょんぼりしたように帰る千春の後ろ姿を自分の部屋から見ていた。とんでもなく歩くのが遅い彼女が心配になったから。
自分の部屋のカーテンを開けて、そんな彼女を見ていると。
黒い背景に、何かキラキラしたようなものが浮かんでいる――そんな紙のようなものを千春が手に持ちじっと見ている様子が見えた。
実は沙彩の視力は凄く良く、裸眼でも大体そんな雰囲気だと言うことはわかる。
「…なんか予感を感じたのは、あれか……」
どうして予感なんて感じてしまったのかと思ったけれど、とりあえずまだ千春があのチラシに関して言い忘れた――それは分かる。
おそらくあれは2週間後ほどに行われる涼風市の夏祭りのチラシのはずだ。
(もしかして私が――話はそれだけ、って突っぱねちゃったからかな……)
少し申し訳なさを感じ――もう一度窓の外を見たが、もう千春の姿はなかった。どこかの曲がり角で曲がったのだろう。
窓を開けて、乗り上げるようにしてみても彼女の姿はない。
沙彩がぎり、と歯がみする音が……さっきまで騒がしかった部屋の中に響いたような気がした。