コメディ・ライト小説(新)

Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.133 )
日時: 2020/06/02 00:36
名前: 美奈 (ID: 50PasCpc)

第77話
『早く彼女から離れろ』

急に聞き慣れたものとは程遠い、ものすごく怖い声が隣から聞こえて、俺はものすごく驚いた。
悠馬が...隠形を解いている...?!しかもすごい形相だ。

悠馬の目線の先にいる皆川先輩は、こちらを軽く睨んだだけで、華音様から離れようとしない。

『聞こえないのか。早く彼女から離れろって言ってんだよお前』

いつもの悠馬とは全然違う、新しい何かが憑依したような、荒々しい言葉遣い。
てか待って、なんで悠馬はわざわざ隠形を解いて皆川先輩に怒ってるの?
ただの嫉妬にしては何かスケールが違う気しかしない...。

「悠馬くん?先輩は何も悪いことしてないよ?」

『いいから華音ちゃん、離れて。僕の言うことを聞いて欲しい』

ん、ん?!
え、もっと待って、ちょっと頭整理する時間が欲しいんですけど?!
なんで、なんで華音様は悠馬のことが視えてるの?!てかなんで悠馬の名前知ってるの?!なんで悠馬もそれに驚かない?!てかその前になんで皆川先輩も悠馬が視えるわけ?!え、視えてるから睨んだんだよね?!
あまりの急展開にさすがに追い付くことができなくて、なんで、と?が同時多発してる。


どういうことなんだよ一体??!!
本気で意味が分からないんだけど!!!!!

Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.134 )
日時: 2020/06/08 09:21
名前: 美奈 (ID: J85uaMhP)

第78話
・・・・・・・・・
僕が皆川にあからさまな敵意を向けると、京汰は途端にオロオロし始めた。相変わらず分かりやすい。
あぁ、京汰には一応才能があるはずなのに...まだまだ教育不足ってことか...。

今の慌てふためく様子を見る限り、彼は今の今まで、全く気付いてなかったということだ。



華音に僕が視えることも、



皆川が''本当に''人間離れしてる、ってことも。

Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.135 )
日時: 2020/06/12 11:32
名前: 美奈 (ID: J85uaMhP)

第79話
・・・・・・・・・
2度も悠馬から警告を受けた皆川先輩だけど、全く動こうとしない。
華音様も突然のことに驚いたらしく(俺の方がもっと驚いてるけど)、動けないでいる。

俺はあまりにたくさんのことに驚きすぎて一瞬全ての機能がフリーズしてたけど、ようやく頭が解凍し始めた。
今、俺は何をしなきゃいけない?
...目の前の女の子を助けなくちゃ。悠馬によれば、皆川は危ないらしい。悠馬が敵意を向けるなんて、よっぽどだ。
そう思って華音様の方へ駆け出そうとすると、すぐに悠馬が制した。
それを見て、皆川先輩は微かに笑う。

『京汰動くな、危険すぎる』

「何でだよ、華音様助けなきゃいけないだろ?」

この問答で、皆川先輩と華音様から目を逸らしたのがいけなかったらしい。

〔可愛い女の子を喰うことのどこが悪い〕

Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.136 )
日時: 2020/06/17 16:23
名前: 美奈 (ID: VHEhwa99)

第80話
いつの間にか、俺達4人の周囲には結界が張られていた。
そしてこちらに背を向けた皆川先輩からは、怪しげな黒っぽい煙のようなものが立ち上ぼり、制服のブレザーがマントのように変化していく。
そして一瞬のうちに、皆川先輩は華音様の頭と背中を支え、彼女を自分のマントの奥に引き入れた。

「や、大和先輩っ、何をっ」

〔俺が抱き締めてるんだから安心しろよ。好きだろ?俺のこと。俺も好きだよ、だから大人しくしててね。可愛くて良い子だ...〕

「さ、さっき、喰うとか...っ、てっ...!」

〔そうだな。喰っちまいたいくらいに魅力的だ...姫よ〕

皆川先輩は再びこちらを見る。
そしてあろうことか、これ見よがしに抱き締めた華音様の額に口付けを落とした。

「...............なぁぁぁっっっ??!!」

『京汰、これでいい加減分かったでしょ』

「悠馬......皆川先輩、って、も、もしかして...いや、もしかしなくても...」

悠馬は深く頷く。

『うん、立派なあやかしだ。古くから、貴族の娘とか、絶世の美男美女と言われる若者を喰って取り込んで、自分も美しくなって、その美貌でまた新たな美男美女を虜にして喰っていくタイプ』

「うわぁぁぁ...」

そんな恐ろしい妖に出会ってしまったことと、ソレが華音様を今にも呑み込もうとしていること、そしてソレが同じ学校にいたことの恐怖に体が耐えられそうにない。
文字通り震える俺を、華音様がチラッと見る。彼女も少し、震えている。

ダメだ。俺がしっかりしなくちゃ...!

『一緒に退治しますよ、京汰くん』

隣には悠馬がいる。きっと大丈夫だ。慌てず焦らず、彼女を救おう。

「了解っ!」