コメディ・ライト小説(新)
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.116 )
- 日時: 2020/05/06 13:57
- 名前: 美奈 (ID: Bf..vpS5)
第66話
模擬店に生まれ変わった自分の教室に着くと、既に衣装に着替えた女子が入り口に立っていた。華音様の仲良しメンツだ。
入り口から風船とかハートとかラメとかの装飾がすんごい...たしかに映えます。ある女子の提案で近くにフォトブースを設けたから、写真撮ってる人が多い。概ね好評といったところか。
「あ、藤井じゃーん」
「どーせ華音目当てでしょあんた」
...違う、とすぐに言えないあたり俺って最低なんだろうか。
指名できるなら指名したいですよ。いくらでも貢ぎますから。
すぐ答えられずに目を逸らすと、藤井くん!と声がした。
華音様じゃん!!!天使じゃん!!!
「うわ、私たちの前と全然顔つき違うじゃん」
「キモすぎじゃん」
「そんなん言ったら可哀想じゃん~ささ、中入って入って!さっきは来てくれてありがとね!」
「ほんと華音はお人好しなんだから...」
この性格の美しさが男を虜にするんだってば。なぜ仲良しメンツは近くにいるのに分かんねぇんだか...。
気配を感じないので悠馬を探すと、キョロキョロしながらクッキーを手に持っている。
おいおい待てよ泥棒じゃん!!!窃盗罪!
でも叫べないというジレンマ。見逃すしかないの分かっててやるとか、確信犯め。
仕方なく見逃してやり、華音様を拝む。
ん?華音様も悠馬のいる方見てる?
と思ったけど、多分きっと絶対違う。悠馬の頭の上にあった飾りが取れてしまっていた。
華音様はセロテープを持ってそこへ向かう。
あぁ、揺れるポニーテールの美しいことよ。
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.117 )
- 日時: 2020/05/08 13:42
- 名前: 美奈 (ID: Bf..vpS5)
第67話
・・・・・・・・・
「なぁなぁ、1年の模擬店行ってみようぜ」
俺が声をかければ、大体の奴はついてくる。
今もそう。俺の呼び掛けに、5人くらいの奴らが賛同した。
俺の向かう先はただ1つ。
''キッチュでポップな映え確実のカフェです♡''
とパンフレットに書かれていた所だ。知り合いなどいなければ、絶対行かない所。
さっき本人からシフトを聞いた。まだいるはずだ。
「いらっしゃいませ~6名ですか、ちょっと待ってくださいね~」
...いや待て。俺が会いたいのお前じゃないんだが。
軽く落胆していると、俺の連れの一人が言う。
「おい城田、お前じゃ接客つとまんねーよ裏方に回れよぉぉ」
テニス部か。イカツい訳じゃないけど、たしかにこの空間に合う男子は少ないと思う。
中に通してもらうと、さらにキュートな空間が広がっていた。女子も多くいる。やはりこの空間は落ち着かない。
キュート過ぎる、という意味でも、俺が入った瞬間に女達が軽く歓声をあげる、という意味でも。
「いらっしゃいませ...あ!皆川先輩!!来てくださったんですね!」
やっとお目当てを見つけた。
「華音ちゃんまだいるかな、って思って来ちゃったよ」
「嬉しいです!しかもこんなにたくさん!」
俺と一緒に来た奴らは、華音ちゃんや他の可愛い女の子に釘付け。まぁそうなるわな。
ちなみに俺の目には華音ちゃんしか映っていない。
俺のことを憧れと言ってくれて、けど距離感も理解してる、可愛い後輩。そしてちょっと掴み所のない雰囲気も、また魅力的である。
横から視線を感じたので振り向くと、男子が俺のことを軽く睨んでいた。
「藤井くん、目付き悪いよ!先輩に失礼じゃん~...先輩ごめんなさいね」
カラカラと笑いながら、華音ちゃんはそいつをたしなめる。俺も笑って受け流す。
藤井くんと呼ばれた奴は、黙って頷き、そっぽを向いた。
全く...彼女を狙うにはライバルが多すぎる。
まぁ、俺ならそいつら相手でもきっと勝てるけどな。
彼女は多分、俺に惚れてる...と思う。俺に惚れた女達は、大体似た目付きをするって知っているから。
「ご注文は何になさいますか?」
「じゃあ、紅茶とチョコクッキーで」
華音ちゃんの目をしっかり見て言う。
分かりました!と頷いてくるっと後ろを向く彼女。
これが本気で好きってことなのかどうかは、まだ俺には分からない。
でも、どうしようもなく惹き付けられる。
本当に可愛い。可愛くて仕方がない。
食べてしまいたいくらいに。
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.118 )
- 日時: 2020/05/10 12:35
- 名前: 美奈 (ID: Bf..vpS5)
第68話
・・・・・・・・・
華音様と同じシフトで、傍目から見ても舞い上がっていた城田を適当にいじっていたら、一日目はあっという間に終わった。
結局、華音様とちゃんと話せる時間などなかった。でもまぁ、膝の調子が良くなって、試合で活躍する姿を見れて良かった。あのテニスバカよりも、俺は得をしたと思っている。
帰宅するなり、悠馬は隠形を解いて普通に俺に話しかけてくる。
『もう今日超楽しかった~文化祭、最高ぉぉ!でも疲れたっ』
「そりゃあ、すんげぇはしゃいですんげぇ食ったら式神でも多分疲れるだろ」
『うんっ、だから今日の家事は全て京汰くん担当で!』
「いや待て俺明日カフェのシフトだから無理忙しい」
『はぁ?!たった二時間じゃん!日々の家事なんか何時間かかると思ってるんだよバカぁぁ』
他の子は大抵一時間のシフトで済むんだけど、まぁほら俺帰宅部だから。な。
それに言われてみれば確かに、ほぼ年中無休の家事を一手に担っているのは悠馬だ。
...仕方ない、今日は俺がやるよ、家事。
短く溜め息をついて、重い腰をあげる。
本当は俺の''お世話係''のはずなんだけどな、あいつ。
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.119 )
- 日時: 2020/05/12 22:58
- 名前: 美奈 (ID: Bf..vpS5)
第69話
軽めの夕飯を食べて皿を洗っていると、ソファに沈んでいた悠馬が(質量ないのに沈んでるの不思議)、急に跳ね起きた。
『ねぇねぇねぇねぇっっ!!!』
「何だようっせーな」
『そーいや明日どーすんのよ』
「明日?普通にカフェのシフト出て帰りますけど」
『いやいや何いってんのよ、京汰は最後のイベントまでいないとダメでしょう??』
最後のイベント...?
