コメディ・ライト小説(新)

Enjoy Club 第3話『我ら、麗牙光陰――』(7) ( No.89 )
日時: 2010/08/31 23:38
名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: 7hab4OUo)

 もうすぐ時間だと認識した瞬間、突然周りの空気が変わったような気がした。背筋が寒くなるほどの沈黙が部屋を包み、なぜかそれだけで足元がおぼつかなくなってくる。自分の体が宙に浮いているように頼りない。

 この突然訪れた緊張感に耐えられなくて、ぎこちない動作で左に顔を向けると、彼は「大丈夫だ」と言うように目で頷いてくれた。自然と口元がほころぶ。


「――予告時間まで残り10秒」


 今まで一言も口をきいていなかった、厳つい顔の体格の良い警備員が、腕時計を見てそう言った。彼の低く重い声が、余計に私の緊張をあおる。

 今度は無意識に隣の彼に視線をやると、何かを察したのか、彼は私の左手をそっと握ってくれた。


「――5」


 彼の手を、握り返す。


「4」


 恵玲は再び、睨むような目を中央のケースに向けて……


「3」


 警備員3人が、お互い顔を見合わせ頷く。


「2」


 私は唇を固く引き結び、両隣の2人を確認し、


「1」


 最後に中央へと目をやり――





「零」




「――!?」

 突然、部屋の電気が消えた。なぜかそこだけライトを当てたかのように、闇の中に浮かび上がるガラスケース。



 そして間髪を入れず、



 部屋に、銃声が響き渡った――