コメディ・ライト小説(新)
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった 【参照1000!】 ( No.83 )
- 日時: 2017/12/19 13:20
- 名前: 美奈 (ID: Djfn6fKO)
第38話
俺は廃人みたいな生活を四日も続けていたわけだが、そんな崩壊した生活も五日目にさしかかろうとした時、気持ちに変化が生じてきた。それは、俺が例の如くゾンビみたいな顔で夕飯を作ろうとしていた時に起きた。急激な変化というのは、往々にして突如起こるものである。異常なレベルでお節介の悠馬が何も話してこない、というもはや不気味な静寂に最近包まれていたことも、要因かもしれない。
とにかく、俺は覚醒したわけである。
目覚めちゃったわけである。
てゆーか、気づいちゃったわけである。
俺一応式神とのバトルに勝ったんだよね、ってことは華音様諦めなくていいんだよね、彼女含めみんなが俺に塩対応なのもきっと一過性だよね、もうちょい時間経ったら馬鹿な一生徒の奇行くらい忘れるよね、実際俺が授業中に悠馬のせいで声をあげたことももう誰も触れてこないのだ。そう、忘れるさ。だって、人間だもの、みんなは。式神じゃないもの。てことはつまり、今後も俺はこの馬鹿の地位を脱出するために頑張って、華音様の視界に入るとこまで這い上がって、わんちゃん彼女の危機的状況(階段踏み外しちゃうとか転びそうになっちゃうとか、んなことあるか分かんないけど)を救ってあげちゃってりして、華音様がまっすぐピュアな視線を向けて「京汰くん...」ってなるシチュエーションができれば良くね?つーかこれで俺の決定的勝利じゃね?悠馬の姿は見えないわけだし。勉強も目的あれば超絶やる気出るタイプだし、YDKだし、俺の姿が華音様に見えるという特権活かせばまだ挽回のチャンス転がりまくってるよな、青春楽しむ機会あるよな!
...って結論が、俺の脳内で唐突に、ただ極めてスムーズに導き出されたわけである。
俺、行けるかもしれねえ。
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった 【参照2000!】 ( No.84 )
- 日時: 2018/01/11 13:02
- 名前: 美奈 (ID: Djfn6fKO)
第39話
・・・・・・・・・
「っっっしゃぁぁぁぁあ!!!!!!」
不気味なほどの静寂に包まれた某F家のキッチンに、推定16歳の少年の雄叫びが突如響き渡った。そのけたたましい猛獣の如き鳴き声を聞き、思わず身をすくめ不覚にもビビってしまった同居人がいる。そう、それが僕、悠馬くんなわけである。
僕は学校での京汰の大失態、その上帰宅するや否や泣きつくという救いようのない態度にほとほと呆れていた。式神に愛想を尽かされる人間なんているんだな、って他人事のように思っていた。そんなわけで日々のお世話も疲れてきてしまい、というか試験終わったんだから最低限料理とか部屋の掃除くらいやってよ、という気分にもなり、僕は京汰の洗濯物だけは洗っていたけど、それ以外は放置した。慢性疲労ってやつかなって思ったりもした。もう口も出さなかった。
だって親切心で色々言ってるのにさ、「消すぞ」とか「うるせぇこの野郎消すぞ」とか「お前の存在が煩わしい消すぞ」とか、存在否定ばっかりしてくるから。そりゃこっちも嫌になるわよ。怒っちゃう時くらいあります、だって、式神だもの。存在否定って立派なイジメよね。泣かずに耐えてる僕偉すぎる。勝さん褒めて。頭ぽんぽんしてほしい。切実に。
でもまぁ、そんなセンチメンタルな気分でいた時に、先ほどの耳をつんざくくらいの雄叫びが聞こえてきたわけで。
『何よどーしたのよっ』
僕は久しぶりに、京汰に対して口を開いてしまったんだ。
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった 【参照2000!】 ( No.85 )
- 日時: 2018/01/15 16:29
- 名前: 美奈 (ID: Djfn6fKO)
第40話
『何よどーしたのよっ』
僕が思わず京汰に反応すると、彼はこちらをくるりと振り返った。えーと、それ何持ってるの...あ、大根ね。そんな太い大根はまな板に置こうよ。こっち見られてもね、手に大根あるとそっちに集中しちゃうから。そう、気づいたね、置いて置いて。
とまあ、こんなくだりの後で。
「悠馬、俺気づいちゃったんよ、へへへ」
何だこの気味悪い笑顔は。だから大根触るなってば。
「確かに平均点発表の時、俺とんでもないヘマしたよな。みんな引いてたよな。でもな、おバカキャラの俺がやってきたヘマなんて無数にあるわけよ、だから今回のだってその一部にしかならないと思うわけ。つまり、これからまたしれっと生きていけばいいじゃん的な?俺のヘマなんてみんな頭おかしくなった、で済ませるはずだし。てな訳でメンブレ期間終了〜、俺は立ち直ったんだぞ悠馬!偉いよな!明日からまた明るく楽しく頑張るぜいっ」
自分はあの学校屈指の馬鹿だという自慢をここでぶっこまれても。それに頭おかしい、で皆に納得されるという状況こそおかしいと思わないのかな。偉いのは僕だと思うんだけどな。
『...今のは、何の宣言...?』
「だから、微妙な冷戦状態解除宣言!勝手に泣いたり喚いたり責任転嫁したり、色々ごめんな」
...え。今僕に謝ったよね。あんだけ自己中で王様気質の藤井京汰が、自分の非を認めて謝罪したよね。待って待って、もしかしてもしかして京汰って実は超絶ツンデレの中身イケメン系男子?それとも—
「ちょ悠馬どこ見てんだよ、今窓から外見る意味あんのかよ」
『だって京汰が素直に謝ったんだよ、びっくりだよ、これはもう世紀末の可能性あるから、空から槍降ったり隕石落ちたりしないか気になって』
「あ?!何が世紀末だよやっぱ前言撤回っ!冷戦は解除するけど二度と謝罪なんてしないからな、とにかく早く大根の皮剥けお前は、世話係だろ自分の役割忘れんなよこら」
...やっぱりただの自己中でムカつく王様気質の人間でした、はい。