コメディ・ライト小説(新)

Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.57 )
日時: 2015/02/13 19:20
名前: 美奈 (ID: /dHAoPqW)

番外編#1
ー悠馬くんの社会勉強ー

悠馬が俺の前に現れて間もない、ある日のこと。
俺が目玉焼きを作っていると、悠馬が聞いてきた。

『ねぇねぇ京汰』
「ん?どした」
『目玉焼きと卵焼きの違いって何?』
「目玉焼きは、割った卵をそのまま焼くんだ。焼いた形が目玉に見えるだろ?卵焼きは、卵を溶いてから焼くんだ」
『へぇー!そうなんだ』

…2分後。

『ねぇねぇ京汰』
「どーしたんだよ」
『ゆで卵と半熟卵の違いって何?』
「ゆで卵は殻つけたままゆでた卵だろ。半熟卵はその中間のとろとろした状態の卵」
『なるほど。ありがと』

…1分後。

『ねぇねぇ京汰』
「あ?今度は何だ」
『オムレツとオムライスの違いって何?』
「…あのなぁ。少しは自分で調べろってかそのくらい分かる…」
『おしえてっ』
両手の平を顔の前で合わせて、きゅっと目をつぶる悠馬。
…くそっ、なんだよ、かなり可愛いじゃねえか!仕方ない。
「…オムレツは、溶いた卵に味付けして、包むように焼くんだよ。オムライスはそれをチキンライスにのっけたやつ!!」
『へぇー!だから名前が似てるんだね!ありがと!』

…30秒後。

『ねぇねぇ京汰』
「質問思いつくの早すぎだろお前、ってかそんくらい分かるだろ、俺は早く目玉焼き食いたいんだ、食わせろ、冷める」
『まだ質問してないのに分かるとか言わないで』
可愛いからって何でも許されるわけじゃない。それを1番悠馬に教えたいのに、彼を見るとそんな考えが吹き飛ぶ…。
親バカ?なんだ、この状況何だ?思ってみれば、俺と悠馬のカンケイって何だ?
とてつもなくビミョーじゃねえか?!
…まぁいい。この際気にしない。気にしたら多分、この特殊すぎる状態に脳みそがついていけない。
「めんどくせぇなぁっ!!なんだよっ」
『…スクランブルエッグと、ポーチドエッグの違いって何…??』
「…勝手にしろぉぉぉ食わせろぉぉ!!なんでこんなに卵料理ってあるんだよ馬鹿ぁぁぁぁぁっっっっっ!!」
『…ごめん……』

悠馬の社会勉強は、まだまだこれからのようだ。

Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.58 )
日時: 2015/02/16 17:42
名前: 美奈 (ID: Oh9/3OA.)

番外編#2
ー悠馬くんの社会勉強2ー

俺が何とか悠馬との式神&人間ライフに慣れてきたある日のこと。
買い出しに行くため、俺がスーパーのチラシを食い入るように見つめていると、悠馬が聞いてきた。

『ねぇねぇ京汰』
「ん?どした」
『ヒレとロースってどう違うの?』
「ん?あぁ、ヒレはブタとかウシの腰だよ腰。ロースは肩だ」
『え、肩食べるの』
「全身食うだろ」
『えっ……人間てこわい…』

1時間30分後。

『ねっ、京汰っ』
「今度はどこの肉がわかんねーんだ、言うてみ」
『サーロインとバラとランプとササミと手羽』
「…もう一度お願いします」
『サーロインとバラとランプとササミと手羽』
「わんもあたいむぷりーず」
『さーろいんとばらとらんぷとささみとてばっっっ!!!何回言ったら分かるの!』
「5つもまとめて言うな馬鹿野郎、リスニングできねぇ奴にそういういじめすんじゃねえ」
『…日本語も聞き取れないのはどうかと』
「うるせぇっ!せわぁないっつーの!サーロインは腰の上!バラは腹!ランプは尻!ササミはトリ肉の胸!手羽はトリの羽の付け根!」
『…One more time,please』
「めんどい」
『…そっか』
悠馬は引き返した。フッ、あきらめたか。

…45秒後。

『京汰ぁ』
「あ?!まだ用事あんのか、なら俺様の前で膝まづいてから言え」
『なんで京汰、そんな知ってるの?』
「膝まづけよっ!!…え?」
『京汰にしては、よく知ってるな、て。あんなすぐ答えられる人ってそうそういないみたいだし…』
あぁもう嫌い。君なんか大嫌い。
「スーパーのチラシのコラムにブタとウシとトリ肉の図と解説がのってたのをガン見して答えましたよ!カンニングしましたよはいはいっっっ」
『やっぱそっか』
「やっぱ、てなんだてめぇおい待てよやっぱって何だよ聞き捨てならねぇ!!!」
『ひっ』

悠馬の社会勉強は、どうしてこうも俺をムカつかせるんだ。
悠馬がバカすぎるの?
…え、俺がバカすぎて自分に疲れてるの?!

