コメディ・ライト小説(新)
- Re: 「死神」少女 【コメント募集中٩( ᐛ )( ᐖ )۶】 ( No.35 )
- 日時: 2018/12/16 14:07
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://From iPad@
結城side
「先生、ズボン」
休憩時間中に朝香と望月が俺の元にやってきた。
何を言われるのかと心構えしていた自分にかけられた言葉はまさかの「ズボン」──。
何事かと慌てて目をやるとなんと裾が靴下の中に。
「今朝は、時間がなくて慌ててたんです」をこれ一つが物語っている。
「……ありがとう」
「先生気をつけないとですよ」
ニヤニヤしながら言う望月の背中を朝香が軽く小突いて、俺の前から去っていった。
*
もう恥ずかしい。思い出すだけで恥ずかしい。
言われるまでにいくつも授業があったはずで行く先行く先で何か言われて笑われていたのか。
しっかりしろ、なんて俺が言えたもんじゃない。
周囲には誰もいない、こんな夜道でも裾が気になってズボンを少しひょいと上げて確認してしまう。
「あ、ちょうどいいところに。 巴ちゃん、もう大丈夫よ」
大家さんの元へ訪れると椅子の上に立ってしきりに腕を伸ばす朝香がいた。
「これ、電球の取り替えをしたいんですけど、届きません」
なんで俺に向かって少し八つ当たりを──?
その言葉を飲み込んで、電球を受け取る。
「はい、できましたよ」
登った椅子を端に寄せながら大家さんに声をかける。
「ありがとう。それじゃあ夕食を食べましょう」
「……え」
てっきり食べ終わっているかと思っていた。そんな俺の気持ちを読み取ったのか、大家さんは
「私も食べてしまおうかと思ったんだけど、巴ちゃんがあと少しだろうし待ってよう、って。それで待ち時間の間にと思って、電球の取り替えを頼んでたのよ」
「朝香……」
「別に大家さんのご飯じゃないと、先生の食生活が大変なことになりそうだなと。私なりの考慮です。そう大家さんに伝えたら、笑って賛同もしてくれました」
早く食べましょう、と朝香が俺を急かした。
「二人とも若いわね」
懐かしいものを見るような目で俺と朝香を見る大家さんに、思わず
「生徒と教師ですよ」
と返したら、
「あら嫌だ。そんなの分かってるわよ。一体私が何を考えていると思ったの?」
と、上をいく返しをされ、焦った。
「先生情けないですよー」
何気ない朝香の一言一言が、今日はやけにグサグサと刺さる。
けれども、やっぱり一人よりもこうやって何人かで、食卓を囲み言葉を交わしつつ楽しむ食事というものが俺は大好きなのだ。
今日一日もいい日であったなぁと、この夕食の時間に感じるのだ。