コメディ・ライト小説(新)
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.175 )
- 日時: 2020/11/19 16:33
- 名前: 美奈 (ID: KDFj2HVO)
第109話
・・・・・・・・・
結局、土曜日のデートはデートにならなかった。
なぜかって?
その事件は、映画館の座席についた時に起こった。すごく早めに着いたので、スクリーンには予告編すらまだ流れていない。
何を話そう、と考えていたら、華音様
の方から話しかけてきた。
「あのね、京汰くん。驚かないでね?」
「ん、どしたん?」
珍しいパンツスタイル。イヤリングが綺麗に揺れる。私服も爆発的に可愛い華音様の口から飛び出した言葉は、俺を爆発的に驚かせるものだった。
「この前ね、体育館の倉庫に行ったら、ゆーまくん、って子に出会ったの」
一瞬、時間が止まる。
椅子からずり落ちそうになった。俺今驚きでヤバい顔してそう。
「え?!あいつに?!」
「え、京汰くん、まさか知ってるの?!」
華音様もすごい驚いている。
そして直後に、俺は本当に椅子からずり落ちることとなった。
『僕のことだよねっ』
ちょちょちょちょちょ待て待て待て待て待て!
お前、『二人のことは邪魔しないから♡』って家にいたはずだろ?!
ずり落ちたせいでガタン、と音を立ててしまった椅子に慌てて座り直す。
「な、なんでおまっ...!」
『華音ちゃんが僕の名前呼んでくれたから飛んで来ちゃった!あ、僕ね、京汰の同居人なんで』
一応ここ映画館だから、僕とは小声で話そうね、とわざわざ忠告してくる。
華音様は辺りを見回しながら、ちゃんと小声で悠馬に話しかけた。
「え?!同居してるの?!」
『そうだよ~京汰のお世話係なんだよね!』
...なんでまた視えてるの??!!
そりゃまぁ隠形は解いてるけどさ!悠馬...待てよほんと。そんな大事なこと俺に話してないじゃん!俺のこと好きって言ったくせに!!!
そんなこんなで悠馬と華音の波長が妙に合うという珍事が発生し、映画も含めて3人での行動となってしまった。
そして悠馬はタダでホラー映画を観ていた。バケモンがホラー映画を観て、それなりにビビる光景はマジで面白かったけど。
でも悠馬がいたから(かどうかは知らないけど)、華音様一度もしがみついてくれなかったじゃんか...。
...二人きりのデート台無しやん。
『じゃあね、華音ちゃん!僕いつも京汰と学校にいるから、また会おう』
「うん!今日は楽しかったよ、じゃあね~」
「じゃ、じゃあな、華音」
「うん、京汰くんもありがとっ、またね!」
京汰くん''も''って...俺メインキャストのはずだぜ...。初めて''華音''ってちゃんと呼ぶの緊張したのに...。
軽く傷つきながらも、美しい彼女の後ろ姿を見送る。甘い時間を送るはずだったのになぁっ!
ったく、前途多難だなぁもう...。
悠馬のやつめ...華音様のこと絶対俺が射止めてやるからなぁぁっっ!!
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.176 )
- 日時: 2020/11/26 17:13
- 名前: 美奈 (ID: fQORg6cj)
第110話
・・・・・・・・・
まさか、華音が京汰に僕のことを話すとは。驚きすぎて、つい映画館まで飛んできてしまった。京汰の邪魔するつもりはなかったんだけどなぁ。
めちゃめちゃ想定外な形で、華音が僕を再び認識できるようになったことが京汰に分かってしまった。
隠してたわけじゃないんだよ?ただ、物事にはタイミングってのがあるんだってば。
京汰は2人きりのデートのはずが3人になり、不機嫌なのがよく分かった。その不機嫌なのを華音に見せてなかったとこは素晴らしいけどね。邪魔者ですみませんねぇ。
けど、ちゃんと宣言したでしょ?これからも、華音を好きでい続けると。
京汰に傾きかけてる想いを、僕の方にも傾けさせてみせると。
...まぁ、本音言えば、究極両想いになれなくてもいいんだけれどね。
...そんなこと言ったら京汰が余裕ぶっこくはずだから、口が裂けても言わないと、決めているけれど。
姫の仰ってた通り、華音が幸せになってくれれば。
姫の言葉には重みがあった。僕にもその意味が痛いほど分かる。
京汰が幸せになること。それこそが、僕にとって最上の歓びなんだと。
京汰の幸せを奪ってまで、僕は幸せになりたくないよ。
ただ、たとえ憎たらしくったって、恋敵がいれば燃えるでしょう?一人より二人なら、青春をさらに楽しめるでしょう?もっと彼女を幸せにして、守りたいって、強く想うでしょう?
その想いこそが、君を強くするんだよ。成長させるんだ。
僕にとって、君はただの教育相手ではない。
ただのひよっこ陰陽師でもない。
ただの同居人でもない。
そりゃね、自画自賛しがちだし、要領悪いし、家事苦手だし、勉強も苦手だし、すぐ悪態つくし、言葉遣い悪いし、かなり抜けてるし、恋にしても妖にしても、超がつくほどの鈍感だし。かなり欠点はあるけどさ。
でもね、
誰よりも大切な友達。
ずっと傍で守りたい人。
だから、これからも。
仲良くいよう。
ケンカもしよう。
ずっと一緒にいよう。
君が幸せになって、その幸せを守り続けて、
いつか自然に還ってゆく、
その日まで。
僕は見届けるって決めたんだ。
これからも、京汰にとっての
憎たらしい式神でいるからね。
...まぁそんなことを僕が思ってるなんて、隣で鼻息荒くしてるおバカは全く気づいてないだろうけどね!けどそこが可愛いから許すよ。
今日も明日もその先も、僕らは一緒に、この道を歩いて帰るんだ。
夕日が僕たちを暖かく照らす。
帰る家はもう、目の前だ。
完