コメディ・ライト小説(新)

Enjoy Club 第4話『あなたのために……』(2) ( No.120 )
日時: 2010/09/03 18:46
名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: vDb5uiaj)


 ――……ウィルくん、やっぱり怒ってるよねぇ……


 恵玲は、いつもの茶色い屋根の一戸建てを見上げ、眉を下げた。

 今は朝の7時半。小松家を出て最寄りの“松原駅”で亜弓と別れた後、その足でここに来た。朝の6時くらいに、ウィルから集合命令が出たからである。

 腕を組んで、どう弁解しようか頭を悩ませる恵玲。
 彼女の予想だと、おそらく白波と水希は何も言ってこない。問題はウィルなのだ。彼はこのチームのリーダーをやっているだけあって、基本的に真面目だし、E・Cに強い貢献心がある。組織の長・影晴に対しての忠誠や尊敬の念も並ではないだろう。まぁ、E・Cや影晴に対する気持ちは彼女を含めた全員が同じものなのだが。

 とにかくそういう部分があるだけに、今回のような任務の妨げになることをした恵玲にどういう行動をとるか、それが心配だったのだ。
 任務前は知り合いのような反応さえしなければ大丈夫だろうと高をくくっていたのだが……。

 恵玲は心の中で「よしっ」と気合を入れ、真っ直ぐな瞳で正面のドアを見つめた。


「――何してるんだ、こんなところで」


「ふぇ!?」

 突然の背後からの低い声に、恵玲はびくっと肩を揺らして勢いよく後ろを振り返った。
 いつも通りの表情の白波が、彼女を見下ろしていた。

「白波くん……! 任務以外で会うの、久し振りじゃない!?」

 興奮して目をキラキラとさせる恵玲。
 しかし彼は「そうだな」と呟き、恵玲を追い越してさっさと玄関のドアを開けてしまった。

「あ、待ってよぉ」

 恵玲が慌てて彼を追いかける。さっきまでの不安が、彼の変わらぬ態度を見るだけで和らいでいくようだった。