コメディ・ライト小説(新)

Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった【新】 ( No.22 )
日時: 2014/04/26 08:08
名前: 美奈 ◆5RRtZawAKg (ID: rKVc2nvw)

第11話
「どうした?」

『…いや、だって、僕だって外出するにはちゃんと身だしなみ整えないと。…って、ああ、そっか!京汰助けてっ』

「…えっ、俺の学校についてくんの?」

怪訝な顔をした俺に、悠馬はぴしゃりと言い放つ。

『世話係として当たり前でしょっ!それに僕が行っても京汰以外にはバレないし!』

「いや、もし視える奴いたらどーすんだよ」

式神は焦れたように叫んだ。

『んじゃあ隠形(おんぎょう)するよっ!…それより京汰、早くっ!助けてっつってんじゃんか!』

隠形とは、呪術を使って身を隠すことである。

「何だよ、助けて、って…」

俺はネクタイを手早く結び、一人でジタバタしている悠馬の元へ行った。慌てる式神を見て、妙に納得した。

「そっか…そうだよな。ほら、俺が見てやるから」

『良かった!鏡に映らないから、身だしなみチェックのしようがなくて。助かったぁ』

俺は小さく笑った。

「そのくらい、式神なんだから知っとけよ。映る訳ねぇだろ。…それにこれじゃあ、俺が悠馬の世話してることになってんじゃん」

『このくらいはいいじゃん、仕方ないんだから!それに昨日、洗濯機まわして京汰の洗濯物干したの誰だと思ってるんだよ』

「え……。悠馬、お前そんなこと…」

素直に感謝したが、"式神がお洗濯。"の図を一人で思い描いて大笑いする俺の肩を、ひどいっ!と悠馬が叩く。

「ほら、動くなって。悠馬、こっち向け。チェックしてんだから」

実際、悠馬の身だしなみはほとんど乱れていなかった。
ちょこちょこっと直して、俺と隠形した悠馬は外に出た。

Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった【新】 ( No.23 )
日時: 2014/05/08 07:57
名前: 美奈 ◆5RRtZawAKg (ID: h4V7lSlN)

第12話
・・・・・・・・・・・・・・
僕は、とてもワクワクしていた。
だって…はじめての学校!!校門を通り、教室へと階段を京汰と一緒に上がって行く。
自然と心が踊る。
隠形しているので、はしゃいでも正体がバレることはまずないだろう。でも思わず人目を気にする程、僕ははしゃいでいた。
なんていったって、女子どものミニスカートがたまらない!スカートから覗く、彼女達の生あ…

(ここが俺の教室で……おい、悠馬?おい悠馬っ!!)

…もちろん、京汰は大声で僕を呼んだ訳じゃない。
僕が隠形している間は、意志のみで会話できるのだ。
お花畑のような妄想に浸っていた僕は、そのせいで現実に引き戻されてしまった。

〈もう、何だよー?せっかく今幸せだったのに…〉

(何が幸せなのさ)

〈学校に来られて、可愛い子たくさん、それに目の保養にもなって、ミニスカのJKたくさん見れて、生脚…〉

京汰は途中で、もういい、もう結構、と手をひらひら振った。

(わかったよ、変態)

〈へ、変態!?ほら待て京汰っ!世話してあげてるのに変態なんてっ〉

京汰はもう、近くの席の子と話していた。
聞いてなかったのか。

しばらくして、担任がやってきたので、僕は教卓の上に座って話を聞いていた。

Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった【新】 ( No.24 )
日時: 2014/06/10 23:39
名前: 美奈 ◆5RRtZawAKg (ID: CwTdFiZy)

第13話
京汰が家で"嫌だ嫌だ嫌なんだってば"と嘆いていた授業も、僕にとってはすごく楽しいものだった。
教師の立つ"教壇"というものに一緒に立ってみたり、"黒板"をちょっと触ってみたり…。
さすがにチョークで何かを書く、というのはやめておいた。傍目から見れば、チョークが浮くことになる。

ー無闇に勝手なことはするな

そう。主の言いつけを守る為だった。

6時間目の国語の授業。まぶたを閉じかけては、何度もハッとして目をしばたかせる京汰を起こしてやろうと、京汰の耳に息を吹きかけた。

「わっ」

教師が声をかけた。

「藤井、どうした」

「あ、や、何でもないです…」

周りの何人かが、どうしたの?的な目線を京汰の方に向けた。
京汰は勢いよくシャーペンをつかみ、ノートの端に何かを書いた。僕へのメッセージだろう。

"あのやり方はひどいし、怪しまれる"

〈あちゃあ。ごめんねぇ、でも寝てた京汰くんが悪いよ〉

(…てめっ)


「馬鹿野郎っっ!!お前みたいな変態のせいで怪しまれただろ!授業中に生徒がいきなり声あげたら変人だろっ!ホントにお前消すぞ!」

家に帰ってきた瞬間叫ぶ京汰に、僕も応酬した。もう隠形は解除してある。
式神の分際でも、京汰なんぞに言われてたまるか!

『京汰だってひどいよ!せっかく起こしてあげたのに怒るなんて!変態かどうかなんてどうでもいいだろこの話ではっ』

「何…!?起こしてあげた、だって!?何とまぁ生意気な!くあぁっ、憎たらしい憎たらしい式神だぁっ!」

この後、式神と人間の追いかけっこという奇妙な図がうまれた。
僕と京汰が互いに一発殴り飛ばした所で、追いかけっこは終了した。

結局京汰は、式神と戯れていた。
いや、戯れるしかなかった、のだろうか……。