コメディ・ライト小説(新)
- オレンジ色の世界 ( No.117 )
- 日時: 2017/12/25 10:00
- 名前: 雪姫 ◆kmgumM9Zro (ID: f..WtEHf)
昔々、まだ幼かったあの頃。わたしを虐める嫌な男の子がいました。毎日、毎日、泣かされる毎日。泣き虫の称号を得ました。……こんな称号いりません。
お母さんは言いました。その男の子はわたしの事が好きでつい意地悪しちゃうのよって、そうゆうものなんです? 意地悪な事なんてしたら逆に嫌われてしまうのに、そう、大嫌いになって憎むようになってしまうのに。
「よお"アリスちゃん"」
ああ……今日もですか。
「何々ー? 無視? あっれ、俺っ無視されてる系?」
ゲラゲラと下品な笑い声がとても耳障りです。うるさくて、うるさくて、耳を塞いでしまいたい。身体の内底からこみ上げてくるものを我慢せずそのまま吐き出してしまいたい。ああ……気持ちが悪い。
「なあ、なあー、俺アリスちゃんに無視されてんだけどー」
ゲラゲラと下品に笑ってい目の前に立ちふさがるのは同級生の男の子達。全員小学生の頃からの見知った顔。見飽きた嫌な顔。
男の子達のリーダー。目の前に立っている、元は金髪だった髪を黒色に染めてごちゃ混ぜになったトゲトゲのヘアスタイルのハーフ。お父さんが日本人でお母さんがフィリピンの人らしいです。
宗教的なもので耳にはピアスの穴をあけています。身体に穴をあけるなんてわたしには理解できません。痛そうです。赤ちゃんの時にあけた穴と聞いたら、背筋がぞわぞわとして震えあがります。
青い猫型ロボットの漫画に出て来るガキ大将のような体格の良い彼は、現実でもガキ大将です。いつも数名の男の子達を後ろに連れて、悠々と廊下のど真ん中を歩くのです。……日陰族のわたしはいつも廊下の端を歩いているのに、何故かいつも日向へ引っ張り出され、公開処刑が始まります。
「キングー、アリスちゃん今日も黙って震えてるぜー」
うねったくせ毛の男の子がにやけ、言いました。彼は狐さんのようなシュッとしたずる賢い顔をしています。まるで漫画に出て来る、お金持ちのナルシストの男の子みたいに。
キングと言うのは当然ガキ大将のあだ名です。彼らが呼ぶようにわたしが不思議の国(世界)に迷い込んでしまった"アリス"だと言うのなら、気持ち悪いにやけ顔をしているあなた達は"トランプ兵"なんですね。そして彼らを率いるあの人は"ダイヤのキング"となるんですね。
「くすくす……」
廊下のど真ん中で捕まってみんなの前でからかわれる公開処刑。みんな嗤っています。声を殺して嗤っています。教室にいる先生は母のような温かい微笑みで見守っています。
次の授業は音楽。音楽室で行われる授業なので早く行って待機しておきたいのに……目の前に居る邪魔者は全然どけてくれそうにありません。
皮肉な事にダイヤのキングは先生達からの評価も良く、頼れる兄貴分で人の嫌な事を進んでやる彼は、男子女子関係なく人気が高いです。日本人にはハーフと呼ばれる種類の人は美男(美女)に見えるらしいです。美形なダイヤのキングは熱烈なファンが沢山います。ファンの子達からの熱い視線が痛いです。刃のように突き刺さりわたしのレッドゾーンになったHP(ヒットポイント)を減らしてゆきます。羨ましいと思うのなら、いつでも変わってさしあげるのに……。
「そうそう! 俺この前、〇〇に告白されてさー」
こちらはずっと無視し続けているのに、ダイヤのキングは勝手に話続けます。うざい自慢話を、大きな声で話続けています。正直言って、誰が誰に告白して、そして玉砕した話なんて興味がありません。わたしは早く音楽室へ行きたいだけなんです。
どうでもいい話を永遠とするダイヤのキング。今日の話は、わたしのクラスにいる女の子。通称ぶりっ子に告白された話みたいです。あの人か……って言う感想しか出て来ません。
栗色のふんわりとした髪と大きなくりっとした目くらいしか印象のない女の子。噂好きの子から仕入れた情報によると、後ろに手下を従えたいリーダータイプだけど、ぶりっ子なので男子人気を得ようとするばかりに女子人気が無いと、手下の女の子達は陰で悪口三昧だと、そうゆうどこにでもある女子のグループあるあるの噂の女の子。
……だから何? その子がわたしと何の関係があると言うんですか? 同じクラスの子くらいしか関係性を感じないのですが。
「マジかよ。アリスちゃんもそう思うよねー?」
ゲラゲラと下品に笑う男の子達。……いつの日か天罰が堕ちればいいのに。とふと思ったのは秘密です。はあと大きな溜息を吐けば、それもまたいい話のタネになるようで、一段と大きな声で楽しそうに笑いだしました。わたしには何が楽しいのか全く理解できませんでした……むしろ泣き出したいくらいです。
目立つのは嫌いなのに。キーンコーンカーンコーンと校舎一帯に鳴り響いたのは次の授業が開始する合図。あーあ……また遅刻確定です。毎回毎回、邪魔してくるこの人達。移動教室のたんびに現れるお邪魔虫。毎回遅刻するわたしは当然先生からの評価も悪いです。
大人しい事で得をしたことはありません。損する事ばかりだと分かっているのにこの性格を治せそうにありません。どうあがいても最終的にこの性格に戻ってしまいます。自分でも嫌気がする。大嫌いな性格。大嫌いな自分。大嫌いな学校。大嫌いな世界。
世界は変わらない。わたしも変わらない。じゃあ――どうすればこの喜劇は終わってくれるの?