コメディ・ライト小説(新)

Re: エンジェリカの王女 短編集 ( No.13 )
日時: 2017/09/08 17:10
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: K3f42Yhd)

『一般市民の王女観察記〜花屋編〜』

 私の名前はフィーネ。エンジェリカ王宮近くの花屋の娘で、今は両親が営む花屋でお手伝いしてるの。
 今日はアンナ王女に、誕生日祝いの花束を献上しに行ってきます!確か王女様って、とっても美人で可愛らしい方なのよね。
 私みたいな一般天使はなかなかお近づきになれない。せっかくの機会だから、悪い印象にならないようにおめかししていかなくちゃね。
 そういうことで、今日はいつになくお洒落してきちゃった。
 髪の毛もちゃんとセットしたし、服も特別な日用の一番高級なやつを着てきた!高級って言っても、まぁたいしたものじゃないけど。
 花束も持ったし、いざ出発!

 事情を話して通してもらった。アンナ王女の自室の前で待つ。うぅ、動悸がする……。
 しばらくすると係の方が「お待たせしました」と言って扉を開けてくれた。いよいよご対面!うぅ、動悸が……。

 恐る恐る部屋へ足を踏み入れると、アンナ王女が温かく迎えてくれた。
「花束!やっと届いたのね」
 自ら駆け寄ってきてくれて、素敵な笑顔を咲かせる。金の髪はとっても綺麗だし、ドレスもとても豪華で、ついつい見とれちゃった。
 さすがは王女様、あらゆるところのレベルが違う!
 それにそんな美しい方なのにとても気さくなの。平民の私なんかにもすっごく親しげに話してくださって……、感動で涙が出そう。
「えっと、お花屋さん?女の子なのね。お名前は?」
「え、えと……フィーネ……です」
 恥ずかしながら、まともに答えられなかった。緊張して途切れ途切れになってしまう。
 それでもアンナ王女は笑顔を崩さず「よろしく」って言ってくださった。なんて素敵な方なの。綺麗なのは容姿だけじゃないのね。

「今日は花束、本当に嬉しいわ。ありがとう!フィーネさん、またいつか会いましょう」
 別れしな、わざわざ部屋の外まで出てきてくださるアンナ王女。私、もう泣きそうだった。
 だって王女様がだよ?一平民のためにわざわざ部屋の外まで来てくださるんだよ?
 そんなことって信じられない。

「エリアス、ちょっと外まで送ってあげてくれる?」
「私がですか?」
「そうよ。せっかくのお客様に何かあったら大変でしょ?」
「いえ、王女の方が……」
「ダメよ。フィーネさんを送ってあげて」
「……分かりました」

 それにしても、アンナ王女の隣にいらっしゃる男性、とてもかっこいい。睫は長いし、顔は凛々しい。背もそこそこ高くてスタイルも抜群。それに、白いお洋服もよく似合ってる。
 王女様と二人で話している姿、絵になるなぁ。きっと彼も育ちがいいのね。

「ではフィーネさん、王宮の外までお送りします」
 ひえぇぇぇ!
 し、喋りかけられるなんて……。心臓の鼓動がとんでもなく加速する。
 お願い、心の準備をさせて!
「フィーネさん?」
「はっ、はひぃっ!?」
 ああぁぁぁ!
 おかしな声を出してしまい赤面する。恥ずかしすぎる……。
「エリアス、脅かしちゃダメよ。優しくね」
 その様子を眺めていたアンナ王女が男性に注意する。申し訳ないです……。私が男慣れしていないばかりに……。
「はい、王女。失礼しました、フィーネさん。私、それほど怖いですか?」
「い、いいえ」
 私は凄まじくドキドキしながら何とか答えた。
「では参りましょうか」
「……はい。ありがとうございます……」

 こうして私は、王宮の外門まで彼に送ってもらった。
 こんな贅沢な経験、私の人生ではもう二度とないかも。こんなかっこいい男性と一緒に歩くことなんて、最初で最後になりそう。
 別れしな、私は勇気を出して尋ねてみた。
「あっ、あの……」
「どうなさいました?」
「貴方と王女様は付き合ってられるんですかっ!?」
 キョトンとした顔をされる。
 そうよね。一介の天使がこんな質問、叱られるよね。
「え?」
「あ、こんなこと……ごめんなさい。急に変ですよね」
 しかし男性は嫌な顔一つせずに微笑んで返す。
「私は王女の護衛隊長です。私ごときがあの方を愛するなど、そんな贅沢できませんよ」
 あれだけ近くにいる方でもそう思っているんだ。そう思い、少し親近感を抱いた。


 ——その後、王宮。

「ただいま戻りました」
「お帰りなさい、エリアス」
「いきなり送れとは驚きました。ふふっ、王女にはいつも驚かされます」
「ふふっ。にしてもあの子、初々しくて可愛かったわね。えーと、名前は何だっけ?」
 アンナはノリで聞いただけなので覚えていなかった。
「フィーネさんです」
「そうだった!」
 恐らく三分後には忘れるだろうが。
「忘れていたのですね、王女」

 アンナは気さくだが、興味のないことに対しては、ちゃんと覚えようとしない質だったりする。

◇終わり◇