コメディ・ライト小説(新)

「あと味が苦いエスプレッソ」 ( No.94 )
日時: 2017/10/30 10:44
名前: 雪姫 ◆kmgumM9Zro (ID: Tm1lqrhS)

+メッシー優勝おめでとトロフィー代わりの小話第一弾+おまけ



10月某日。世間はまじかに迫ったハロウィンで浮かれ陽気だっています。自分にはあまり関係ないですけどね。
今日は創立記念日という事で平日だけど学校はお休みです。平日のお昼にどうどうと町を歩けるなんてとっても気分が良いですよねっ。
あとそうゆう日は大好きな人と一緒に過ごしたい……のにっ。

「僕は~モンブランで~、リョクさんは」

「僕はエスプレッソを」

「モンブランとエスプレッソ、お一つずつですね。かしこまりました。少々お待ちください」

”ガサガササ”

な・ん・で・よりによって飯野先輩なんかと、楽しくお茶しているんですか~~~~しーさんっ!!!!
ぐぎぎーと歯を噛みしめて木の枝を掴んで大きく揺らしてしまいます。悔しすぎてっ。
ことの始まりは今から2日前、とある企画書を発見したところまでにさかのぼります。


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「先生ーいますか? ちょっと相談したいことが……なにこれ?」

雑談板の方にある【自称ゲーマーさんの創作部屋】誰でもお遊びに来てねって宣伝ですか乙。
……どうでもいい話は置いといて、とにかく先生の創作部屋に訪ねた、自分朱雀 美希です。自己紹介するタイミング少し見失ってました……ごめんなさい。
で、ちょっと今後のこの作品の進行方向について先生に相談があって来たんですが……足元に「めっしーおめでときかくしょ」と平仮名ばかりで逆に読みずらいタイトルが書かれたノートを発見。

「…………ごくり」

人の日記帳って見たくなりません?
見てはいけないものって特に見たくなりませんか? カリギュラム効果ってやつです? そんな感じの好奇心で落ちていたノートを手に取って見てみたんです……今思えば見ない方が良かったかもしれません。

「な、なんですかぁああああああこれはああああああ!!!?」

そこに書かれていた内容はこんな感じでした。

・なんかめっしーとしおちゃんをくっちゅけたい

・いやむしろもう、主人公&ヒロインはふたりでいいでね?

・本屋とかで運命的な出会いして

・運命的な教会でゴール……

「したら駄目ですぅううう!!!」

教会でゴールインってときメモですかっ!? 古いですよ!! そんなの今の世代の子だったら知らない方が多いですよ、きっと!
百歩譲ってしーさんが主人公なのはいいとしても、ヒロインが飯野先輩なのはいただけません!! そこは、じぶ……ごほん。

「と・に・か・く、こんなの絶対に認めないです! 講義……しても聞いて貰えなさそうなので……自分で阻止しに行きます!」

自分はしーさんの騎士ナイト
しーさんの純潔を誰にも汚させたりなんてしませんからね!! 待っててくださいしーさん、今行きます!

ガチャリ。

『……行った?
 いや~怖いね、恋する乙女という生き物は……やれやれ。あと隠れるのはクローゼットに限りますなあ。
 ふ~む。我々の計画を邪魔する者現れナウ』

この時の自分では知る由もなかったんですが、先生の野郎また変な事を計画してやがっているようなのです。
なにを企んでいるでしょう? あと最近ぶっちゃけ、やけくそ、トーク多いですね。猫被るの止めたんですか?
でもいいです、そっちがその気なら自分にも考えがありますから!

――これは戦争です。しーさんさんの純潔をかけて自分と先生の戦争なんです! 絶対に負けるもんですか!!




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……と、気合を入れたところまでは良かったんです。本屋でしーさんと飯野先輩が来るのを待ち伏せして、ファミレスに向かう二人の後を見つからないようについて来て隣の席に座る所までは本当、そこまでは良かったんです。いつもそこまでは良いんですよね……。

「ねねー、ワタチ バナナハフェ食べたい♪」

「いいですね、先輩。じゃあ、僕はいちごパフェ……美希はどうする?」

パフェとかどうでもいいですよ。なんで……なんで……

「なんでいるんですかっ、千代紙先輩!?」

「ほえ?」

先生が自分に用意した嫌がらせはまさかの、千代紙先輩でした。空気を読まないアホのチャンピオンでした。
しかもスケットに呼んだはずのひそっちはまさかの千代紙先輩と意気投合しちゃって、仲良しになっちゃってるし……もう! ミイラ取りがミイラになったら意味ないじゃん!! しっかりしてよっ……と心の中で叫ぶけど、そこ声は当然2人には聞こえてません。

