コメディ・ライト小説(新)
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.106 )
- 日時: 2020/04/16 12:52
- 名前: 美奈 (ID: uJGVqhgC)
第56話
・・・・・・・・・
朝のHRが終わって、各自の持ち場に移動することになった。まずは控え室の理科室で着替えて、それから体育館に行かなくちゃ。
教室では、いつも以上に何か視線を感じた。私のポニーテールが珍しいからかな?
それとも、やっぱり1年で唯一のレギュラー出場が気に入らないから…?
…ダメだダメだ、すぐネガティブになっちゃう。別に誰からもやっかみとか言われてないし、むしろ応援してくれてるのに。さっき女バスの友達がスポドリ差し入れしてくれたし。人の好意を素直に受け取れるようになりたい。
京汰くんみたいに?...なんちゃって。
彼のことを思い出したら、少し緊張もほぐれた。
「文化祭を超自由にまわれる!それこそが帰宅部の特権!やっほーい!」
とか朝から叫んでる彼は、帰宅部だけどクラスの中心的存在。部活っていう権力の絡む帰属を持ってないのにだよ?純粋にすごい。いつも「バカ」「世紀末の大バカ」「地球が生んだ奇跡のバカ」とか男女関係なく言われてるけど、その分みんなに好かれてるし、顔立ちも割と整ってるんだよね、おバカキャラのせいでそこらへんは曇っちゃってるんだけど。モテそうなのに多分損してる。
彼が試合を見に来てくれることをちょっぴり楽しみにして、体育館へと向かう。
…自分浮き足立ってない?一番見て欲しいのは大和先輩じゃないの?
エースでイケメンで頭も良くてみんなに優しいけど、怒る時はきちんと怒れる、憧れの大和先輩。バスケ部以外からも、3年生の女の先輩からも大人気な大和先輩。
でも、膝の痛みに気付いてくれたのは京汰くんだけだ。痛くても試合に出ることの重要性を分かって、今日まで私との秘密を守ってくれたのは京汰くん。
あの助けてくれた日から、無意識に藤井くんじゃなくて京汰くんって呼んでしまう。
あれ、私が本当に一番見て欲しいのって、誰なんだろう…?
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.107 )
- 日時: 2020/04/18 15:14
- 名前: 美奈 (ID: uJGVqhgC)
第57話
・・・・・・・・・
HRが終わってみんなが移動する時、城田が俺の肩を叩いた。
「テニス部の試合見に来いよ、俺こう見えて数少ない1年のレギュラーだかんな!華音様のと時間被るけど優先しろよ」
「は、無理じゃんそんなん」
「お前なぁ、マブダチの試合くらい見に来いよ!華音ちゃんの試合見れないマブダチの気持ちになれよぉぉぉ」
「可哀想なマブダチのために、俺が代わりに見とくわ」
「…許さん」
まあ、最初だけ見に行ってやるよ。仕方ない。城田は確かに、こんな俺とすごく仲良くしてくれるマブダチだ。
城田は俺を軽く睨んだ後、いつも通りニヤッと笑って教室を出て行った。俺が何だかんだで行くこと分かってるあたりが絶妙にムカつくけどな。
窓から校庭を眺めていた悠馬が、俺の横にぴったりくっついてくる。彼女か。
<京汰くんって友達思いだよね~>
(え、珍しい普通に褒めてくるじゃん)
すると、悠馬は途端にニヤリとした。腕まで絡めてくる。彼女か。やだ何か嫌な予感するじゃん。
<焼きそばと唐揚げとラーメンとタピオカとスモア買ってね♡>
(待て多すぎん?!)
<文化祭ご飯売ってるっていうから、朝ごはん抜いたの!お腹空いてるの!>
思い返せば、確かにあいつ一人分の目玉焼きしか作ってなかったな今朝。
てか、健康診断と遅刻以外で朝飯抜く奴初めて見たんだけど…。
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.108 )
- 日時: 2020/04/20 14:04
- 名前: 美奈 (ID: uJGVqhgC)
第58話
悠馬がうるさい。とにかくうるさい。
<きゃー何これ超可愛い!このタピオカの容器ハートいっぱいじゃんんんやばぁ>
(...お前、俺のクラスの模擬店俺の代わりに参加した方がいいんじゃないか)
<あーやっぱり?京汰より僕の方がきっとサマになるよなって思ってた!>
失礼すぎる。
焼きそばからスモアまで全て俺が奢ってやったのに(まあ仕方ないんだけど)、これは失礼すぎる。
あ、一応言っとくと、食べるときは空き教室で食べた。ほら、普通の人から見るとさ、悠馬が食うと食い物が浮くじゃん?そしてそれを見られたら俺の存在も浮くじゃん?
