コメディ・ライト小説(新)
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.164 )
- 日時: 2020/10/03 13:41
- 名前: 美奈 (ID: SkZASf/Y)
第101話
2週間後、父は再び海外へ飛ぶこととなった。
「ほんと忙しいな」
「今しか働けないからな」
あ、やべぇ飛行機間に合うかな、と慌てる父。
こういうとこも俺は受け継いでるのかな、と思い、笑みがこぼれてしまう。
「何ニヤニヤしてんだ京汰」
「いや?...気を付けてな」
『お気を付けて。京汰のことは僕が目を光らせておきます』
「おう!京汰、元気でな。悠馬、頼むよ!」
京汰ぁお前青春楽しめよ~!恋はいいぞぉ~!俺みたいなモテモテの華の時期を迎えられますよーに!
とか何とかほざきながら、玄関を出ていく。
『あーゆーとこ、京汰とお父さんよく似てるよね』
「いや、悠馬と父親が似てる」
『いやいや、あの自画自賛しちゃうとこが!』
「いやいやいや、あのすげぇ憎たらしいことサラッと言うとこが!」
『第一顔から君達似すぎだから!』
「お前らこそ遺伝子レベルで繋がってんだろってくらい似てるし!」
このやり取りを勝が視て、可愛い息子たちだよな、と一人でニヤニヤしたことは言うまでもない。
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.165 )
- 日時: 2020/10/07 11:07
- 名前: 美奈 (ID: w1J4g9Hd)
第102話
・・・・・・・・・
勝が発ってからしばらくして、僕はちょっとした決心を固めた。
『京汰』
「ん、どした?」
『僕ね、京汰のこと応援するよ』
「え?」
『華音様のこと、まだ好きでしょ?』
「もちろんそうだけど...?」
『実は...』
「ん?」
ちょっと迷ったけど、でもやっぱり京汰には言っておかないといけない気がした。
『僕、実は京汰に黙って、華音様と話したり、膝が痛いの京汰より先に察して荷物ちょっと軽くしてあげたりしてたんだ。ごめん』
京汰は目を見開いた。
「あぁ、だから華音様と顔見知りだったのか...てか、え、あの、諦めるはずだったんじゃ...」
『いや、顔見知りになった経緯はまた少し違うんだけれど......とにかく、諦めきれなかった。京汰と毎日登校して、あんなに可愛い女の子見てたら無理だった。でも、抜け駆けするつもりは毛頭なくてね??あの子が僕を視れると思ってなかったから、それはほんと、誤算で...』
京汰は黙ったままだ。マズい、やっぱ怒らせたかな。
「式神でも同じなんだなぁ」
『え?』
「やっぱあんな美女毎日見てたら、嫌でも恋しちゃうよねぇって」
『京汰...』
「あ、俺怒ったりしないよ?悠馬の方がイケメンだしなぁ、そもそも一番大事なのは華音様自身のお気持ちなわけで」
やっぱり主人に似ている。ものすごく寛大な心で受け止めて、赦してくれる。
「まぁでも、これからはまた華音様に悠馬は視えなくなったみたいだし?だからまぁ、悠馬もこのまま恋してていいよ~!俺様の方が有利だし?なーんてね!」
華音様が振り向けば、の話ですけどぉ~!と言って、一人でケラケラ笑ってる。
『じゃ、じゃあ京汰のことは応援するけど、僕も陰ながら好きでい続けるよ?華音様のこと!』
「いいよ?今華音様が見えるの俺だけだし!」
こゆとこはちょっとムカつくけどね。でもそれも含めて、京汰なんだよなぁ。
『京汰、好きっ』
「は?!」
『もぉ~好きっ♡』
「華音様は?」
『華音様と別の意味で好きっ♡』
ソファに座っている京汰に近づいて、彼の髪をもしゃもしゃと触る。
「ちょ、なんだお前」
『京汰はいいやつ!』
京汰の隣に僕は座って、彼を軽く抱き締めた。あ、これ友愛の証ね?
「や、やめろよもうっ」
『へへっ、たまにはいーじゃん?♡』
僕が本気で心を許せる友達。
こういう楽しい日々が、これからも続きますように。
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.166 )
- 日時: 2020/10/11 02:06
- 名前: 美奈 (ID: w1J4g9Hd)
第103話
・・・・・・・・・
文化祭で物理的にも距離が近づいてからというもの、幸運なことに俺は華音様と話す機会が増えていた。
「藤井くんおはよ~」
「お、おはよ!」
みんながいるところでは藤井くんで、二人の時には京汰くん。
その区別もちょっぴり嬉しい。
まぁ、俺は彼女を何と呼べばいいのか、分からずじまいだけど。
だって華音様!も華音ちゃん!も篠塚さん!もしっくり来ないよね?
それから嬉しいことはもう一つ。
それは、華音様とマンツーマンでLINEできるようになったこと!