「はぁ……もうやだぁー」

『あと味が苦いエスプレッソ』 ( No.95 )
日時: 2017/10/30 10:45
名前: 雪姫 ◆kmgumM9Zro (ID: Tm1lqrhS)

「それでね、あっくんがね♪」

「そうなんですね」

背後で楽しくキャッキャウフフと話している人達のことはこの際無視です。もう無視の方向でいきましょう。千代紙先輩の相手なんてしてたら身が持ちませんよっだって……まず最藤先輩の身が持ってませんし……まあそんなこと自分には関係ないのですが。
いつだって最重要項目はしーさんです! しーさんの身の安全が最優先なんです!
席を隔てる植木のすぐ向こう側にしーさんが……とおまけの飯野先輩がいます。盗み聞きとかあまり趣味じゃないですけどこれもしーさんの為、心を鬼にして聞き耳を立てます。
でも……。

「バナナうまっ」

「いちごパフェもすっごくおいしいですよ、ちよ先輩」

「マジ!?」

「……うるさい」

後ろの2人がうるさすぎて全然、しーさんと飯野先輩の会話が聞こえない!
唯一聞き取れたのは「ワニ」「タカ」「タヌキ」え……動物の話? 動物の話をしているんですか? あの飯野先輩が?

「ぷっ」

あまりに似合わない姿に思わず吹き出しちゃいましたっ。見た目猫みたいな先輩が……動物の話を……瞳を輝かせて生き生きとした表情で熱く語る……ぷぷっ。
ヤバイ……ツボに入っている場合じゃないのにっ笑いが止まらないっぷぷっ。

「お待たせしましたー」

へ? 店員さんが自分達の席に来ました。「お待たせしました」ってなにがです? 先輩たちが注文したものは全部きているはずですよね? 千代紙先輩のバナナパフェにひそっちのいちごパフェ……

「エ」

椅子に座り直して改めて店員さんを見たら固まりました。いえ……あの……ビックリしすぎて……なに持っているんですか、店員さん?
店員さんが両手いっぱいに抱え持っているものは。

「メイプルスター一押しDXパフェお持ちいたしましたー♪ どうぞお召し上がりくださいませ☆」

ここファミレス『メイプルスター』で作られているパフェを全部混ぜてしまった……究極の巨大パフェでした。
どういえばいいのかな。ほんっと大きいの。大きすぎて絶対に一人で食べるものじゃないです。あと乙女が食べるものじゃないです。こんなの食べたら一週間くらいなにも食べられなくなりますよっ! 毎日運動漬けの日々ですよっ!
誰が好き好んでこんなもの食べるんですか……テーブルの中央に置かれるDXパフェを睨み付けます。何故か店員さんが自分の方を見つめ「ガンバ」と小さくガッツポーズ、どうして自分に?
――まあすぐにその理由も分かったんですけどね……。

『あと味が苦いエスプレッソ』 ( No.96 )
日時: 2017/10/30 10:12
名前: 雪姫 ◆kmgumM9Zro (ID: Tm1lqrhS)

そして始まりました。始まってしまいました。悪魔のゲームが。

「うぇーい!! チキチキ第一回 メイプルスターでイッチバンおいちいDXパフェ早食い王決定戦ーー!!!」

「わぁ~い」

椅子の上に立ち上がってシュワッチッ! みたいな。怪獣を倒して故郷へ帰還するウル●ラマン的な感じで盛り上がっている千代紙先輩の隣で温かく優しい拍手を贈るひそっち。ひそっちはいったいどこポジションなの? そっちサイドに堕ちてしまったの?
と・ゆ・う・よ・り・も。

「なんです、DXパフェ早食い王決定戦って」

「説明しよう! チキチキ第一回 メイプルスターでイッチバンおいちいDXパフェ早食い王決定戦とは、メイプルスターでイッチバンおいちいDXパフェを誰が早く食べることが出来るか競う競技なのである!!」

でしょうね。聞き方を間違えました。

「えっと……ですね、千代紙先輩。早食い王決定戦って言っても、DXパフェ一つしかありませんよ?
 それにこれ……誰が食べるんです「――そんなの」

いい終わる前に言われました。

「ミキミキちゃんに決まってるじゃんっ☆」

「頑張れ美希っ!」

……でしょうね。店員さんが持って来た辺りでなんとなくそんな気はしてました……うん。あとひそっちその期待に満ちた目やめて、地味に精神的ダメージが大きいから。女の子は常にダイエットの狂戦士なんです、そんなもの食べたら死にます、精神的に。

「はぁああ!?」

「な、なんですかっ突然大きな声をあげないでくださいよっ千代紙先輩!」

しーさんと飯野先輩に気づかれたらどーしてくれるんですか!?

