コメディ・ライト小説(新)

Re: 片恋.・。*平行線の恋模様*。・. ( No.11 )
日時: 2018/04/05 15:30
名前: Aika (ID: brdCxKVT)

Episode4:雨空のした。




それから、 なんとなく。
達也とは、 口も聞かない期間が長く続いて―――。
部活でも、 目が合ったのに逸らされたことが何度かあった。
帰りもいつもは、 二人で笑いながら帰るのが当たり前だったのに。

今は…1人だけの静かな通学路になってしまった。



―――「バカだなぁ…あたし」



曇り空のなか。
今にも雨が降りだしそうな空のした。
あたしは、 歩んでいた足を止めて。
涙を流した。



泣くぐらい、 後悔するぐらいなら。



あんな心にもないこと、 言うんじゃなかった―――。




あたしの気持ちと同じように。
曇天の空から、 ポツポツと雨が振りだした―――。



雨の滴があたしの身体を濡らしていく―――。




止まらない涙をぬぐいながら。
走って、 帰ろう―――。



そう思ったとき。





後ろから、 さっと…傘を差し出す影があった。





振り返ると。
そこには。






――――「達也…」






息を切らして。
あたしを、 真剣に見つめる君がいた。





久しぶりに、 ちゃんと見る貴方の顔にあたしは懐かしさを感じてしまった―――。





「―――風邪、 引くから。 一緒に帰ろ」




傘を持っていないあたしを見て。
達也は優しい声でそう言ってくれた。


あたしは、 その言葉に。




「―――うん、 ありがと」




そう返してお礼を告げた。

―――貴方のことを傷つけたあたしに。
達也は、 まだ優しくしてくれる。
ほんとは、一緒にいることだって…辛いはずなのに。その気持ちを押し殺して達也はあたしのために…一緒に帰ってくれている。



そんな君に、 鼓動は加速する―――。





お互いに何も話さないまま、 いつもの帰り道を二人で歩く―――。
話したいことはたくさんあるはずなのに。
言葉が何も出てこなくて―――。



雨音だけが鳴り響くなか。



不意に達也が口を開いた―――。




「―――なんで、 泣いてたの?」





その声は小さかったけど、 たしかにあたしの耳までそう聞こえてきた。

やっぱり、 見られてたんだ―――。
泣いてるところ。



どうしよう、 言えるわけない。





――――達也のことが好きだから。
気まずくなって、 離れてしまって
話せなくなってしまったのが辛いから、 とか。




言えるわけないじゃん、 そんなの―――。





あんな、 酷いことをしてしまったあたしに。
そんなことを言う資格なんかないし。




「―――別に。 目にゴミが入っただけだから気にしないで」


適当にそう言って、ごまかした。
けれど―――。


「―――ほんとに、それだけ?なんか…最近、元気なくね?」

鋭い、 達也の言葉に。
あたしは、 自分の髪を撫でながら。

「え?…そんなことないと思うけど」
「嘘だろ。 柚月って、嘘ついてるとき…いつも髪の毛触るでしょ」
「―――え?そう、だっけ」


自分でも気づかない癖に。
達也が気づいてくれたことが。


ほんの少しだけ、 嬉しく感じてしまった――。



「―――もしかして、 元気ないのって…俺のせい?」




否定も肯定もできなくて。
黙りこむ。
たしかに、 達也が絡んでいることは確かだから―――。


でも、 達也のせいなわけじゃない。



自分が、 あのとき。
きちんと、 自分の想いを伝えられなかったことに対して後悔しているだけで。
達也は何も悪くない―――。




「―――もし、俺のせいだとしたらごめん。あの時の告白のこと、 でしょ?柚月を困らせるつもりとかなかったんだ。アイツらが勝手に言ったことだし気にしないで。だから―――」
「達也」



捲し立てるように話す達也の言葉を遮って。
あたしは、 涙を流しながら。
言葉を紡いだ―――。



「―――あたし…達也とこのまま話せないの、辛い。だから、避けないで。また、前みたいに一緒に帰ったりしたいんだけど…駄目かな?」




切なく雨の音が鳴り響くなか。
あたしは、 今秘めている想いを打ち明けた。

達也は、 あたしの言葉に優しく微笑んで。




「―――うん。俺も…また柚月と前みたいに話したい」




それから、 あたしたちは笑い合いながら。
また、 以前みたいに他愛のない話をしながら家までの道を歩いた。



恋人になれなかった後悔の気持ちは、 もちろん消えた訳じゃないけれど。
いまは、まだ。






幼馴染みの関係も、 いいかなって。






このときのあたしは、 そう感じていた―――。