コメディ・ライト小説(新)
- Re: 初恋は夕陽色。 ( No.5 )
- 日時: 2017/10/08 19:34
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
『第1章』
第1話:初めて受けた告白。
「…かな」
「なにー?」
私は複雑な表情でそれをスカートのポケットに入れる。
「先帰っててくれない?ちょっと用事思い出して」
「えー……まぁいっかー。じゃあまた明日!」
物わかりの良い有人で良かった。私はかなに手を振り見送る。そして姿が見えなくなると、ポケットに入れたお花柄の封筒をもう一度開けた。
「皆川翔って……まじか……」
私が所属するのは2-2。そして彼、皆川翔も2組だ。
これって尚更気まずいパターンでは。
「とりあえず行くかな……」
○*
校舎裏は夕陽のオレンジ色でいっぱいだった。こんなところでこんな綺麗な景色が見られるなんて知らなかった。
そしてあの手紙の通り、皆川が待っていた。夕陽で彼が居ることぐらいしか分からないが、何となく表情は真剣だろうと直感で思った。
「てか何でこんなとこに呼び出したわけ?」
彼にゆっくり歩み寄ってそう言い放つ。私は割とクラスの中でも真ん中に経っているような存在で、色々な人と話すが――彼とはあまり話した覚えがない。共通点を上げるとすればバスケ部、ということぐらいだ。それで少しは顔を合わせたが――
「好きですっ!!」
色々な考え事を全部吹き飛ばすような言葉を彼は放った。
「……は?」
彼は真剣に言ってるつもりだろうが思わず私は間抜けな声を出す。もともと……私は性格もあまり女の子、といえる感じではない。どちらかというと男勝りだし、皆川は確かに「好きです」と言ったし……。私の思考はショート寸前だった。
「その……なんかたまに見せる笑顔に……一目惚れしましたっ!付き合ってください!」
もうそこまで言うと、彼の顔は真っ赤だった。
……なにこいつ、可愛い。皆川は私より背の小さい男子だ。
だから尚更可愛く見えてしまう。
「……なんか恥ずかしいから顔上げろ!」
「は、はい」
私が一喝すると、彼は即座に顔を上げる。真剣な表情だがまだ顔は赤い。つられてなのか、私も顔が熱くなってしまう。
そういえば、生まれて初めて受けた告白だ。私に好意を寄せる人なんて居るんだ。変わり者なんだなぁと思わず笑みがこぼれる。
こんな性格も声も男っぽくて、目つきも鋭い私に。
「――…いいよ」
私は皆川と目線を合わせて、ぽつりとそう呟いた――。
- Re: 初恋は夕陽色。 ( No.6 )
- 日時: 2017/10/08 23:37
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
第2話:話題のないふたり。
――それから、半時間後。今日は偶然部活がなかった私と皆川は一緒に帰ることになった。
私が「いいよ」と言ったということは……もう私たちは付き合っているという認識にあるわけだ。改めてそれを思うと、何だか恥ずかしい。
「「………」」
無言。とにかく無言。居心地すら悪く感じられる。
とりあえず話題を出そうと思うが、あまり話したことがないためどういう話題が好きなのか……好きなものの共通点とかが分からない。
「吉沢さんって……好きなものとかある?」
突然話題を振られる。話題がなかった分ラッキーなのだが、今となっては大げさに驚いてしまった。
「え!?……んー……好きなものではないけど、趣味はバイオリンを弾くことかな」
「バイオリン弾けるの!?すげぇ……」
……それで会話が途切れる。付き合いたてってこんなものなのかな。あまり話さない男子だったら尚更。
「……俺は音楽センスなくて……」
「翔ー!!」
皆川が呟いた言葉をかき消すくらいの大声が遠くから聞こえた。
「てめぇ何用事があるーとか言って女と帰ってるんだよ、あぁ?」
「啓太……まぁ一方的に断ったのは悪いって思ってるよ…」
「ってかお前って吉沢?そんなに仲良かったっけお前ら」
曉啓太。一言で言うと毒舌男子。別に苦手ではないが、若干つるみにくいところもある。
「俺たち付き合ってんの!」
すると突然皆川が曉に向かって言い放つ。
「はぁぁ!?マジで…お前が?」
「な、何だよ悪いの…?信じられないんだったら吉沢さんに聞いてみなよ」
「吉沢マジで?」
「そんなに俺のこと信じられないの!?」
この2人はよい友達だ。掛け合いも面白いし、見ていて楽しい。去年は2人とも違うクラスだったが、何回か廊下で見たこと、そして会話を聞いたことがある。
「いや……翔が吉沢を好きなのは知ってたけど。吉沢は翔のこと……」
話してないのに何で知ってるの、と呟く皆川を無視して曉は私に言う。
……別に好きとかじゃない。好意を寄せられるのが珍しくて、何となく了承しただけだった。
「まぁ悪く思ってないのは事実なんだし。別に良いかなって思って」
「好きじゃないこと認めたな今」
「それはこれから次第だよ」
皆川の方をチラリと流し見る。彼は顔を手で覆いながらも、耳まで真っ赤になっていて少し面白かった。