コメディ・ライト小説(新)

Enjoy Club 第5話『不確かなもの』(7) ( No.332 )
日時: 2010/09/26 18:59
名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: hH8V8uWJ)

 夏休みも後半に入る頃、突然恵玲と津波から同じ内容のメールが送られてきた。ほぼ同じ時間帯に来たので何事かと思って恵玲の方を開き、私は部屋で1人何度も頷いてしまった。
 それは私達のクラス、1年4組の文化祭委員の子からの転送メールで、冒頭部分に注意書きとして、“1年4組でメアド知ってる人に回してください”と書いてあった。つまり、恵玲と津波は別のクラスメートから回って来て、それを私に回してくれたのだろう。

 私はベッドの上に軽く体育座りをして、続きを流れるような速さで読んでいった。背中まである茶髪がすだれのように邪魔してくるのを、耳にかけて対処しながら最後まで目を通す。そしてそのメールを念のため美久と静音にも転送すると、パタンと携帯を閉じて壁に下がっているカレンダーに目をやった。

 ――……明日、は予定ないですね

 ほっと胸をなでおろして、手元の携帯を見下ろす。
 真っ白でシンプルなデザインの携帯。それをじっと見つめていると、一瞬その表面に金髪の青年の顔が映ったような気がした。それも、優しく、甘く微笑む大好きな表情が。

 持つ手に自然と力がこもる。

 ――あきらめたくない
    それなら私は、何をすればいい――?

 何日も前に風也から届いたメール。いつもなら食いつくようにその場で返すメールを、もうずっと放置している。さすがに彼も不思議に思っているだろう。もしかしたら今頃メールが来ないことを怒って、私のことなんか嫌いになってしまっているかもしれない。

 はぁ……と深いため息が漏れた。立てた膝に顔をうずめる。

 あれが全て夢ならよかったのに、と心の隅で何度も呟いていた。