学校中に貼られていたけど、あえてスルーしていたチラシを思い出して、思わず皿を落としそうになる。
「あっぶね...ちょ、おま、まさか」
『あれは京汰くんのためのイベントでしょうが!それに僕も見てみたいもん、告白タイム!!!』
''今年もやります告白タイム~ホールの中心で愛を叫ぶ(受け取ってもらえるかは相手次第)~''
俺の学校には演劇とかやれるちょっとしたホールがある。そこで毎年、文化祭二日目に行われる大トリイベント。
それが、告白タイムである。
誰でも参加自由で、飛び入り参加もオッケー。ここでは様々なドラマが生まれたんだ、と卒業生によって長く語り継がれる名イベントなのである。
今年はやはり、華音様に交際を申し込む輩が圧倒的に多そうだと風の噂で聞いていた。
「い、いや俺は参加しないぞ」
『なんでよ~せっかくのチャンスじゃん!』
「告白とかやり方分かんないし...そもそも華音様も人数増えたら迷惑かなぁと...」
『そゆときだけなんで遠慮すんだっ、普段は図々しいくせにっ!華音様取られてもいいのかっ、あの皆川とやらにっ』
「皆川先輩くらいのイケメンには勝てねぇよ...それに皆川先輩以外にもいるやろライバルたくさん...城田とかもいんだろ...」
『テニスバカは相手にされないって!弱気になってどーするのっ』
悠馬って、感情に任せて結構な量の失言するよな。
たしかに華音様のことは好き。いつも俺の頭の中を占領して、家での様子とかも想像しちゃって、私服も想像しちゃって、週3で夢に出てくるくらいには好き。声を聞く度に、全身にピリッと、でもちょっと甘い刺激が行き渡るくらいには好き。
だから悠馬の言ってることも頭では分かってる。このチャンス逃したら、俺はもうまともに華音様に近づけないくらいにビビリなんだ、ってことは自分が一番よく知ってるんだってば。
でも明日急に告白はハードル高いって、さすがに...!
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.120 )
- 日時: 2020/05/14 19:40
- 名前: 美奈 (ID: Bf..vpS5)
第70話
文化祭2日目。
悠馬に告白タイムの話題を出されてから、今まで以上に華音様のことが頭から離れなくなってしまった。
彼女が夢に出てくるのは至上の慶びのはずなのに、昨晩はうなされる結果になった。ここまで寝起きが悪いのは久々だ。
<クマひどくてジャケット似合ってないよ>
カフェのシフトに出ている俺の横で、またも失礼極まりない発言をする悠馬。
てめぇのせいだっての!
まぁ、華音様がこの場にいないのは、今日はある意味救いだ。
展示で手持ち無沙汰の他クラスの人間や、歩き疲れた父母の方々が、絶え間なく俺のクラスにやってくる。お陰で女子が丹精込めて作ったクッキーも、もうすぐ売り切れそうだ。
ただ、訪れる女子の数はなぜか少なく感じる。
<ダンス部の発表も、女子人気爆発してる皆川先輩の試合も今日だもんね~>
(あーそゆことか)
「...おい。おい藤井お前生きてんのか」
同じシフトのクラスメイトに肩を叩かれた。
「あーごめん何」
「紅茶入れろってば!魂抜けたお前マジで使えねぇぞ」
「すみません...」
ヤバいヤバい。せめてシフトの間はしっかりせねば。
自分の頬をつねってから、こぼさないように紅茶を入れる。
チラッと悠馬がいた方を見ると、もういない。何見に行ったんだろ?皆川先輩のバスケ?
いや、女子の生脚好きだからダンス部だろうか...。