コメディ・ライト小説(新)

Enjoy Club第2話『金髪のキミにひとめ惚れ』(3) ( No.40 )
日時: 2019/07/01 15:57
名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: y68rktPl)

 風音高等学校は、他の学校と比べると珍しいことに屋上の扉が年中開放状態である。もちろんその分フェンスは高く丈夫に作られているが、それにしてもあまり例をみないことだ。
 当然以前は昼休みに生徒が集まり、いくつかのグループで昼食を食べる、という光景が見られていたが……それも去年からぷっつりと見られなくなってしまった。
 その理由は、ただ1つのことに限る……



「あーちゃん、一緒に食べないの?」


 津波の声に、私はバッグを肩にかけて振り返る。

「はい、今日は他のクラスの子と食べてきますね。ごめんです」

 私が顔の前で両手の平を合わせると、彼女らはありがたいことにあっさり了承してくれた。




 今は12時半。ちょうど昼休みの始まる時間だ。

 入学式から1週間が過ぎ、クラス内のグループもだいぶ固定されてきた。私は恵玲と津波、美久、そして数日前教科書を拾ってくれたポニーテールの女の子、幸崎こうさき静音しずねの4人と一緒に行動している。そしていつもならこの4人と共にお弁当を広げ、昼休みを過ごすわけだが……

 今日は諸事情で別行動をとることとなった。

 それは他のクラスの子と食べる……からではない。皆には本当に申し訳ないが、それはあくまで口実だ。
 私は今からある噂を頼りに、屋上へと向かうところなのだ。




「――つきました」

 重々しい金属の扉に片手を当て、ふぅと息をつく。手からひんやりとした冷気が伝わってくる。さっきまで耳に響いていた昼休み独特の喧騒も、この空間では一切存在を消している。不気味な、静寂だった。

 私は目を閉じて深呼吸をし、扉を開けようと手をかけ――


 力を入れる前に、手を離した。


 激しく鼓動を繰り返す胸に手を当て、震えるようなため息をつく。

 ――……さっきまで全然平気でしたのに……


 それから数十秒。


 私は睨むように扉を見つめ、今度こそ重い扉を、開いた。


 緊張でわずかにうるんだ瞳に、予想通り、紫苑風也の姿が飛び込んできた――