文化祭の翌日、''昨日はありがと''と華音様から個人でLINEが来たのだ。舞い上がったことは言うまでもない。
それからは挨拶とか他愛もない話を、お互いのペースで続けている。
今んとこ既読、あるいは未読スルーされてないということは、全くの脈なしではない...と信じたい。
そして今日、さらに驚くべきことが。
華音様はおはよう、と俺に声をかけた直後、俺のスマホにLINEしてきた。
いや今ここにいるのになんでや。
''ちょっと屋上来て!''
送る相手間違えてない?とか思いつつも、俺はすぐに''了解です''というスタンプを押して、屋上へ向かう。
<僕は教室残ってるから安心して!>
悠馬が気を遣ってくれる。できる男だな、お前は。
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.167 )
- 日時: 2020/10/15 17:12
- 名前: 美奈 (ID: w1J4g9Hd)
第104話
屋上に着くと、華音様が小さく手を振る。
「あ、良かった来てくれた」
「どしたん?」
彼女は俺の元に駆け寄り、ちょっと小声で話す。
「あのさ、この映画興味ない?」
スマホの画面を見せられ、覗くとそこには''今世紀史上最凶かつ最恐ーあなたはついてこられるか?''という前書きがされた、ホラー映画のHPが開かれていた。
まぁ一応ホラー大丈夫だけど...。華音様これ好きなの?!
「まぁ、ホラー大丈夫だけど?」
「よかったぁ!じゃあこれ、今度の土曜日観に行かない?」
「仲良いグループの子、誘わないの?」
「それがみんなホラー嫌いでさぁ...こういうゾクゾクするのこそ、ただのラブコメよりお金払って観る価値あると思わない?」
まぁ価値観は多様ですが。意外だ。
ラブコメ好きそうってか、あなたがラブコメ出てそうなのにね。
「お、おう、そうだな...俺土曜空いてるから、いいよ」
「ほんと?!よかったぁ!」
思ったよりあっさりデート成立。
てかまぁ、俺はきっとただのホラー映画要員なのだけど。
「けどさ、他の男子とかでも良かったんじゃ?」
「え、京汰くん、やっぱ無理...?」
「いやいやいやいやそうじゃなくて!俺も楽しみだし!」
慌てて否定すると、華音様は意地悪っぽく笑った。あぁ、小悪魔。
「怖かったら、しがみつけそうだから」
隣だと何か安心するって前にも言ったじゃーん、と俺の肩を軽く叩く。
ホラー映画のしがみつき要員。
...うん、まぁそれなりに美味しいポジションではある。
「それから京汰くん」
「はい」
「私のこと、そろそろ名前で呼んでもいいんだよ?」
「へっ」
「へっ、じゃなくて!華音でいいからさ!」
「かっ、かのんっ」
「普通に呼びなって!」
朗らかに彼女は笑う。朝日に照らされる髪、瞳、手、脚...。
全てが神々しい。
そんな人の、下の名前を面と向かって呼ぶなんて。
...昇天してもいいですかね。
「名前呼ぶのくらいどうってことないでしょ!」
すると、朝礼を告げるチャイムが鳴った。
あ、帰らなきゃね!と言って、俺の手首を掴む。
俺はされるがままに屋上からの階段を下り、教室のある階に着いたところで手首が解放される。
華音様と多分一応デート...。
いやでも俺ホラー映画のしがみつき要員だもんな。これデートなの?後でデートの意味辞書で調べておこう。
今日まだ火曜日なんだけど。
土曜日まで俺の心臓持つかな。
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.168 )
- 日時: 2020/10/23 12:12
- 名前: 美奈 (ID: GudiotDM)
第105話
・・・・・・・・・
華音様が京汰を映画デートに誘った翌日のこと。
今日は女バスの朝練があった。
彼女は無事に文化祭の次の試合メンバーにも抜擢された。あの相澤先生がべた褒めしてたらしい。
ただ、その朝練で彼女は体育館に忘れ物をした。僕は気づいたけれど、教室まで届けることはしない。ただの怪奇現象になってしまうからだ。
だからその代わり、昼休みに体育館に行ってみた。昼休みなら来そうだと思った。
予想通り、忘れ物を探しに彼女は体育館にやってきた。今、ここはどの練習も行っていなくて、がらんとしている。
僕は倉庫の近くにいる。文化祭の日、二人で話した倉庫。
彼女は忘れ物を見つけ、安心した顔でそのまま体育館を出ていこうとした。
...が、何を思ったのか、こちらへとやってくる。
彼女は倉庫の中へと入っていく。...僕たちが話した場所へ。
僕が隠形したまま後ろをついていくと。
「そこにいらっしゃるのは分かっています」
<え?>
後ろを振り返るけど、誰もいない。理科室へ向かう途中のひとコマを思い出す。
「姿をお見せください。あなたと若き陰陽師は、私たちを救ってくださった」
僕はびっくりして隠形を解き、彼女の前へと移動する。
『姫...』