コメディ・ライト小説(新)
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった【新】 ( No.12 )
- 日時: 2014/04/03 15:14
- 名前: 美奈 ◆5RRtZawAKg (ID: apTS.Dj.)
第3話
勝が出て行くと、僕は一人になった。
京汰は昨日の夕方に出かけたらしく、まだ帰ってきていない。
京汰がいないのなら、僕の仕事も始まらない。ってことは、フリーダム!と叫びたい所ではあったのだけれど…。
だからといって、何をしたらいいのだろう?
一人で自由を得たって、結局は何もできないのである。
僕は棒立ちになっていた。
ちょっとだけ、"無"の時間を過ごしたような気がしたけれど、バサっと何かが落ちた音で、そんな感覚はどこかへと消えてしまった。
何が落ちたんだ?しかも、たった一人しかいないこの家で。…いや待てよ、もしかしたらこれは怪奇現象か何かで、人外のものが実は潜んでいて…。
そこまで考えて、頭を振った。何考えてんだ。
…僕だって、立派な人外のものじゃないか。
埒もなく色々なことを考えながら、僕は音のした方へと向かった。キッチンだ。
そろそろと動いてキッチンへ向かうと、台の上にコンビニの袋があり、その中のペットボトルが倒れていた。
落ちていたのは、3枚切のうち、2枚が残った食パンだった。
不安定な状態で袋が置かれたので、中のペットボトルが少しずつ動きだし、そのせいで食パンが落ちたのだろう。
僕はしゃがみ込んで食パンを拾い、それを見つめた。
『消費期限、切れてる…』
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった【新】 ( No.13 )
- 日時: 2014/04/03 23:23
- 名前: 美奈 ◆5RRtZawAKg (ID: apTS.Dj.)
第4話
僕はかなり長い間、期限切れの食パンを手に立っていた。
空腹を覚えた訳でもない。でも僕は今、目の前の期限切れの食パンに興味を抱いてしまった。
式神が人間の食べ物を口にすると、どうなるのだろう。期限切れだと、式神もお腹を下すだろうか。
…やってみなくちゃ、分からない!
知的好奇心が溢れ出した僕は、無意識のうちに食パンを一枚、抜き出していた。
どうやって食べようか。焼こうかな。
…ちょっと悩んだが、結局トースターを使うのはやめておいた。
下手にいじって壊したらいけないと思ったのだ。
人のパンを勝手に頂く僕にも、そのくらいの思いやりはある。
まあいいか。そのままで食べてみようじゃないか。
『いただきまーす』
僕は構わずに、食パンをちぎって口に放り込んだ。
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった【新】 ( No.14 )
- 日時: 2014/04/05 15:07
- 名前: 美奈 ◆5RRtZawAKg (ID: apTS.Dj.)
第5話
・・・・・・・・・・・・・・・
俺は家の戸を開けた。昨日の夕方から出かけて、友達の家に泊まり、今日、少し遊んで帰ってきたのだ。
今朝方、父は出張にでかけたはず。一緒にいると、"おい京汰、勉強したか?"とか"すぐ寝るんだぞ"とか、何かと口うるさい父だ。現在母がいないこの家で、俺のことを考えてくれてるのは分かってる。分かってるけど…
いない方が、静かでいいと思ってしまうのだ。思春期ってやつは、色々と面倒だ。自分の思い通りにならなくて、苛々する。
また、俺だけの生活が始まる。…今度はかなり長期間だろう。
「ただいま」
誰もいないことは知っていた。何となく口に出してしまった。
…が。
『ん?あ、おかえり。ごめんね、勝手にパン食べちゃった。あ、や、でも、期限切れのやつなんだけどね…あ、そうそう、お父さんは出張に行ったよ、ちゃんと』
応答があった!どういうことだっ?!
他人の家に入っちゃったかな、と本気で思った。…いやいや、ここは慣れ親しんだ俺の家。何があっても俺の家!
怖くなって逃げ出したい衝動に駆られたが、必死で踏みとどまった。
俺の家なんだ!逃げる理由なんてないじゃないか!