「大変だよっミキミキちゃん!」

「……だから何がです?」

「放している間にもDXパフェの上にのっってるアイスが溶けはじめてるぅぅぅ」

「んなっ」

上を見上げてみれば、ボールサイズに削られた、バニラ、イチゴ、チョコミント、その他諸々のアイスが溶けてテーブルの上に滴り落ちていました……なにか視線が、

「……ぅぅぐすん」

「……ぁ」

視線を感じる方向を見てみると、そこには厨房の出入り口から頭だけを出してこちらを凝視しているコック姿の中年男性がいました。……誰?

「店長っ、お客さんに失礼ですって」

止めに入る店員さんって、あの中年コックさん店長さんなの!?

「店長のあの悲し気な顔を見ただろう! いいのかっミキミキちゃん、このままDXパフェを溶かし無駄にして!  泣くぞ! 泣いちゃうぞ! 店長が!!」

「大丈夫、美希なら出来るよ! 自分を信じて!」

「うぅぅ」

なんなんですっこの状況、この微妙な空気は!!
店長が泣く姿なんて見たくないですよ! 中年男性の泣き顔なんて誰得って話ですよ! あと少しばかり罪悪感もありますし……。
そしてひそっち! だからその期待に満ちた目、やめてってば! ほんとっ変なプレッシャーが凄いから! 図凄い重いからっ。

「…………っ」

チラリと後ろに座っているしーさん達の方を見てみます。なんだか今度はドレスの話をしているみたいで、こっちの異様な盛り上がりには気がついていないみたいです。……良かった。でもしーさんと飯野先輩でドレスの話?? 全然想像できない組み合わせ……ちょっと気になるかも。

「セイッ! ヒメの一気食べ見てみたい~♪」

「見てみたい~♪」

「ここはホストクラブですかっ!? シャンパンタワーなんて頼んでないですよっ!! 目の前にあるのはカロリーの化け物ですよ!!」

「あっ。美希上手いっ座布団一枚っ♪」

「いらないよ! でもありがとうっ!」

この人たちといると必然的にツッコミ側に回されるから嫌だ。と思いながらスプーンを握りしめ、

「美希っいきます!」

「イッケーー」

「ファイトだよ、美希!!」

「ハグハグハグッーー」

――そこから現在に至るまでに何があったのか、記憶がおぼろげです。よく覚えていません。
気が付けば目の前にあった大きなXDパフェの山は消えていて、あるのは空っぽの器だけ。
涙を流した千代紙先輩とひそっちが「よく頑張った。頑張ったね」と優しく声をかけて背中をさすっていました。
あぁ……勝ったんだ自分は。DXパフェに勝ったんだ。
見事食べきったという達成感と、あのカロリーの化け物を食べてしまった罪悪感、そして10分で巨大パフェをバカ食いしたせいで気持ちが悪い。

「ううっ」

「だ、大丈夫、美希っ。今にもさっき食べたパフェがデビューしそうな顔しているけど」

うん……だいじょばないかも……これ。下手したら上からじゃなく下からもデビューしちゃうかも……うっぷ。
でもお手洗いに駆け込む前に、死ぬ前にもう一度だけしーさんの顔を……拝みたい。

「わぁ///」

「お~///」

ん? 目の前に座る2人の反応が可笑しい。顔を赤くさせて、千代紙先輩は興味津々といった感じで目を輝かせて食い入るように見つめている、その反対にひそっちは目を伏せて恥ずかしそうにチラチラ、チラ見してる……2人ともなにを……見て……ぁ。

「あ~ん」

「あ、あ~ん」

”ガサガササ!!!”

後ろを振り返って見えたそれは飯野先輩の下衆野郎が気高き存在であるしーさんを汚しているところでした。

「な、なななななななななっ!?」

「……さすがめっしー先輩……勉強になるな」

なに感心しちゃってるのひそっち!? 駄目だからね、あんな危険要注意人物に憧れたら!! あんなの猫の皮を被った狼がついに本性を現したって奴だよ!!
何してくれちゃってんですかっ飯野先輩!! まだ自分だってそ、そんなしーさんに「あ、ああああ~ん」だなんてしたこともされたこともないのにっそんなアッサリとぉおおおおおおお!!?

「……このエスプレッソは苦くて不味いですね」

「▽◇●□▲〇!!?」

「み、美希ッ!?」

し、しーさんが口を付けたエスプレッソを飲んだ……だとっ!!?

「ぶぅぅぅううううう」

――その瞬間 さっき食べたDXパフェが口から華々しくデビューしました。それは本当、定時に噴き出すイルミネーションで飾られた噴水のように色鮮やかで楽しいものだったら良かったのにね。












                                      To be continue……