コメディ・ライト小説(新)

Enjoy Club 2章 第1話『愛しき日常』(6) ( No.69 )
日時: 2011/08/08 20:52
名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: AEu.ecsA)
参照: 2ページです^^



 ――姉貴にあんなかっこいい彼氏がいると知った時は、本気で驚いた



 友賀葵の通う中学は公立で、家から歩ける距離に校舎が建っている。つい数年前、別の2つの公立中学と合併したが、もともと葵が通う予定だった中学は運よく生き残った。家の近くの中学が廃校になってこの中学に通うことになった生徒の中には、朝から長い道のりを経て通学してくる子達もいる。合併後に生き残った今の中学は校舎にかなり年季が入っていて、クーラーも取り付けられていない、つまりは典型的な公立中学だった。
 葵はそういう面で、私立の学校にあこがれてはいる。ピカピカの白い校舎に、広くて解放感のある廊下、クーラーのおかげで夏でも涼しい教室。高校を選ぶときは、姉の亜弓が通っているような公立高校ではなく、先の条件がそろったような私立高校に絶対行ってやると自分自身に誓っている。もちろん彼のこういった公立高校の見方には、少なからず偏見も含まれていた。

 とはいえ、葵はまだ中学2年生である。少なくとも真面目に受験について悩む時期ではない。実際はもっと、いつもつるんでいる友達といかにあほらしい会話で盛り上がるか、とか、いかにクラスの可愛い女の子に自分を魅せるか、といったことに頭を悩ませている。後者はよくナルシストだと言われるが、葵自身自分はかなり可愛い系の男の子だと思っているので、そうそう間違いでもない。

 そんな葵は今、いつもつるんでいる友人3人と、声を騒がせながら学校の廊下を歩いていた。次は音楽の授業なので教室を移動しているのだ。
 葵はその間も片手に教科書を持ち、もう片方の手をしきりに前髪にあてていた。こだわりの髪型がちゃんと整っているか気になるのである。しかし彼のボリュームのあるショートの茶髪はいつも通り綺麗にセットされているし、右寄りで分けた長めの前髪も左側に二カ所きちんと可愛らしいピンでとめてある。それがわかっていても髪を触ってしまうのは、完全に彼の癖としか言いようがなかった。

 歩きながら前の時間の先生の独特なしゃべり方を真似して皆で爆笑していると、友人のうちの1人がふと思い出したように言った。

「そーいや音楽って、夏休み明けて少ししたらリコーダーのテストするとか言ってなかったか?」

 げっと声に出して葵は顔をしかめる。

「やっべ、そうだ。しかも音楽のせんこーぜってぇ居残りさせるぜ、あいつ!」

 途端に4人の間を一気に野次が飛び交った。もちろんその場にいない音楽の先生への文句である。
 おそらく今日テストの詳細を言われて、来週実際に吹かされることになるのだろう。友人たちはぶっつけ本番でできるほどリコーダーは得意ではなかったし、葵の場合は彼らとはまた別のところに問題があった。