コメディ・ライト小説(新)

その三十「優雅な死神」 ( No.99 )
日時: 2017/10/31 18:24
名前: 雪姫 ◆kmgumM9Zro (ID: 4CP.eg2q)
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=723.jpg

水仙寺財閥主催ハロウィン 仮装大会が終わった夜のこと。

「ふんふんー♪」

いやあ盛り上がった盛り上がった。今日の仮装大会は大いに盛り上がったね。商店街を舞台としてみんなで楽しく仮装をして町を練り歩き「トリックオアトリート」とお菓子をねだる子供達にマカデミアナッツを配る今回の仮装大会は大盛況に終わることが出来たよ。いやあ良かった良かった。

「ふんふーん♪」

「おや。ずいぶんとご機嫌ですな坊ちゃま」

「おや爺やかい」

廊下のへりに立ちぺこりと頭を下げている爺や。そうかいたんだ、ごめんよ、今日の出来事の余韻に酔いしれていて全然気が付かなかったよ。

「今日は凄く楽しめたのでね」

「さようでございますかそれは良かったですな。これも全て坊ちゃまが率先して皆を盛り上げようと頑張ったからですよ」

ふっふっーそうだろうねっ! そうだろうともさっ! なんたって今回の企画を考えたのは他でもない、この僕様なのだからっ当然といってもいいよね?
父様は常々、水仙寺財閥の人間ならばいつなんどきでも民が楽しめる企画を考えられるようにしておけ、と教え込まれてきたからねっ。町の人たちが楽しめる行事ごとを考えるのは水仙寺財閥の人間ものとして当然のことさ、と熱く語ってあげると爺やは涙を流して大喜びしてくれたよ。「坊ちゃま……爺やの知らぬ間に立派になられまして……」って大号泣だっとんで逆にこっちが気まずくなってしまうよ。でも褒められて悪い気はしないけどねっ♪

「ふんふーん♪」

鼻歌まじりにスキップで華麗にダンスを舞いながら自室へと向かうよ。今夜は良い夢が見られそうだ……ガチャリとドアノブを回しドアを開けてみたら、

「ど……どうしましょう?」

先客がいたようだよ。

「……へ?」「……え?」

「「きゃあああああああああああああああああああああ!!!?」」

くるんっバタンッと一瞬で僕様は後ろを振り向かされて、トンッと背中を押され部屋の外へ追い出されてしまったよ……なして?

「いやっここは僕様の部屋なのだけども!?」と、ドンドンッドアをノックすると部屋の中から「そ、そう、れすた……」と小さな声が聞こえて、ドアが内側から開けられたよ。……よかったこのまま自分の部屋をジャックされて締め出しをされたら、さすがの僕様でもどうしようかと困ってしまったよ。

改めて自室に入ってみると「…………」ブルブルと親鹿とはぐれライオンに睨まれた小鹿のように震える少女が一人。自分で言って泣きたくなってくるよ……。
歳は僕様よりかは下そうな気がする。背は低く長いサラサラの金髪ヘアは腰の辺りまで伸ばされ、目は伸ばした前髪で隠れて見えない。恰好は今日、千代紙君達に貸した魔女っ子の衣装を着ているようだよ……なして?

「それで……その、君……たちは?」

目の前に立つ少女に尋ねてみる。たちと言い直したのは彼女の足元に隠れるようにしてもじもじしている……カボチャの頭の小人? がいたから。

「ハ、ハジメマシテ」

片言の挨拶。もしかして彼女は外国人なのかい? まあ日本人ではなさそうだよね、金髪だし。

「ワタシ、サタニチア・ベルフェゴール・クロアチア、れす」

……はい?
震える腕を押さえて振り絞るような声でぼそぼそと何かを呟いている彼女。でもその声はあまりにも小さすぎて僕様の耳までとどかないのだ。すまない、もう一度頼むよとお願いして「ワタシ、サタニチア・ベルフェゴール・クロアチア、れす」もう一度「ワタシ、サタニチア・ベルフェゴール・クロアチア、れす」もう一度「ワタシ、サタニチア・ベルフェゴール・クロアチア、れす」という会話を何度か繰り返したところでやっと彼女が何と言っているのか理解できた。それにしても長い名前だね、と返すと、

「長いので、ミンナ、ワタシのこと、サターニャ、呼ぶ、れす」

またぼそぼそと……上の同じやり取りをもう一度繰り返した所で納得。いや納得している場合じゃないのだけどね。だってまだ彼女が長い名前をした女の子で愛称はサターニャ君と言うらしいってことしか分かっていないのだからね。
なんで僕様の部屋に侵入していた理由はまだなに1つとして分かっていないのだからねっ。という気持ちで彼女を見つめていたのだけど……何を勘違いされてしまったのかな?