俺はその日、密かにスーパーのチラシのコラムを切り抜いて、本気で肉の部位を覚えたのだった…。
あぁ、悠馬にどーせ見られてるんだろーな、この姿。
あぁっ、情けないっ。

Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった ( No.59 )
日時: 2015/02/17 20:05
名前: 美奈 (ID: Oh9/3OA.)

番外編#3
ー悠馬くんの社会勉強3ー

ある日のこと。
俺がソファでゴロゴロしていると、悠馬が聞いてきた。

『ねぇねぇ京汰』
…さすがに学習した。この状況でのコレは、そう、そういうことで。うん、この手のやつには免疫がついている。
ってなわけで無視。

『ねぇー京汰ぁー』
はい、これもね、自分可愛く見せて甘えりゃなんとかなるパターンだよね。
残念だ。世はそこまでお前のマスクに甘くねぇよ。
ってなわけで黙殺。

『ねぇっ、京汰っ!!聞いてっつってんの!!もうお洗濯しないよっ!!』
なぬっ。これは新たな手法…!!仕方ない。致し方ない。しょーがない。
「何か用か、この無能で無知な妖怪が、俺に」
『好奇心旺盛な式神、と言ってね』
たしかに妖怪≠式神かもしれない。ただ、悠馬は違う。
何か苛立つほどに可愛くて、何か腹立つほどに見下してきて、何か憎たらしい恋敵なんだ。不可解なんだ。俺の中では悠馬=妖怪なんだ。
「…で、今日は何だ。ブルーマウンテンとキリマンジャロの違いを言えってか」
『惜しい!』
「あ?何だよ、本日のテーマは山か」
『違うよっ!…ブルーマウンテンにキリマンジャロといえば……!!』
「山」
『コーヒーね』
「…あっ」
『カフェラテとカフェオレの違いってなあに?』
「わかんねぇ」
『ふーん』
「…え」

3分後。

『きょーたっ』
「どーせ俺みたいな底辺に聞いてもわかんねーよ、ムダだムダ」
『自覚してる…!』
「あ?てめ今何つっ…」
『何でもないよ幻聴だよ怖いねぇ風の便りかなぁ』
「上手な言い訳しろよ」
『すみません』

3分30秒後。

『藤井京汰くん』
「そこで改まるな気色悪い」
『そんなことないよ、僕の存在自体がまず気色悪いからね』
「…自覚してる!」
『ん?!』
「…今日は風の便りが多いね、悠馬くん」
『…カプチーノとエスプレッソとモカとアメリカンとウィンナーコーヒーとアフォガードとカフェロワイヤルってどう違うの??』
「知るか!ってか世の中にはそんなにたくさんコーヒーの種類あんのかっ」
『あるみたいだよ』
…と言って、俺の電子辞書をさも自分のもののように手に取る悠馬…
おいてめぇ、式神のくせして電子辞書扱える身分かよ……。
「私物だから!どんとたーーっち!!」
『僕のものは京汰のものでもあって、だから京汰のものは僕のものでもあるんだよ。僕と京汰はいつも一緒』
「…何か嬉しいけど気持ち悪いからその理論!帰れ!存在がうるさい!」
『どこへ?』
「黄泉でも冥土でもどこへでもっ!」
悠馬はふっと黙った。
なんだ?どーした。おい。悠馬くん…
『京汰!!言霊大事に扱えーーーーいっっっ!一応仮にも恐らく陰陽師だろーーーーぉっ!!!!!』
「………え、ゆーま怖い、ひっ」

・・・・・
なんで?なんで僕はいつも、京汰に勉強の邪魔されちゃうの…。





諸悪の根源はお互いにあるということを、いつ彼らは自覚するだろうか…。