コメディ・ライト小説(新)

Enjoy Club 第6話『衝撃の刻(とき)』(7) ( No.520 )
日時: 2010/10/22 17:57
名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: N9MWUzkA)


 ウィルの声に風也はかったるそうに振り返り、はっきりと眉間にしわを寄せる。
 彼が答えてくれるという自信もないまま、ウィルは純粋に疑問に思っていたことを尋ねてみた。

「なんでぼくに気付いたの?」

 予想していたものと違う単純な質問に、風也は片眉を上げてウィルを見る。そしてにやりと口端を上げて言った。

「お前自分の銀髪が目立つってもうちょい自覚しろよ。それに今日は、他の喧嘩っ早い奴らが侵入してこねぇかオレが監視する日だったからな。……まぁ他の奴が監視役だったとしても、どっちにしろオレに連絡が来るから結果は一緒だろうけど」

 もしかしてこれは色々と喋ってしまったぼくを憐れんでちゃんと答えてくれたのだろうか、と複雑な気分に駆られながらも、ウィルはしっかりと彼の台詞を記憶しておく。

 そして風也はそれ以上は話さずに、今度こそ堂々とした足取りでこの場を立ち去っていった。

 その後ろ姿を見送りながら、ウィルは深々とため息をつく。
 来る時点で、もしかしたら自分はあるじに信用されていないのではないかとわずかではあるが落ち込んでいたというのに、さらに深負いを負った気分だ。しかし不幸中の幸いというべきか、場所を明かしていないだけまだマシだろう。

 どっと疲れて、その場で目を閉じるウィル。

 この先紫苑風也が関係している任務は皆別の人に回してもらおうと、この瞬間心に誓っていた。

 そして数秒後、彼の姿は一瞬にしてその場から消え去っていた。





 ――2人の会話を、影でこっそり盗み聞きしている少女がいた。

 肩のラインで切りそろえられた、つややかな黒髪。身につけるものは黒系統で統一され、ミニスカートには可愛らしくフリルが施されている。
 後ろで腕を組み壁を背にした状態で、彼女は口元に好意的な笑みを浮かべていた。

「能力、かぁ……」

 愛おしそうに、そう呟く。

 やがて2人がその場からいなくなると、少女も何事も無かったかのような様子で、ヒールの音を立てながら立ち去っていった。