「この子、ジャックオランタン、れす」

「ボォォオオオ」

足元にいる小人だと思っていたカボチャ君を紹介されたよ。うん。とゆうかカボチャ君。君の鳴き声って炎が燃える音なんだね。危なくないのかい? 口を開けると火花が飛び散るのって、とゆうよりもう喋らないでくれるかな? シルクで作られて僕様のじゅうたんやベットその他もろもろに燃え移られると非常に困るから……頼むよ? ちなみにこれはお笑い芸人さん達の「押すなよ! 押すなよ!」じゃないからね? 本気と書いてマジと読むって奴だからね?

「それでサターニャ君は、何故僕様の部屋に?」

女性が僕様の部屋を訪ねて来るのはよくあること、それは別にいいかな? いや良くないけど、隠していたエキサイト本がこれ見よがしに机の上に置かれていた時なんか凄く困ったけども。

「はいれす。ワタシ、魔界の、学生で、死神、見習い」

「ん……? 少し待ってくれたえ」

聞きなれない単語が混ざっていたのは気のせい? 僕様の悪戯に生み出してしまった幻聴かな? と、気になってサターニャ君にもう一度同じ台詞を言って貰った「はいれす。ワタシ、魔界の、学生で、死神。、見習い」うん。なにも間違いなどなかった。

「卒業、試験」

口下手な彼女に代わって説明しよう。
サターニャ君は実は人間ではなく、魔界と呼ばれる(人間が住む人間界(現世)とは別の次元にある場所らしい。地下にある的な地獄とは別物なのだそう。よく間違われるので悪魔族にとっては大変迷惑に思っているそうです。いいかい諸君? これからは間違っちゃあいけないよ)世界の出身で、悪魔族 死神職希望の学生さんらしい。
僕達人間の世界でいうところの3年生で卒業試験の真っ最中、立派な死神になるための最後の試練かつ、最初の仕事として誰でもいいから人間の魂を狩りとってこいと、魂を狩りとってくるまで魔界に帰れないと、そうゆうことらしい。

「……で、僕様の部屋に?」

「うう、ん、ミイラ、猫さん」

ハロウィン。それは日本でいうところのお盆のようなもの。人間界と魔界との境界線があやふやになって、魔の者がこちらの世界に来やすい時期。これにあやかって人間界に到着したサターニャ君が最初に出会ったのは、ミイラ男のコスプレをした猫目の親切な男だったらしい。
人間界に来たばかりで右も左も分からないサターニャ君にそのミイラ男は優しく微笑み声をかけて、魂を狩りたいのなら丁度いいのがいると、僕様を紹介したらしい。ご丁寧に家までの道案内プラス万全のセキュリティ対策をしているはずの我が邸に侵入して此処まで案内してくれたそうです。
……何故だろう。そのミイラ男、心当たりがあるかもしれない。凄く最近、わりと近所、今日一緒に遊んだような気が……するのは気のせい?

「と、ゆうことで……」

「……え?」

言うが早いかサターニャ君はその小さな体のどこに隠していたのか、大きなカマを取り出しそれを両手で持っておおきく振りかぶって

「お命、ちょうだいっ」

ブンッ!! 振り下ろされました。前髪数センチ切られました。

「うわあああああああああっ!! やめ、やめてええええええええええええっ!!!」

「まって、くだ、さい。逃げ、られる、と、うまく、切れない」

「切らなくていいからあああああいやああああああああああああああっ!!!」

――こうして僕様と死神見習いのサターニャ君との奇妙な共同生活が始まったのでした。






この話って1話完結型? それとも続きものなのかい? え? そこまで考えてない? 
そんなあ……せっかくここから僕様のターンが始まりそうだったのに……残念だよ。残念でしかないよお。




                            
                                   To be continue……?