...今俺上手いこと言ったかもな。
そうこうして俺らは朝飯(俺食ったんだけど)?を済ませ、城田のいる校庭に向かう。
コートに着くと、ちょうど城田の番だった。相手は2年生らしい。マブダチだから応援してやるよ。
城田の試合は、第1セットの数ゲームだけ見た。
あいつ意外と強いんだな。サービスエースめっちゃ決めてる。相手年上なのに、たじろいでるのが目に見えて分かる。
余裕なのか、エース決めた直後に俺を見つけてニヤついてきた。だからそのニヤつきやめろっての。まぁ分かるけども。
俺は手を軽くあげて応える。
城田は、華音様に嫌われるだけのおねだりバカだと思ってたわ。この俺にバカと思われるくらいのバカだかんな。筋金入りだ。
ただ、テニスだけは強い。それは認めてやる。テニスだけはな。...念のため、もう一度言っとこう。テニスだけだ。
<あの子思ったより強いんだね、見直したわ>
俺と全く同じ感想抱いてる奴がすぐ隣にいたことに気づく。
多分あいつストレート勝ちするから、後は見なくていいや。さっさと華音様のとこ行こ。
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.109 )
- 日時: 2020/04/22 14:33
- 名前: 美奈 (ID: Bf..vpS5)
第59話
やっと体育館にたどり着いた。
俺の学校割と広いんだよね、入学したての頃迷って授業遅刻したことあるもん。
広々とした体育館に入り、観客席でうごめく人々をかき分ける。どこら辺だと華音様がよく見えるかな?
<ねぇ見て、何か女子の固まりいるんだけど!すごくない?>
悠馬が指差した方を見ると、
「キャーカッコいいいい眩しいやばーーーい!!!」
と叫ぶ女子たち。その視線の先には、コートに立つイケメンがいる。
「皆川せんぱーい!頑張ってくださーい!」
「いや俺明日だから!今日ただの練習だから!」
皆川先輩って言うのか。顎がシュッてして手足がスラッてしてる。でも筋肉もある。胸板ありそう...何より顔面が尊い。もはや前髪に色気感じるんだけど。ジャニーズにきっといる。少なくとも悠馬の数倍、そして俺の数十倍はイケメン。学年のほとんどの女子が一度は好きになる、的な人だよ絶対。
これで彼の魅力は十分伝わるんじゃないだろうか。
<人間離れしたスタイルと顔面...>
人外のモノがそう言うくらいだ、恐らく俺の感想も間違ってないだろう。俺は静かに頷く。
その皆川先輩とやらは、女バスの試合のセッティングをして、声かけをしながらウォーミングアップに付き合っていた。
華音様にも声かけしてる...距離近くない?!
<...うた、京汰っ>
隣の声にハッとして、声の方を向く。
<嫉妬で顔がすんごい歪んでるよ、ついでに言うと口もポカーンて開いてるよ>
慌てて口を閉じるけど、お前一言二言余計なんだっつーの!
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.110 )
- 日時: 2020/04/24 14:39
- 名前: 美奈 (ID: Bf..vpS5)
第60話
ピー!とホイッスルが鳴って、試合が始まった。声援はさらに大きくなって、体育館ごと揺れている感覚になる。
先程の皆川先輩は、スコアボード付近でバスケ部の顧問や私服の女性達と何やら話している。私服の人はOGかな?
そう言えば、男バスの奴が「この試合の成果を次の試合メンバー選考の参考にするらしい」とか言ってたな...。
え、てか女バスの枠も男子に決める権限あるのか?!
色々考えながら見ていると、
「あっ!!!」
俺の学校チームのメンバーがスリーポイントシュートを放った。いや遠くね?さすがに無理なんじゃね?
...ほらぁ弾いたぁ。
と思ったら、直後にボールがシュッと入る音がした。
すぐさま、得点を示すホイッスルと歓声が鳴り響く。
<すごい!華音様がリバウンド取ったよ!!!>
この目で見てた。マジで綺麗な、吸い込まれるようなシュートだった。やだもうハイタッチまで美しい。
「ナイッシュー!!!」
気づいたら俺立ち上がって叫んでた。華音様気付いてないけどな。