コメディ・ライト小説(新)
- その二十六「優秀な後輩と劣等の俺」 ( No.91 )
- 日時: 2017/10/25 19:50
- 名前: 雪姫 ◆kmgumM9Zro (ID: CKHygVZC)
生徒会。平たく言うのなら学校の首領 冒険もので例えると勇者の前に立ちふさがる最大の敵 お父さんか、……いやそれは違うかもしれない。
とにかく生徒会は一般性達からなんやかんや色々な理由を付けられて恐れられている組織だと思ってもらえればそれでいい……本当は良くない。
俺の名前は玄武 巌 高3で生徒会役員だ。生徒会長の補佐的なことをやっているから、副会長と勘違いされやすが俺は一介の生徒会役員だ……本当は3年生になったことだし憧れの生徒会長を支える副会長の座に着きたかった。
俺達生徒会役員は何時だって大忙しだ。休む暇なく働き詰めの毎日だ。
「えっとこの書類は……あら? あの一緒にまとめておこうと思っていた書類は何処に行ったのでしょうか?」
艶やかでサラサラの黒髪、黒縁眼鏡をかけて重要書類を束ねたファイルを腕で抱え持ってきょろきょろ部屋を見まわす姿は大和撫子のようで、峰麗しい生徒会長高浜。
泣く子も黙る鬼の生徒会長と呼ばれていた時期もあった……あれはまだ高浜が生徒会長に就任したばかりの頃、2年の春のこと。
真面目で手を抜くことが出来ない高浜は何時だってどんな時だって全力で頑張るその姿がまるで鬼の形相だと面白おかしく書いた新聞部のせいで付けられた異名……1年の頃から生徒会役員として頑張ってきた姿を隣で見てきた俺としては文句の一つでも言ってやりたかった、でも本人が構わないと言うからしょうがないじゃないか。噂は所詮七十五日だからと、笑う高浜を見たらなにも言えなかった2年の夏――もしかしたら俺はこの時から高浜の事を誰よりも近くで応援したいと思い、
「会長ー探してる書類ってこれっすか!?」
…………。
「ありがとう。足田さん、助かりました」
「いえいえー会長の為だったら晩飯前っす♪」
「なんですかそれ?」
「「あははっ」」
高浜と楽しく笑い合っているのは1つ下の後輩 足田 高浜の足を自称する女子生徒。実際の話どうだ、足田が来てからというもの高浜を陰ながら応援し支える役目に自然と就任していた俺の仕事を瞬く間に奪っていっているじゃないか。
今だってそう。書類を探している姿が絵になる高浜に見とれている間にささっと、お目当ての書類を見つけ手渡しなおかつ謙虚な後輩アピールを忘れない……出来る後輩だ、正式な生徒会役員でもないのに。
そう足田は生徒会役員ではない。生徒会役員は「なりたい」と言えば「はいそうですか」と誰でもなれるものじゃないんだ。毎年春に行われる生徒会役員決め選挙で決められる、何人かなりたい者達が立候補し、なりたい理由、意気込みを体育館舞台腕で全校生徒の前で熱く語り、本当に生徒会役員に相応しいかどうかを他の一般生徒が選び投票で決める、それが我がホニャララ高校が創立された日から続く春の伝統行事なんだ――だが一つだけ例外も存在する、
「おい高浜。ここと、ここ、誤字だ直せ」
「え、本当ですかっすみません」
「それからここ間違っているぞ。あとここに関して言わせてもらえばだな……」
まず一言だけ言わせてもらえるか……先輩を付けろ、もしくはさん、または会長と呼べ、青龍院
夜空のような長い黒髪に狼のような鋭い眼光、そしてスラリと伸びたモデル体型の誰もが二度見し振り返る美貌をもった2年、つまり俺と高浜の後輩にあたる……なのに青龍院ときたら、
「鬼瓦、私に何か用か」
「玄武だ。あと先輩を付けろ、青龍院」
どんなに注意してやっても「ふんっ」と鼻で笑われ、名前を間違われる……なんで最近転校してやつが俺の黒歴史を知っている、この事については触れないで欲しい、もう古傷を抉りたくない。
青龍院は今年の夏が終わり二学期の始まりに転校してきた季節外れの転入生だ……何故こんな変な時期にこんな変な学校にとも思ったが詳しくは聞けていない、本人が話したがらないと言うのが一番の理由だが、もう一つの理由は、
「いつもありがとうございます、青龍院さん。貴方が生徒に入ってくれたおかげでいつも大助かりです。
時期生徒会長は貴方で決まりですね。本当は今からでも副会長になって欲しかったのですけど……」
「私は私の仕事をするだけだ、役職など興味ない」
「リューイはハードボイルドっすね~」
また「ふんっ」と返事の代わりにツンとそっぽを向いて青龍院は自分の仕事へと戻った。
最近入ったばかりの新米だというのに、高浜の信頼が生徒会メンバーの誰よりも篤い……3年間傍に居た俺よりも、だ。
本来は選挙で選ばれるはずの生徒会役員も能力が優秀あり、生徒会長の推薦貰い、校長先生の許可を頂いた生徒は特別枠として生徒会役員になれる……青龍院はその枠で入った。
流石に入ったばかりの新人に副会長を任せるのは角があり皆いい顔をしないだろうと、今は見習い期間中……となっているが事実上もう既に副会長の座についているようなものだ、働きだけみれば。
優秀な後輩、足田と青龍院がいるため俺の出る幕はなくいつもあっさり解決してしまう……俺だって高浜の役に立ちたいのに。
「どうなさいました玄武さん?」
おっと。いけない、恨めしい目で後輩たちを見つめて、自分の仕事が疎かになってしまっていた。首を傾げ俺を心配そうな顔で見つめる高浜「大丈夫だなんでもない」と返せば安心したように微笑みを返す……決めた、この笑顔を糧に今日も頑張ることを。
「鬼瓦喉が渇いたお茶」
「おーに、自分にもお茶欲しいっす」
この可愛げもない後輩たちは俺の言葉なんて聞き耳を持たないだろう、だけどあえて言わせてくれ
「鬼瓦じゃない玄武だ! あと先輩を付けろ、お前たち!!」
*fan*