コメディ・ライト小説(新)
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.148 )
- 日時: 2020/08/20 23:35
- 名前: 美奈 (ID: 69bzu.rx)
第91話
結論から言うと、相澤先生は女子数名の告白は全て「ごめんな」と断った。当たり前だ。
でも、彼女たちを気遣うような言動がサラリとできるあたりは、やっぱり大人の男性だよなぁ紳士だなぁと思う。
「好きになってくれたんだな、ありがとう。意外だったし俺嬉しいわ!でもな、確かに俺バツイチで今フリーっちゃフリーだけど、やっぱり大事な生徒だから。ご家族だっているんだし、今は気持ちを受けとるので精一杯だ。俺と年もすごい離れてるしな。今は恋が実らなくても、それはきっと君たちの意味ある経験の一つになる」
男らしさを出しながらも、教師の立場を忘れない回答。いやぁ脱帽。
そうして先生は、涙する彼女たちの頭を順番に、ぽんぽんと撫でた。
...ある意味皆川先輩より完璧な気がします。
こうして告白タイムは感動の渦に包まれて(男子は相澤先生の人気にただビビって)終わった。
いやぁ、女子生徒も頭ぽんぽんしてもらって良かったねぇ...。
感心しきっていると、めっちゃ近くで怒鳴られた。え、なに?!
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.149 )
- 日時: 2020/08/26 15:39
- 名前: 美奈 (ID: qRt8qnz/)
第92話
「ちょっと藤井何やってんの?!」「華音のことみんな探してたんだよ!あんた抜け駆けしようとしたでしょ!!」「ほら華音、よりによって告白タイムになんで消えるのよ~もう終わっちゃったよ~」
俺は慌てて言い訳にもならない言い訳を喋る。
「あ、いや、そのっ、屋上に...」
「はぁ屋上?!なんで二人でそんなとこいるわけ?!藤井、あんた勝手に告ったね?!」
華音様のお友達の圧が強すぎる。妖よりヤバい奴なんじゃないかと一瞬思う。
「告ってないし!てかそもそもそんなことしてないし!!!俺が先にいて、後から来ただけでっ」
「ほんとなの?華音。何も変なことされてないよね?!」
変なこと...。
マズい。俺抱き締めてたじゃん。でもあれは彼女の命がかかってて...!!もし抱き締められてたとか言われたらどうしよう?!
華音様が口を開く。終わった。
「なんかね、外の空気吸おうとして屋上に出たんだけど、ちょっとクラっとしちゃって。そしたらたまたま先にいた藤井くんが助けてくれたの。だから変なことどころか、恩人」
なんか半分ホントで半分ウソだけど、咄嗟に華音様は言い訳してくれた。
まぁ彼女自身、何起こったか分かってないもんな。
でも救われた...良かった...。
「何だ。あんた思ったよりいい奴じゃん。先に言えばいいのに」
「いや、だからお前の圧がっ...」
「は?圧?」
「いやすみません何でもないです」
「何もう。華音いこ~」
お友達怖えよ。先に言うことなんか許さねぇみたいな雰囲気出してたじゃん...怖くて泣きそう。
華音様は「うん」と友達に答え、去っていこうとした。
だが、その前にもう一度俺の元に駆け寄る。
「京汰くん」
「ん?」
「京汰くんの隣だと、心地よく眠れるね」
それだけ早口で言って、ニコッと笑って今度こそ去っていった。
眠ってたことになってるのマジで可愛いんだけど......!!!
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.150 )
- 日時: 2020/09/02 22:07
- 名前: 美奈 (ID: yl9aoDza)
第93話
・・・・・・・・・
すごい勢いの雨と風。
傘すら持っていない私は、その大きな力に抗うことはできなかった。
いつからか歩くのもやめて、立ちすくむ。体の芯から体温も意識も奪われていく。
そのうち、雨が体に叩きつける感覚さえも分からなくなってきて...。
そこに、優しいけど強く触れる感覚が生じた。何か分からないけれど、ともかく風が強いから掴まってみた。
最初は苦しかったけど、段々と体に温かさが戻ってくる。
しばらくして空気も温かくなった。気づけば屋内へと移動していた。
ちらりと見上げると、髪が濡れ、荒い息を吐く京汰くんがすぐ傍にいた。よく見ると精悍な顔立ち。滴る雨粒のせいで、ちょっぴり色気さえも感じる。
段々強さを増していく、電球の光...。
途端に目が覚めて、目の前に男子の制服があったのは本当にびっくりした。彼もびっくりしたのか、私から体を離す。私も思わず彼から手を離してしまう。
襲われたかと思ったけど、全然そうではなくて。なぜか心も体もほんわかしていた。
眠りから覚めた、ではなく、なぜかこの世界にやっと還って来られたような感覚があった。
よく見ると、私を抱き抱えていたのは京汰くん。目が合った。
夢の中みたいに、雨で濡れてはいない。むしろ暖かな日差しを浴びて、彼の顔は輝いていた。
なぜか膝の痛みが綺麗に消えている。
京汰くんは私の顔をもう一度確認すると、彼が見ていたであろう夢の話をする。想像力が豊かなのか、登場人物が多い。そして、私もその世界を共有しているかのように話してくるのが面白い。
確かに共有できていたら、幸せかもしれない。
夢を見ている間、何があったのだろう。京汰くんのちょっと切迫した表情を見る限り、私は何か彼を困らせることをしてしまったのだろうか。
でも思い出そうとどう頑張ってみても、できない。
ただ今心にあるのは、優しくて多分強い京汰くんへの、温かい気持ちだけだ。これは何なのだろう。
すぐに手を離すんじゃなかった。ちょっぴり後悔。
もう少しだけ、彼の隣にいたかったな。